→あいのうた
ひねくれものの
こころにとどく
あいのうたを
だれかおしえて
それをきくと
こころがぽかぽかしたり
せつなくなったりするらしいね
いいね
そういうの
捻じ曲げる甲斐がありそうだね
テーマ; ラブソング
→1年に1度
彼女から手紙がやってくる。1年に1度。
手紙を開くと、大学時代から変わらない彼女の文字。
「お誕生日おめでとう」
そして添えられる、彼女らしい地に足のついた短文。
今の御時世に、私たちはお互いの携帯番号もメールアドレスも知らない。別にいらない。
私たちには手紙がある。
1年1度の手紙がある。
テーマ; 手紙を開くと
→今はまだ……
今はまだ、デバイス越しにしかインターネットに介入できないが、遠い未来にはその電子世界と脳が直接繋がって、まるで現実世界のように自由に行き交うことができるかもしれない。
情報網という往来を、仮の体で探索する。現実世界のように、しかし誰とは知らない人と視線を交わし、もしくは瞳をすれ違わせる、そんな出会いと別れがあるかもしれない。
そんな物語を想像しながら、私は現実世界の電車に揺られている。
何となしに、私は手元のスマートフォンから視線を上げた。前に座っている人と目が合った。
お互いに何事もなかったかのように瞳をすれ違わせ、自分の手元に目を落とす。
小さな機械の画面を見る。
今はまだ、そんな世界。
テーマ; すれ違う瞳
→生命
下を向いているばかりの顔を上げた
その先に
空が
宇宙がある
青い青い
蒼い碧い
天がある
上を向いた瞳に映る
その先に
天がある
青い青い
蒼い碧い
涙が溢れる
空が
宇宙が
私に繋がる
生きていてもいいと
誰も言わないけれど
生きていてもいいと
私は思った
テーマ; 青い青い
(追記・05.03 22:55
酔っ払っていると発想は自由だ。
無様な万能感よ。私を虜にするな)
→短編・彼女の横顔、ニヒルな口元に甘い思い出。
友人と飲み屋に集合した。
彼女は数年ほど海外で働いていたのだが、突然に日本に戻ってきたところだった。久しぶりの飲み会に誘ったのは私。彼女の現地生活を聞きたかった。とりあえずのビールの話題は仕事や同僚の話題。そこから杯を重ねて、恋愛話に突入。
現地で彼女は1人の現地男性と親密な関係を結んだ。全く違う文化風習を波乗りするような恋愛だったらしい。しかし彼女は日本に帰国を決めた際、彼との関係を終わらせた。
アルコール度数の強い甘いカクテルを彼女は飲み干し、彼女はその恋愛譚をこう締め切った。
「これが私のsweet memories」
彼女は舌の先を転がすように、その甘い単語を発音した。話のオチをお笑い芸人のような話し方で締める友人に、私は「流暢な発音だなぁ、おい!」と乗っかった。会話はキャッチボールである。ノリは大事だ。
さぁ、2人で笑おうぜ。
「ね、笑えるよね」
彼女はふっと顔を横に向けた。
「英語の単語だってだけで、ちょっと距離感じるよね」
そう続けた彼女は、落ち着いた冷静な瞳で居酒屋の他の客たちを観察するように見ている。
その横顔が、昔の彼女とは違うことに私は気がついた。彼女の口角が少し上がる。口元にとても薄い三日月が現れる。冷めているけれど艶やかな三日月。
私が想像もしない世界の生活から彼女が帰ってきたことを、私は実感した。
テーマ; sweet memories