一尾(いっぽ)in 仮住まい

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3/31/2025, 1:40:42 PM

→トーキョー・コンプレックスちゃうねんで、でもな……

「またね!」はちょっとばかり気取って聴こえる。
だって、生まれも育ちも大阪やねんもん。
向こう三軒両隣、「またなぁ!」がデフォルトやねんもん。
あかんな、何を書いてんねんやろな。
もうエエわ。
またなぁ!

テーマ; またね!

3/30/2025, 4:05:01 PM

→短編・一時と恒常

「春風とともに世界中を旅できたら素敵だろうな」
「どゆこと?」
「春、好きなんだよね。他の季節の時いらん。冬とか春の前座でしかない」
「前座って、ひどいな」
「でも、実際そうなんだもん。早く春出せやくらいの勢い」
「どうしてそんなに春が好きなの?」
「気温とか、雰囲気とか? 他の季節と比較して、やっぱり春イイなぁ、って。なのに春って短いんだよね。その儚さがまた魅力っていうかぁ」
「儚さねぇ……。なるほど。うん、キミの場合、ずっと春だと飽きると思うよ」
「え〜? なんでそう思うのぉ??」

テーマ; 春風とともに

3/30/2025, 2:52:07 AM

→短編・
 あなたのお家に眠っているお宝はありませんか?

 ヴェロニカ・マリシュヴァ夫人は、世界最大のシャンデリアメーカーの創始者である。
 夫人の涙結晶は、美しく整ったティアドロップ型をしており、特殊なプリズム物質を内包している。周囲に虹を放つような輝きを持ち、結晶ランクは3S 。涙結晶愛好家の推薦の的であり、非常に高値で取引されている。
 陽気で遊び心にあふれた夫人は、極稀に自身の涙結晶を自社のシャンデリアに仕込むことがあるという。
 これまでに、家庭用の簡易なものから絢爛豪華な一点ものなど品質を問わずに見つかっている。

 このラッキーな涙を見つけた方は、是非当店にご報告を! 高価買取いたします。

テーマ; 涙

3/28/2025, 4:56:27 PM

→短編・日高くんは料理が得意だ。

「里芋、買ってきた」
 日高くんは私の部屋に上がるなり、キッチンのシンクに焦げ茶色の土付き里芋をゴロゴロと放り込んだ。シンクに転がるクマの毛の塊のような里芋から土の香りがする。
「どうするの?」
 大学に入って一人暮らしを始めたばかりの私には強敵そうな食材。里芋とか、お母さんの料理分野じゃん。
「煮る」
 日高くんはボソボソとぶっきらぼうに答えて料理を始めた。里芋の土を洗い、上下を切り落としたあと、オレンジの皮を剥くように上から下へと包丁を入れる。クマの毛玉から、生成り色の芋が現れた。
「ちょっとどいて」
 日高くんは私を押しのけ、鍋に出汁を入れた。彼が作っている昆布と煮干しの出汁は、いつでも冷蔵庫に保管されている。確実に住人の私よりも日高くんのほうがこのキッチンを使いこなしている。
 あっという間に里芋は鍋の中へ。しばらくすると私の1LDK の部屋にいい香りが漂い始めた。
「これからどうする?」
「鍋、見てる」
 日高くんは相変わらず素っ気ない。好きなことに集中したいオーラがにじみ出ている。
 ふむ、どうやら私の彼氏は何か良からぬことがあったのだなと見当を立てた。よしよし、思う存分料理に勤しみ給え。
 私は彼をキッチンに残して、リビングでまったりすることにした。

 日高くん定食の夕飯。炊きたてご飯に白菜の浅漬け、鰆の西京焼き、根菜の味噌汁と里芋の煮物。
「今日は煮物がよくできた」
 満足気に日高くんは呟いた。
「日高くんが作るご飯はいっつも美味しいよ」
 彼の上唇が照れ隠しに少しめくれ上がり、少年のようにはにかんだ。
「……ありがとう」 

テーマ; 小さな幸せ

3/27/2025, 4:10:12 PM

→花見カウントダウン

日の落ちる時間が遅くなっていて、夕日の色が濃ゆく烈しく部屋に差し込むようになって、そういえば夕方が長くなったよなと窓から顔をのぞかせると、ほんのり冷たい空気の中に春の匂い。
隣の桜がチラホラ咲いていた。
来週末、アイツを観ながら酒を飲もう。
急に気持ちが浮かれてきた。

テーマ; 春爛漫

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