一尾(いっぽ)in 仮住まい

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10/15/2024, 7:48:18 PM

→短編・一瞬の邂逅

 信号待ちで道路端に立って、視線を感じて見上げたら、マンションの窓辺から奇抜な衣装の人形が鋭い眼差しでこちらを見ていた。とんがり帽子を被り、マントを羽織っている。
「魔女や……」
 つぶやく私に合わせて、隣の女性まで顔を上げる。
「いや! ホンマや! おばちゃん、毎日ここ通ってるけど気が付かへんかったわ」
「ハロウィンですかね?」と私。
 ちなみに彼女の言う「いや! ホンマや!」は「いとをかし」と同じような強い感動を表す関西弁である。
「エライご面相の人形やなぁ。どうせやったら美人のねぇちゃんにしたらエエのに!」
 私たち二人に釣られて同じ方面を見た男性まで会話に加わる。
「今時分、そんなん言うたらセクハラや言われんで」
 女性の早い切り返しを最後に信号が変わって、私たちは再び赤の他人に戻った。
 
 魔女人形はハロウィン関係なく窓辺に置かれており、あの束の間の邂逅以来、私は彼女に黙礼するようになった。
 奇妙な会話を交わした二人もたまには見上げているのだろうか?

テーマ; 鋭い眼差し

10/14/2024, 2:15:03 PM

→短編・お茶目なAちゃんと私

 年に数回、Aちゃんは手紙を寄越す。センスのいい封筒に、これまたセンスのいい切手を貼って。
 でも私は彼女に返信したことも、私から手紙を出したこともない。だって彼女とはSNS 毎日やり取りしてるし、手紙のいろいろ……、例えばペンとか便箋とかにお小遣いを費やせるほど、中学生のお財布事情は華やかではない。

 ところで、今年の夏はとても暑かった。そんな時期が過ぎ去って、秋っぽくなってきた。
 国語の先生が秋の表現を幾つか黒板に書き出していた。「秋の日は釣瓶落とし」とか、「錦秋」とか、「天高く馬肥ゆる秋」とか。
 その時、ふと予感がした。
 あっ、Aちゃんから手紙来るかも、と。

――案の定。2日後、郵便受けに私宛の手紙。
「天高く高く馬肥ゆる秋、如何お過ごしですか? 夏がめっちゃ暑かったから、秋の空も合わせたほうがいいかと思って、ぶち上げてみました」
 やっぱりなぁ……、Aちゃん、目ぇ輝かせて国語の先生の話聞いてたもんなぁ。

 ちなみにAちゃんの家は、私の家の2軒となり。私たちは同じ学校に通うクラスメイトだ。

テーマ; 高く高く

10/13/2024, 3:44:12 PM

→マジで回答が聞きたいんだが……

質問!

「大人しく」と「子供のように」は対義語ですかね?

これら表現って、そのうちアンコンシャス・バイアスだと無鉄砲な多様性網に引っかかったりするんですかね?

十人十色の回答があるはずなんだよなぁ〜。聞いてみてぇなぁ、あぁ、無念!

テーマ; 子供のように

10/13/2024, 3:25:11 AM

→中学校時代

 授業が終わって、何となく居残って友人たちとダラダラ話す。人の少なくなった教室に、大笑いをばら撒いて。
 どんな話だったかな? 細かい内容は覚えていない。内輪話だったと思う。仲間だけで作り上げた世界観を共有して笑い転げ、時に憤慨して。何の衒いもなく真っ直ぐに、希望と理想に輝く視野で正義と仁義とユーモアを元手に結束していた。飽きることなく、疲れることなく、あの熱量を懐かしく感じる。
 クーラーなんてなかった時代。夏場は汗に構うことなく、タオル片手に大笑い。鋭く入り込む西日や寒さなど物ともせず冬の日々。
 仕方なく、そろそろ帰ろうかと暗黙の了解で立ち上がる。
 あの頃の私たちにとって、放課後は無敵時間だった。

テーマ; 放課後

10/11/2024, 9:26:07 PM

→短編・闇一夜

真夜中、カーテンを下ろすようにまぶたを閉じる。
眠ろうと思った。
でも、眠れない。
そんな心当たりのない不眠が続いている。
理由があれば、楽なのだろうか?
たぶん、それはそれで苦しいだろう。
まぶたの裏、眼球は暇を持て余す。
仕方なくまぶたを開ける。
闇の中、あっという間に目が慣れて、「黒は300色あんねんで」なみに家具や置物の陰影を浮き立たせる。
駄目だと解っていて、スマートフォンに手を伸ばす。
闇に馴染んでいた目を瞬かせる。
昔は時計の音で過ぎていく時間を感じていたものだが、今では手元の小さな機器がその役割を果たす。
そんなことをしていたら、空が白み始める。
鳥の声がし始める。車の走る音が増え始める。
マンションならではの音の伝播で、何処か家のカーテンが開いたことを知る。
のろのろ立ち上がって私もカーテンを開ける。
一日が始まる。

テーマ; カーテン

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