→短編・お茶目なAちゃんと私
年に数回、Aちゃんは手紙を寄越す。センスのいい封筒に、これまたセンスのいい切手を貼って。
でも私は彼女に返信したことも、私から手紙を出したこともない。だって彼女とはSNS 毎日やり取りしてるし、手紙のいろいろ……、例えばペンとか便箋とかにお小遣いを費やせるほど、中学生のお財布事情は華やかではない。
ところで、今年の夏はとても暑かった。そんな時期が過ぎ去って、秋っぽくなってきた。
国語の先生が秋の表現を幾つか黒板に書き出していた。「秋の日は釣瓶落とし」とか、「錦秋」とか、「天高く馬肥ゆる秋」とか。
その時、ふと予感がした。
あっ、Aちゃんから手紙来るかも、と。
――案の定。2日後、郵便受けに私宛の手紙。
「天高く高く馬肥ゆる秋、如何お過ごしですか? 夏がめっちゃ暑かったから、秋の空も合わせたほうがいいかと思って、ぶち上げてみました」
やっぱりなぁ……、Aちゃん、目ぇ輝かせて国語の先生の話聞いてたもんなぁ。
ちなみにAちゃんの家は、私の家の2軒となり。私たちは同じ学校に通うクラスメイトだ。
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10/14/2024, 2:15:03 PM