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6/3/2025, 10:26:30 PM

「…約束だよ?」
「分かってる分かってる」
「言ったからな?」
「ほら、早く位置に着かないと」
「くっ……」
「大丈夫だよ、死ぬときは一緒だ」
「その言葉、忘れるべからず」
「うぃっす」

奴は確かに言った。
よくよく思い返せば、やけに眩しい笑みだった。

なぁ、戦友よ。
死ぬときは一緒だと、そう言ったよな。
…………言ったじゃないか。
訓練でも、そう誓っただろう?
僕らはいつも、一緒だったじゃないか。

「…先に、いくなって…言ったじゃないかっ!」

息が切れる。それでも走り続ける。

不規則な呼吸。
足が限界を訴えている、
喉がスースーして気持ち悪い。
じわ、と涙がにじんだ。

「くそぉ……っ」

…嗚呼、ようやく君の姿が見えた。
今、そちらにいくから。

僕は泣き笑いのような、歪な顔で駆け出した。
もうやだ。




「ねぇ゛っ…ゼハッ、先にっ゛行゛かないでってスゥッ…言゛った!!!!」
「ごめん本番だし、あまりにも遅すぎて」
「ふざっ゛カヒュゥ…っけんなやっゴホッォェ゛」

持久走、ビリ(僕)とラス3(かつての戦友)の会話である。
え、もう1人抜いたの?マジで?

「そうかお前もなのかブルータスっ!」

も?

そうである。もう1人は年がら年中半袖のクセして今日だけここぞとばかりにジャージを着込む先生である!
ギルティ!

「そのネタ通じる人おる……?」
「うるさい僕は傷心のカエサルだぞ」
「あんまり通じないと思うな」
「じやあエーミールの
『そうかそうか君はそんな奴なんだな』
で。どう?伝わる?」
「懐かし~。ではそんな貴方にパピコを1本プレゼント」
「蓋の方では無いな?」
「そんな鬼畜なマネせんわ」
「じゃあ宥恕」
「いえ~い」

灰春(灰色の青春)の一幕である。
とりあえずパピコは美味しかった。

#約束だよ

6/2/2025, 11:38:11 PM

…なんだい少年。僕の傘が気になるのかい?

…………ほう、いつも持ち歩くのに差していないから?
いつも歩きづらそうだからヒヤヒヤしてる?

ふふ、それはそれは、ご心配ありがとう。
それじゃあ、優しい君だけに教えてあげよう。

実はこの傘にはね…、
妖怪が閉じ込められているのさ!

こらこら、一気に胡散臭そうな顔をするんじゃないよ、全く。

妖怪なんて阿呆らしい?
……じゃあ、聞かないかい?
……………アハハ、素直でよろしい。

その名も妖怪アメフラシ。

──雨を降らせてポツポツ歩き、
───嬉しいときには虹をかけ、
─────悲しいときには風吹きゴウゴウ。
かんしゃく起こせば雷ドンドン!

……の、はぐれ者一匹がこの中にいるのさ。

どうするのかって?
この子は砂漠に連れて行って、
恵みの雨をパラパラ、シャンシャン
降らせてあげるのさ。旅がお好きらしいからね。

本当にいるのか?やぁ、君は疑り深いな!

まァ、疑うのも無理は無い。最近はここらじゃトンと見なくなったからねぇ。酸にやられるわ汚れは着くわで怒って降りてこなくなったのさ。
そうそう、最近異常気象多いだろ、アメフラシどもが怒っているんだよ。人間め!っとな。

そうだね、あの子達とて、幼き子どもは嫌いじゃないさ。

ガキじゃない?こりゃ失礼。

見てみたいなら、雨の日に空を見上げてみると良い。首を伸ばして、うんと目を凝らして、額や頬に雨がパタパタ当たるだろうけど、それでもじぃっと目を凝らしてごらん。雲の上から、アメフラシが手を振ってくれるかもしれないよ。

アハハ、ではね。


#傘の中の秘密

6/1/2025, 11:25:33 PM

梅雨が、来ますね。
…………、いや、もう来たのか?

雨、雨ねぇ…
あんまり、好きじゃないです。

靴、濡れるでしょ、
服、濡れるでしょ、
つまりは濡れるでしょ。
差し方なのか、はたまたサイズなのか、
傘、全然仕事してくれないし。
そんで、トラックさんや、ちと気を遣っとくれ…
と思うのです。
ばっしゃんっ!です。
もしくはざっぱぁっっ!です。

水たまりを気にせず突っ込めなくなったのは、
いつからだっけ。

ピッチピッチチャップチャップらんらんらん!

あれだけ楽しかったのに、濡れるのがいや、子供っぽいから…。と遠ざかってしまった。

時の流れ…
モラル…
マナー…
公共の場での尊厳的なもの…

そういうものに染まってしまったのか…
(正しい成長です、おそらくは)

気分もじっとり、どんより。

洗濯物も乾かないし。
暗いし、
濡れるし
泥、踏むし。
靴とか子ども靴のごとく
キュッキュッ、キュッキュッ
って、音立てて恥ずかしいし。
濡れるし…。

だからでしょうか。
雨上がると、こう
必然的に気分浮上しません?
どん底に落としてから上げてくるスタイルですか?
……そ、そういうことだったり、します…?
あ、違う…そうですか。忘れてください。

でもまぁ、雨上がりは良い景色見られるし…
そこそこ、良いのかも…しれない。

雲の切れ間から日が差し込んで、
一条の光がはしごを伸ばして、
濡れた地面が反射して、眩しくて。
水たまりには真っ青が写って。
光度が上がって。
虹とか、見られるかもしれない。

雨上がりは…うん、なんか…好き、かも。





え、濡れたくないなら部屋にいなよって…?
…………………………………………………、ごもっとも。

#雨上がり

追記
水たまりには飛び込みませんが、傘クルクル回すのは全然現役です。あ、傘を友達のリュックにこっそりかけるのも、現役です。
……そこまで大人になりきれていないのでね。

6/1/2025, 2:13:55 AM

「勝ち負けなんて」、と言うけれど。

でも、世の中たいてい、
…勝ち負け、あるよね。

大会、コンクール、受験、就職、エトセトラ。

人生勝ち組、負け組。
…何を持って、そう言うのだろう。

他人の目、尺度?学歴、性格、資格に性別。

僕たちは世の中に見られている。
自分でも、知らず知らずのうちに監視している。

ニコニコ笑っている裏で嘲笑って、下に見られていたり。

他人と比べて、優劣を付けたり。1人で勝手に勝ち負けを決めて、落ち込んで。嫉妬、なんかもしちゃって。

もっと、
こうしなきゃ、
ああしなきゃって、
目まぐるしい。

「あの子のほうが、出来てるでしょう?」
「なんで自分はできないの?」

自分のなかの声。

あれこれ悩んで、考えて、迷子になってしまう!


気にしてないよと笑いながら、実はバッチバチに気にしてたりするし。
これだから人間、たいへん面倒くさい生き物です。

だから、

「勝ち負けなんて」って笑い飛ばして、マウント合戦からすたこらさっさと抜け出せたら、生きるのもちっとは楽になれるんじゃあないかなぁ、と、思います。

……逃げではない!これは戦略的撤退なのです!!

なんちゃって。

それでもやっぱり、テレビのチャンネル争いとか、おやつのラス1で争ってしてしまうよね。なかなか上手くいかないもんだなぁ。

#勝ち負けなんて

5/31/2025, 1:59:27 AM

どんな物語にもいつかは終わりが来る。

だんだん薄くなっていくページ、

あ、風に吹かれて、飛んでった。

好きなモノへの気持ちも、いつしか薄れて。

断捨離!とか言って今までの物語とさよならしたりね。

――好きだったキャラクターのグッズ
――友達と交わした手紙の束。
――あの人からもらったお菓子の缶、とか。

さよなら、ありがとう。

でも、きちんと思い出は大事に仕舞って、時々こっそり覗くんです。

あぁ、あんなに好きだったなぁ、

そうそう、こんなこともあったよね。

あの人、元気してるかな。
……なんて。

終わってしまうけれど、自分のの中に、きちんと物語が詰まっている。

途中でページが煤けてしまったり、ビリリと破けてしまっても。

「ハッピーエンド」だとか、
「めでたしめでたし」、
「こうして幸せに暮らしましたとさ」

があっても、おしまい、ではなくて。
実は見えないところで、続いてゆく。

もし、命が、終わってしまっても。

人生という、分厚い、分厚い本が閉じられてしまっても。
誰かの心に、残っていたら、片隅に、おいて貰えたら
いいなぁ。って思います。

あんな人がいたよ、
仲良かったんだよね~、
昔、好きだった。

友達、家族、先生、会社の上司、仲間、ご近所さん…

どんな形でも、いい。
名前が分からなくても、顔を思い出せなくても、いい。
生きてちゃ、誰かしらと関わっているんだから。

僕の物語が終わっても、そこから、また物語は始まるだろう。

続きは、きっと、残された誰かが紡いでくれる。

だから、ゆるゆると、生きましょう?

このくらいのお気楽さじゃないと、やってられないわ。

#まだ続く物語

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