君が病気で余命宣告までされてるんだって聞いたとき
正直、生きた心地がしなかった
病気なんて嘘で、余命宣告もされてないんだってそう、言って欲しかった
でも、君はなんてことないように笑って言ったんだ
本当なんだって、嘘なんかじゃ…ないんだって
どうして君が…って目の前が真っ暗になったよ
本来そうなるのは君のはずなのに、いやそう思いたいだけなのかもしれないけど
君はいつも言っていたもんね
死ねるのならそのまま死にたいって
だからこのまま死なせてあげるべきなのかもしれなかった
まぁすぐに諦めるなんて、無理だったんだけど
君の死が近づいてくる、こわくてこわくて仕方がなかった
そしたら君は言ったんだ
そんなに顔しないでよ、生きててあげるからって
それでも簡単には信じられなかった
時間なんて進まないで欲しいって止まって欲しいって思ってもいたんだ
だからさ、君が余命宣告された次の日にも元気に生きてるのをみて泣けてしまったんだ
それで…って、
はぁ、ねぇ聞いてる?
君の話だよ、君の
まぁ、いいけどね
…今日も、生きててくれてありがとう
置いて逝かないでくれて、ありがとう
君がいるのなら時間なんて、止まらなくていい
【時間よ止まれ】
夜、といえば覚えてる?
あの日のこと
君に呼び出されるとは思ってなかったから驚いたんだ
それと同時に焦りもしたよ
危ない目にでもあったんじゃないかって
その上レストランに来いってあったから
これは、別れ話でも切り出されるのかなって不安だったんだ
なのにまさか、君からプロポーズされるなんてね
おもいもしなかったよ
先にプロポーズしようと思ってたのにって
少し、悔しかったなぁ
でも、それ以上に嬉しかった
その後は一緒に歩いて帰ったよね
あの日見た景色は今でもよく思い出せるんだ
最期まで一緒にいようって…
なのに、君は…一人で逝ってしまった
…どうせなら連れて逝って欲しかったよ
君と一緒ならどこへだっていけたから
【夜景】
花を植えよう
そう思ったのは寂しがり屋な君が深い眠りについた時
そういえば、君は花が好きだったなって…そう思ったんだ
花の中でも君はパンジーが好きだったよね
だから、色とりどりのパンジーを植えたんだ
でも、それだけじゃ寂しい気がして
紫苑も植えてみたんだ
どうだろう
これで少しは寂しくなくなったかな
次会った時に感想を教えてほしいな
君に会うのはまだまだ先のことだろうけど
大丈夫
君は一人じゃないよ
それじゃあ、また来るね
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パンジー、ひとりにしないで
紫苑、あなたを忘れない
【花畑】
今日もいい天気だ
雲ひとつない…綺麗な青空が広がっている
小鳥が羽を羽ばたかせ、風が木を揺らす
こんな日は幾分か気分が良くなる
そうだ
少し、散歩でもしてみようか
いつもは眺めているだけだったから
カチャ
太陽が眩しいね
けれどあたたかい
行きたいところもないけれど、
とりあえずは目の前に見える丘でも目指そうか
大きな木もあるしあそこで休憩しよう
どこまでも続く青空にあたたかい日差し
なんだか心までポカポカしてくるね
気分はいいし鼻歌でも歌おうか
♪〜♬〜♩♫
おっと、もう丘に着いたみたいだ
よいしょ、と
木陰とはいいものだね
風が軽やかにすぎていく
せっかくだし昼寝でもしようかな
……
ふわぁ
よく寝たな
て、少し寝過ぎたみたいだね
もう夜になってしまった
あたたかい日差しはなく少し肌寒く感じる
ふむこれもなかなか、悪くない
ポカポカはしないけれど
月が爛々とこちらを照らすさまはなんとも美しく感じるね
夜の空もいいものだ
暗い空に月がのぼり、祝福でもするかのように星が輝く
きらきらと光っては消えまた光だす
美しく、そして儚い
そのさまはまるで空が泣いているかのようだ
1日、1日を、地道に生きる我々を祝福し、
灯火の消えた生命を、労り、導く
もしも、そんな空が泣いているのだとしたら
その涙はきっと悲しくて泣いているんじゃない
それだけは、わかる気がする
今日はとても良い日だった
明日も良い日になるのかな
それはきっと明日にならないとわからない
だから、精一杯今を生きよう
今日の自分
おやすみなさい
夢を見ないほどに深く深く眠ろう
そして明日の自分に
おはようを告げよう
【空が泣く】