君と出会ったのは学校の帰りで
ほんとはそのまま通り過ぎようとしてたんだ
でも、
雨が降ってきて
このまま通り過ぎるのは少し嫌で
せめてもって傘を置いたんだ
もうできることはないからって帰ろうとしたら
さっきまで何も言わなかったのに君は、
弱弱しく声をあげた
その声を聞いたらもう仕方ないって思ったんだ
自分は学生でバイトして生活をしている
忙しい毎日で余裕なんてない
けど
このまま帰ったらきっと後悔する
なら少し無理をしてでも連れて帰ろう
そう思ったんだ
最初は慣れないことも沢山でお金もかかるし嫌になりそうだった
バイトも新しく入れたりして
正直少しだけ後悔したんだ、連れ帰ったこと
あの日もバイトで疲れながら帰った
それで家に入ったらさ
君がすやすや寝てるんだ
その顔見たらさ
なんだか安心しちゃって思わず笑顔になった
せっかくだしって抱きしめたら
迷惑そうな顔をするものだから
思わず笑えてきて頑張ろうって思えた
その後もなんやかんやあったけど
それなりに楽しく過ごせてるよ
【子猫】
君と二人だけの空間
空も見えない真っ白で真っ黒にも見えるような空間
全てが正反対で、いやだからこそなのか
どこか気が合うように思えた
君がいるなら他はいらない、望まない
興味すら持たない、たとえ偽物の世界だったとしても
そう思っていた自分と、
本当の空はどんなふうに映るのか
知識をつけるだけつけて実際に見れたら、行けたらと
外に興味を持った君
この、
背中に生えてる翼がはばたけたら、
この、
手足についてる枷が外れたら、
そしたら
自由に飛んでいけるのに、見たい景色も確かめにいけるのに
そう、目をキラキラとさせて言った希望を抱く君
…希望があったところで変わりはしないのに
希望はいずれ絶望になるんだ
抱けば抱くほど苦しむことになる
なら、最初からもたなければいい
なのに、どうしてあんなにも綺麗な目をするんだ
変わることを、傷つくことを恐れ、諦めた自分
変化を望み、希望を抱き、いつかを夢見た君
そんな君がここから解放されるのは必然だったのかもしれない
もしかしたら君のように思えていれば、自分も…なんて遅すぎたか
きっと君はこれからさまざまな経験をして
いつの日にか
ここのことすら忘れるんだろうね
….それなら
ねぇさいごに少し時間を頂戴よ
一言だけ言わせておくれ
『君の人生に幸あらんことを』
大切で大切で何よりも大事で何よりも憎らしい君に、
ありったけの呪い(祝福)を
【飛べない翼】
カチッ
ただいま
君の影響かな、いつの間にか当たり前に言うようになってたんだ
灯がついてるのが嬉しくて
おかえりってかえってくるのが幸せで
……、
夕食が用意されてて
その日あったちょっとしたことを話して笑い合って
たまにはお礼にって
君が食べたいって言ってたお菓子を買って帰って
………、
知ってたんだよ
知ってて知らないふりをしたんだ
こんな毎日がこれからも続けばいいって
…………、
でも
いつまでもは無理なんだ
最初からわかってたんだよ、だから聞いたんだ
そしたら
君は諦めた顔をしながら正直に話してくれたよね
病気なんだって
対処法がないんだって
後、少ししか生きれないんだって
……………、
覚悟してたはずなのにそれを聞いてさ
やっぱり聞かなければよかったって、そう思っちゃった
ひどいよね
君はずっと苦しんでたのに
………………、
君は対処法がないって言ったよね
でも一つだけできることはあったんだ
だからこそ知らないふりをしたり、君は話すのを躊躇ってたんだ
対処法がないのは輸血するための血がないから
って言うのも関係してたよね
もちろん、それだけじゃなく移植するための臓器がないのも。
…でも幸いなことに君のそばにはその二つが合う人がいた
これは幸運なことだ
お互いにとって
…もう直ぐで時間だね
さいごにひとつだけ
君のこと—
あ、切れちゃった
「はぁーこわい、なぁ」
死にたくないなぁ
でも君が生きれるのならこのくらい、我慢できる
いや、してみせるよ
どうかこれから先も君が幸せでありますように
…おやすみ
【眠りにつく前に】
ここは戦場
勝つか、負けるか
言わば白か黒かを決める戦い
お互いの持つ信念を通すための唯一の方法
話し合い?今更すぎる
それで解決出来てたらこんなことにはなっていない
ここにいる時点で殺り合う以外の選択なんて、存在していない
…わかってくれたのなら
いい加減覚悟を決めて踊りましょう
踊って踊って周りのことなんか気にせずに
踊り狂いましょう
どちらかの命が散るまで
【踊りませんか?】
なぁ、覚えているか
冒険者に憧れてその中でも一握りしかなれない英雄になるんだって、そんな夢を見ていたあの頃のこと
何度もギルドに通って
どうにかこうにかお願いして冒険者見習いにしてもらったよな
まぁ子供だからって薬草採取、脱走したペット探し、掃除くらいしかさせてもらえなかったけど
それでも諦めずにせっせと依頼を受けて成人した時にやっと正式に冒険者になれたんだ
あの時は嬉しかったなぁ
今までしてきたことが報われた気がしてさ
いろんなところを冒険して、いろんな経験を積んで、今じゃ英雄だ
ここまで来るのは長いようで意外と短かった気がする
その過程はいいことだけじゃなく悪いこと、嫌なことも沢山あった
何度だって後悔をして、何度だって乗り越えて、そうして今まで生きてきた
だからさ、充分満足してるんだ
自信を持って言えるよ、
さいっっこうな人生だったってこれが歩んできた人生なんだって
な、お前もそう思うだろ?幸せ者だったって
お前と一緒に歩んできた人生は誇りでしかない
しかも最期をお前に看取ってもらえる
これ以上の幸せは天罰がくだっちまうだろうよ
…なぁ泣くな、笑えよ
そんなに泣かれたら心配で逝けないじゃないか
ふいてあげれたらよかったんだけどなぁ、もう、腕も動かせないみたいだ情けねぇ
…あぁありがとうお前が笑っていてくれるのなら安心して逝ける
もしも本当に生まれ変わりがあるんだとしたら
またお前を見つけてみせるよ
今度こそお前に告げるんだ
"◻︎◻︎◻︎◻︎"って
【巡り会えたら】