雨に佇む脱力から逃げたくて
小さな社会を適当に畳んでみたの
あの子やあいつ 楽しい記憶さえも
重いを賭け 全部である高次元へ
足元が濡れたのにまだ傘さすの?
まあいいけど
いつだってびびってんのに
いつだって気づくのは表面化してから
でも自己嫌悪と感謝で世界をとってやる
君は 君は? 変に泡立てないでさ
夜の海に行きがち大学生ですけど
元カノとも男友達とも今カノとも
フランチャイズなノリと思いきや
今刹那に揺れています顔の皆んな
空っぽ隠すけど波よりエンジン音
この退屈を見透かしてくれるリア友がいたら
麦わら帽子のあの子は
ボーイフレンドが引っ越すのに泣かなかった
たくさん摘んだハルジオンを抱える小さな腕
彼女は去り行く軽トラをまっすぐに見つめてた
夏風すれ違っても ひたすら現実を見つめてた
上手くいかなくたっていい?
まぶしい余裕だね
でももうおしまい
鈍くなんてなれない
こう産まれて こう死んでゆく
鐘の音が聞こえた。決してそんな大きくない音。しかし、酒盛りの場は静止して、全員がいつのまにか開いていた戸の方を見た。正確には戸のへりに立つ赤い革ジャンを着た大男を。
顔を見合わせても誰のツレでもないらしい。舎弟どもがナタを持って詰め寄った。
また、鐘の音が聞こえた。男は片足を踏み出して身を屈めると、力まかせに舎弟達を切り伏せてしまった。唖然とする8畳敷きの部屋には、痛みに悶える声だけが渡る。
「赤い自警野郎には気をつけたほうがいいぜ」
酒の回った頭がようやく思い出したのは、売春屋のあんちゃんにいつだっけかに聞いた言葉だった。こんな世紀末みてえな廃国の田舎でたった1人で何ができんだ、と笑い飛ばしたんだった。そいつが今日訪ねてきたってわけか。
よっぽど刀に自信があるようだが、全員でかかりゃどうもできねえだろ。俺は舎弟どもにドスを効かせて囲うよう指示を出した。
「悪いな!ガンジャ育ててばかすか売ってる俺らの方がよっぽど影響力があんだよ。うぬぼれんなよ馬鹿が!」
と俺が言ってる最中に、また鐘の音が聞こえた。そして男は横に大きく横に刀を振ってから、タックルみてえに体をかがめてこっちに突っ込んできた。舎弟がナタを振り下ろそうとすると鳩尾に肘が入った。俺は男を受け止めるためナタを正面に構えた。しかし、土足の相手と違って靴下の俺は畳で踏ん張れず転んでしまった。そして、男は的確に俺の腱や太ももを切りつけていく。くそが。吠えたくなるほど怒りがこみあげてくるが苦痛に力が入らない。
睨みつけると男は応えるように俺の手とナタをライディングブーツで踏みつける。そして、力まかせに肋骨の隙間に刀を刺し、タバコを吐き捨てた。喉から口と血が込み上げる。くそ、こんなとこで!意識が遠のく中で、断続的な鐘の音と舎弟どもがやられる声が頭に響いていた。