距離が結局 邪魔をする
この焦りも あの後悔も
心は言葉をもってしても無力
単純で強力な障害物だな
電波に託したって無駄だ無駄
愛情でよけた未来に確信を置いてきちゃった
歯と目がギンガムチェックの悪魔の列に並べば
合わせた両の手の中に戻るはず…たぶん
でも一旦、石炭袋でシャワーを浴びなきゃ
失礼になっちゃうから
冬の夜空をイカロスの翼で渡ってる道すがら
この手紙を書いています
セーターおろしても意味ないわ
だって着る予定ないもの
朝のズレから最高にバッドな日は
ヘッドフォンからこう聞こえてる
「自分に嘘はつけないから
人生の灰色パートを忘れられない
ずっとハイでいなきゃバッドになるって
本物のおマヌケさんになったみたい
だから独りの日はベッドでくるまってる
ああ私って… 私って…」
きっと願ったってしょうがないわ
神様も私に飽きたでしょ
落ちていく太陽がボタニカルでいっぱいの水瓶に差す
彼女はコルクボードに写真を貼っていたが手を止め
愛着のあるテーブルに色づく気配をそっと撫でる
しばらく時が伸びる そして
打ちっぱなしの壁に聡明な面した愛犬の鳴き声
きっと彼のおかえり
カーテン閉めて暖房つけよう
宵に暮れたなら部屋にひだまりを!
キャンドル塔での事件が解決してから、マダムグリムは忙しい身らしくちっとも会ってくれない。結局、僕ら「こども自警団」は森のツリーハウスにたむろっている。みんな拾ってきた新聞を読むときだけ目をらんらんとさせるけど、あとはどこか虚しい空気がただよっている。かくいう僕も瓶の王冠を眺めるのに飽きてきた。ヴィルヘルムさんはミュンヘンまで無事に着けただろうか。考えてもどうしようもないことをどうしても考えてしまうけどみんな口には出さない(ピーターを除いては)。それは今回の一件で僕らの中に共通して生まれた暗黙であり戒めなのだ。
何もかも丸く収まるなんて都合がいいことは、滅多に起きない。ささくれだったチクチクを忘れる頃に、やっと僕らは大人になれるのかもしれない。