「最近気づいたんだけどね、
月って世界に一つしかないんだよ」
当たり前のように言って見せたけど
「うん、太陽も一つだね」
君ももちろん当たり前のことを言った
どこにいても同じものを眺めることができる
そんな世界はロマンチックだと思ったから。
君の笑顔が可愛すぎて直視したら
視界の中央に残像が付き纏うあの現象が起きた気がして
ちょっと目を逸らす
外ではお日様が燦々と僕らを照らす
夜には月に光を届ける
「汚い」
近くの海はゴミだらけで、治安が悪い
家族はあまり近づけたくないらしい。
うみについて話すね。
どこまでもいけるって素敵と思わない?
大陸が海で繋がって端っこなんてないの
すみっこだと思ってたところはただの区切りだったし
夢みたいに思ってる数千キロ先は現実が存在してる
うみってどのくらい深いのかな
どのくらいで苦しくてどのくらいで心臓が止まるのかな
魚が見てる世界って人間が思ってるより
彩度が乏しいんだろうな
波音に耳を澄ませて
汗をかくのは嫌いじゃないけど
君に会えるんだから気にしないわけにはいかない。
「明日からクーラーつくかな」
「外よりは教室の方が全然ましだな」
窓から入る風も熱を帯びる
体温もジリジリ上がってる
きっと夏のせい
あの子の髪が風に靡く
風が青かった気がした
貴方がいなくなるくらいなら、いっそ
「遠くへ行きたい」
貴方とならどこへでも、何度でも
「遠くへ行きたい」
どうか私を旅のお供にどうですか。
高嶺の花子さん。
僕のこと覚えてたらでいいので
お話ししませんか。
本物のクリスタルの声はサクサクしてるらしい。
サクサクというよりコロコロとした可愛らしい君の声が
2時の方向2m先から聞こえる。
どっかで聞いたけど、ガラスとクリスタルを見分ける方法は余音があるかないか。
もちろん僕の耳には残ってるよ。
君の心に僕の余韻なんてないんだろうな。
あったらいいな。いやないか。
ぱちっと目が合った。