貴方がいなくなるくらいなら、いっそ
「遠くへ行きたい」
貴方とならどこへでも、何度でも
「遠くへ行きたい」
どうか私を旅のお供にどうですか。
高嶺の花子さん。
僕のこと覚えてたらでいいので
お話ししませんか。
本物のクリスタルの声はサクサクしてるらしい。
サクサクというよりコロコロとした可愛らしい君の声が
2時の方向2m先から聞こえる。
どっかで聞いたけど、ガラスとクリスタルを見分ける方法は余音があるかないか。
もちろん僕の耳には残ってるよ。
君の心に僕の余韻なんてないんだろうな。
あったらいいな。いやないか。
ぱちっと目が合った。
わたくしめが「夏の匂い」についてお話しするのは
おこがましい限りですが、一言失礼します。
木漏れ日の気持ちよさはなんといっても
夏がいちばんでしょう。
アスファルトが焼けつき、キラキラしすぎて
私は薄暗いクーラーの効いた部屋で過ごします。
近頃夏の匂いを感じたのは、あの鉄琴の音や
つたないリコーダーの音なんかです。
海や川など水辺に行かなくとも
少しの風でうれしくなりたいものです。
君は夏らしいレースのカーテンが風と踊る姿に見惚れて
僕はそんな君の横顔に見惚れて
外の世界なんかそっちのけでアイスをぱくり
まばゆい光に隠れて、それでいて輝いていたのは
君がいた夏と溶けかけたあいすでした。
僕は笑った。
君は間違えた。
たったそれだけだったのに、赤らんだ頬と
少し青がかった瞳が忘れられない。
数学の授業中に空を見ていたんです。
まさに上の空って感じで、面白いことなんか何にもなくて。
そしたら隣の子がとんとんって。
右肩に感じる左手の人差し指に動揺して、僕はなにが起こったのか、脳みそが処理できなかったんです。
後で気づいたんですが、先生が僕を当ててたらしいんだけど
その子はあーあと言わんばかりにこっちをみてくる。
「じゃあ代わりに高橋」
その子の顔は自信に満ちて、回答を述べました。
「いやそこは...」
ころっと彼女の表情が変わった瞬間、
なぜか笑っちゃって、失礼だと気づいて君の様子を伺うと
恥ずかしそうにほおが赤くなっていました。
お互いに気づいてくすくす笑って。
深い意味なんてないけど、君の瞳につられて
今年の春は青がかってきました。