冬は一緒に凍えてくれる
私は冬の寒さに凍え
冬もまた 凍えている
ほかのどれよりも
孤独で つめたくて やさしい冬
寒い と言えば
寒いでしょう と返す
あたためてはくれず
それでも そっとそばに佇む 冬
宝物って
いっぱいあったらすてきかな
わたしは
ひとつがいいな
ひとつを一心に愛して
一心にだいじにして
一心に磨き上げて
一生それを色んな角度から眺めて
ついてしまった傷をなでて
一生あたためて
そんなことが できるひとでいたい
たくさんの想い出が
わたしを作っています
この想い出たちを
わすれるときがきたら
わたしは わたしでなくなるのでしょうか
未練なく旅立つには
想い出を増やしすぎました
だからひとは 旅立つ前に
たくさんの想い出を手離すのかもしれません
踊りませんか?と
毎夜手を取るのは
不安や 恐怖や 孤独であった
逃れようのない手に任せ
踊り 踊らされ
踊り疲れてやっと眠る
そんなのを繰り返すうちに
すっかり 彼らの友となった
そうして私は今や
こちらから手を差し出すのだ
不安や 恐怖や 孤独に向けて
踊りませんか?と
窓から見える景色が、好きだった。
窓を額縁に、自然が描き出すものを楽しむ事ができた。
隣の公園の桜が、二階にある私の部屋とちょうど同じくらいの高さだったので、春には満開の桜が額から溢れんばかりに見えていた。
のほほんとして、全てを否応なしに穏やかにしてしまうような春は少し嫌いだった。でも、空気に溶けそうな淡いピンク色で、しあわせをそのまま絵に描いたような桜がふわふわと揺れているのを見ると、春も悪くないと思えた。
夏が近づくと山の竹林がさわさわと音を立て、夜には蛍が飛んだ。より夏が深まれば、濃いみどり色の空気を蝉時雨が震わせた。
紅葉の色が変わっていくのを眺め、金木犀のかおりで秋の訪れを知った。遠くには、彼岸花が畦道を赤く染めているのが見えた。
たまに夜中まで眠れずにいると、絹を裂くような音が聞こえた。うつくしい、鹿の鳴き声だった。
冬になると辺りを真っ白にするほど雪が積もる。
もう何ヶ月もすればかわいい花を咲かせる桜も、この時は水墨画のような幹に雪を乗せ、重たそうにして耐えていた。
日が昇る時の曖昧な空の色も、日没の強い色彩も、全てを描き出す窓だった。
わたしと共に育った窓。
これからもわたしの心に、生きていく窓。