『踊るように』
私はダンス部の部長だ!
音楽もダンスも大好きで今とっても幸せだった。
県大会に向けて練習をしているところだ。
私はダンス部の部長だった。
事故にあい、耳が聞こえなくなった。
もう、踊れない。
大好きだった音楽も聴こえない。
聞こえないなんて嘘だ!
認めたくない、嫌だ嫌だ、
私は手話なんてなくても喋れるし、
音だって少しは聞こえる
だから、踊らせてよ、
『時を告げる』
ようやく楽になれるんだ。
痛くて痛くて、苦しかったことも、明日できっと終わるんだ。
別に明日で終わると言われたわけではない。
もうなんとなく分かるんだ。
自分のことは自分が一番わかっている。
でも、楽になれるはずなのに、僕は泣いてしまう。
悔しい。
この世界で弱く生まれた僕が。
それでも、周りの人たちは僕に暖かい光をくれた。
だから、僕は、少しでも生きたいと思えるようになった。
治療は頑張ったし、痛い注射だって我慢した。
苦しくなる薬だって、にがい薬だって、頑張って飲んだ。
それだけ頑張ったけど、僕はもう、その時が来てしまったようだ。
今日が明けないでほしい。
でも、それは叶わず、僕は段々と意識が遠のいて、あたたかい光に包まれていく。
お兄ちゃんは海に帰った。
私のためにきれいな貝殻を見つけてくると言って。
お母さんとお父さんにこのこと言ったら、
ずっと怖い顔で私を見てくる。
あなたのせいよ!!
おまえのせいだ!!
私はぶるぶる震えながらお兄ちゃんが浜辺でくれた
『貝殻』をギュッと握った。
今日も帰りは12時過ぎ。
手を洗ったついでに、鏡を見ると、疲れきってゲッソリした私がいた。
上京してきたばっかの頃は、東京なんて憧れで
全てがきらめいていた。
あの頃が一番楽しかった。
いつから憧れていた東京が、息苦しく感じるようになったのだろう。
今じゃ東京は牢屋のように苦しい。
昔は嫌いだった、田舎の実家に帰りたい、
夜に見たあの星の『きらめき』を見に行きたい、
皆にとっての些細ことは、私には重く感じる。
些細なことでも気にしてしまう。
あなたは「そんな些細なこと気にすんなよ」って言うけど、
私にとっては些細なことではない。
もし、些細なことでも、私はそれだけで落ち込んでしまう時がある。
冗談で「バカじゃん」と言われても私は気にしてしまう。
挨拶することすら、迷惑じゃないかとか、
下の名前で呼んでいいか、
そんなことだけでも私にはとても勇気がいる。
あなたにとって、『些細なことでも』