一昨日妹が星になった。
お母さんとお父さんに聞いたら急に倒れたと言われた。
大好きだった妹。
どうして急に。
妹の遺品整理をしていたら、日記を見つけた。
1月 日
たのしいな。
すごくたのしいな。
けど、おこられちゃった。
てがいたいよ。
1月 日
たのしいな。
すこしつかれた。
けど、まだまだ頑張らなきゃ。
てと足と体中いたい。
短い文ばっかり?
どうしてだろう、妹は日記書くの好きなはずなのに?
次のページを見てみると。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いお父さんお母さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいいやだいやだもっと頑張るから許してください。
私はもう一度前のページを見た。
縦読みだったのだ。
たすけてと、何度も、私は気付けなかった。
大好きだった妹は親から虐待。
気付けなかった。
1月☓日『私の日記帳』
『向かい合わせ』
私は二人暮らしをしている。
椅子も2つあるし、食器も二個づつある。
私はいつも通り朝ごはんを2人分用意して、向かい合わせに座っている彼の前に置いた。
向かい合わせに座っているのにいつも彼と目が合わない。
話しかけても返事はないし、私のこと嫌いになっちゃったのかな。
私は彼の前に花瓶に入ったワスレナグサを置いた。
ねぇ、私をおいてどこ行っちゃったの、帰ってきてよ。
私は、向かい合わせに座っている透明な彼に必死に話しかけた。
『やるせない気持ち』
昨日お兄さんが空になった。
大好きだったお兄さん。
私のたった一人の味方だったお兄さん。
私はお兄さんの作ったご飯が好きだった。
もう食べられない。
この間まで、食卓を囲んでいたのに。
私のせいで。私を庇ったから。
一生このやるせない気持ちで生きていかなきゃいけない。
苦しい、寂しい、何もできなかった。
私はお兄さんの写真の前にオレンジのスイートピーを置いた。
愛されなかった私にとってあの日々は幸せだった。
たとえそれが犯罪だったとしても。
『海へ祈りを』
今日も思い出の場所に来た。夕日が水面に反射している。
穏やかな波。あの日の荒々しさはどこへいったのだろう。
そんなふうにぼんやり海を見ていた。
でも、心のなかでは恐怖と、憎しみ、許せない、そんな感じがした。
奪っていったのだ、幸せを。
海は私の幸せを波に巻き込んで沈めていったのだ。
でも、大切な人は海にいると思うと、どうしても海が、恋しくなる。
悔しい。悔しい。この気持ちはなに?
近くの花屋で買ったピンクのゼラニウムを私は海に向かって思いっきり投げた。
大切な人が、最後にいった約束を、私は忘れない。
その約束がなければ私は今、ここにいなかった。私は忘れない。彼との約束。あの日のことを。