『海へ祈りを』
今日も思い出の場所に来た。夕日が水面に反射している。
穏やかな波。あの日の荒々しさはどこへいったのだろう。
そんなふうにぼんやり海を見ていた。
でも、心のなかでは恐怖と、憎しみ、許せない、そんな感じがした。
奪っていったのだ、幸せを。
海は私の幸せを波に巻き込んで沈めていったのだ。
でも、大切な人は海にいると思うと、どうしても海が、恋しくなる。
悔しい。悔しい。この気持ちはなに?
近くの花屋で買ったピンクのゼラニウムを私は海に向かって思いっきり投げた。
大切な人が、最後にいった約束を、私は忘れない。
その約束がなければ私は今、ここにいなかった。私は忘れない。彼との約束。あの日のことを。
8/23/2023, 1:36:00 PM