気付かなければ良かった。
ただの飲み友達でいたら良かった。
肩を並べて歩いて、気軽に触れる関係のままで。
私の軽口や冗談、
素直に表わす感情そのままで丁度良かったのに。
なんで気付いちゃったんだろ。
(好き)に気付いた瞬間から、
(嫌われたくない)が始まってしまう。

空回り。

そのままの自分でも愛されるはずなのに。




<後悔>

夏が近付くと思い出す。
陽が長くなってきて、部活の終わる時間も長くなる。
タ方と夜の境目みたいな、そんな時間に友達数人で
きゃいきゃい言いながら帰る道。

分かれ道、信号、家の前、立ち止まっては何気ない話を
いつまでも。明日も会うのにね。
思い出しもしない、思い出せないあの頃の私たちのお喋り
が、今でも胸のどこかでキラキラしている。

もう戻れない小さな思い出。

空はピンクから紫へ変わる。
紫から深い深い夜の闇へ。


『失われた時間』