♯ 意識高い系
体は食べたものでできている
自分の体を大切に思う事は大切な事なのでは?
それは「意識高い系」なのだそう。
でもなんかそれって、少々、嘲笑されているではないか。
意識の低い人に嘲笑されるのはいかがなものか。
意識の低い人にはわからないものなのか。
♯ 八宝菜
初めて母親に習った料理は八宝菜だった。
うら若き女子が作りたい料理ではない。
なぜ料理を習いたいと言ったのか、その背景を考慮してくれるような人ではない。
母親の言うことは絶対だった。
一番簡単だから
確かにそうだった。簡単だ。
でもそうじゃない。
仕方ないので、本屋さんでレシピ本を買った。
でもよくわからなかった。基本的な事がわからないと難しかった。一人では難しかったのだ。
小学生の時は友達の家で一緒にアイスクリームなんて作ったりして楽しかった。なんでか固まらなかったゼリーとか。
まーグスグスしていても仕方ない。
デートまで日が迫っていた。
なんとかしてお弁当を作って普通のデートをしてみたかった私は、仕方ないので、はっきりと卵焼きを習いたいと言って教えてもらった。
残念ながら私の作った卵焼きの焼き色が気に入らないのかダメ出しされる。美味しそうに見えないらしい。
褒めて育てるなんて思いつきもしないのだろう。
褒めても褒めなくても勉強はしていたし、いつも普通を目指していたのだから、親として特に困りはしなかったと思う。
でもダメ出しより、こうした方がいいよってアドバイスくれたらもっとできる子になれてたかも知れないのにな。
♯♯ 3/9 Another view
バスに乗っていた
ふと見ると見覚えのある大きなバックを重そうに持って乗り込んできている姿を見つけた。
ここからは声かけられないなー
スマホでメッセージ「後ろにいるよー」
振り返ってるけど、見えないかもなー
降りる時に声をかけた「バイバーイ」
あの大きなバッグ、今から病院だな。
もうどれくらい看病しているだろう。
すごく疲れた後ろ姿だったな
しばらくして悲しい知らせが届いた。
自分の過去の事を思い出して、涙した。
あの時と同じ思いをしているのだろうと思うと胸が締め付けられるようだ。
看病、よく頑張ったね。
幸せに過ごさせてあげれてたと思うよ。
労いの言葉をかけてあげるくらいしかできないけれど。
♯ 3月9日
バスの中
メッセージが来た
後ろにいるよ
たまたま彼女と同じバスに乗り込んだようだ
振り返って見たが見えない角度だった
降りる時、バイバーイと手を振って彼女は降りた
しばらくして病院の近くまで来たので降りた
幾日も経ってから聞いたが
すごく疲れた後ろ姿に見えたそうだ
数ヶ月間の看病
治ることのない病
看病してはいるが、治してはあげられない
肉体的にも
精神的にも
すっかり疲れ果てていたんだと思う
長かった看病の生活が終わった
しばらくは泣き明かした
泣いても泣いても、どんなに泣いても何も変わりはしない
それでも泣いた
お疲れさま、看病、よく頑張ったね
涙が溢れ出す
バスの中で疲れた後ろ姿を見ていた彼女は、優しく労いの言葉を掛けてくれた
そうだ、頑張って看病した
一生懸命に看病した
そんな事は話はしなかった
でもわかってくれていた人
なんだか救われた
♯ 風が運ぶもの
最近やたらくしゃみが出る
寒いからかも
鼻水も出る
でも風邪は引いていない
おでこがかゆい
目は痒くないのに
やっぱこれはもしかして
風に運ばれているのかも知れない