ただ、私が欲しいのは、あなたがあの子に注いでいる愛情。
それ以外は何もいらない。何も望まない。小さい頃から、何もかも持っていた。欲しいものはなんでも手に入った。祖父が会社を創立し、今は父が2代目の社長。私には兄弟姉妹が多くいるから、多分その中から1人後継として社長になるのだろう。だから、お金は腐るほどあった。大きな家も、権力も、母譲りの誰もが目を惹くような整った顔立ちも、スタイルも、何もかも持っている。
なのに、たったひとつ、私がこの世で一番欲しいものは手に入らない。
あなたからの愛は、二度と私には手に入らない。
だって、私たちは……
絶対に恋愛することの出来ない、
血の繋がった兄妹なのだから__
私は、ある一人の男の子のことが、大好きだ。
今も変わらないのだけれど、どうしてもその人と結婚したい。愛し合いたい。
でも、それは叶わない。絶対に。
わかってる。そんなこと。一縷の望みだってないことも。
昔に、聞いたことがあった。
__「お兄ちゃん、私の事好き?」
『はは、なんだよいきなり笑好きに決まってるだろ。こんなに可愛い妹を嫌いになるわけが無いだろ?』
(…あーあ、そういう意味じゃないのに…一生、わかってもらえないんだろうな。伝えられないんだろうな…)
「……ふーん」
『おい、どうした?顔真っ赤だぞ。熱でもあるのか?ちょっと待て、見てやるから。』
「…っ!急に触るな馬鹿!」
(こっちの気も知らないで…!誰のせいで赤くなったと思ってんだ!)
『おいおい、相変わらず口が悪いなぁ笑まぁでも、俺に向かって怒鳴れる元気があるなら熱は無いな。よかった。』
「ご心配どーも!あ、そういえば私お友達と一緒にお買い物行くんだった。行ってくるね!」
『お、そうか。気をつけて。楽しんでこいよ。いってらっしゃい。』
私は逃げるようにその場を後にした。
何もいらない。
あなたからの愛が手に入れば、それ以外何もいらない。あなたが私のことを好きになってくれるなら、何もかも失っても構わない。
私は___この世界の誰よりも、あなたのことを愛せる自信があります。あなたのことをなんでも知っている自信があります。あなたの好きな、レモンパイをこの世の中で一番上手に作れる自信があります。
__これほど強く願っても、相手のことを想いつづけても、私の恋は、一生報われませんか?
これからも、ずっと一緒にいよう。
そう言ってくれていたあなたは
どこへ逝ってしまったの。
私は君の目が嫌いだ。だが、瞳は好きだ。
色素の薄く、澄んだとても美しい瞳。
きっと誰が見ても綺麗だ、と思うだろう。
でも、目は嫌いだ。大嫌いだ。
君の目を見つめると、自分が何者なのか、
わからなくなってしまうから。
何もかも見透かされているようで、
私が君を好きだと思う気持ちを、
知られてしまいそうだから。
私の友達は、自殺した。
彼女は私に言っていた。
「助けて。もう死にたい。」
「辛い。うちのことを救って。」
私は何も出来なかった。
「私は○○の味方。安心して、ずっとそばに居る。」
「○○は私のことを救ってくれたんだから、私も○○を救う。絶対に、約束する。」
そう言うので精一杯だった。
彼女はなんて言う言葉をかけてもらいたかったのだろう。彼女の辛さは私にはわからなかった。彼女が逝ってしまった今でもわからない。
辛い、は、人それぞれ違うから。
だから、わからなかった。私に何をしてほしかったの?何を望んでいたの?_____
死後の世界がどうなっているのかなんて、誰にも分からない。でも、そこが、あなたにとって救いの場所になったなら、これ以上の幸せはない。
そっちで幸せなら、私も幸せだよ。
いつか私も、そっちに逝くから。
待っててね、とは言わない。言えない。
早く次の人生を歩んでほしいから。
辛かった過去を、忘れてほしいから。
これだけは伝えたかった。
___次の人生では、幸せになってね。
私なんかと出会わないで、もっともっと、素敵な友達たくさん作って、素敵な旦那さんと結婚して、子供もいて…約束して。幸せに、なってね。
…と。
私の事を忘れないでほしいで。
顔も、声も思い出せなくても、
思い出だけは、心の中に____