29.寂しさ
何も変わらない日常。帰ってくる家には誰もいない。
親は夜まで帰ってこない。
帰ってきても顔を合わせることはない。
俺が小さい頃、親が離婚した。
俺は母さんの方について行った。でも今の母さんは、
精神がおかしくなり変な男について行って、
酔って帰ってくる。そんな親が嫌いであんな風には
なりたくないと思った。そして寂しかった。
1人で家にいる時間が嫌いだった。
初めての彼女ができた。その子は実行員が一緒になってから、ずっと隣にいた。休み時間も放課後も、実行員の仕事がない日でも。
好きな人のタイプとか、恋愛関係の質問を
山ほどしてきた。「ねぇ、もうすぐクリスマスだよ。恋人たちの季節だよ。なにか予定ある?一緒にどこか行かない?」可愛いと思った。だから、
求められているとおりに告白をした。
パズルの最後のピースをはめるみたいに。
手を繋ぐのも不快ではなかった。
いい匂いがするハンドクリームの香りに包まれる。
俺の日常は明るく変わった。彼女の愛に答えるように俺も頑張って愛を伝えていた。
でも俺の空いた心は埋まらなかった。
愛が欲しい。親から愛されたかった。
彼女のことを思うと申し訳なかった。
だから、別れた。
君は涙を流しながら俺を睨み帰ってしまった。
あぁ、悪いことをしたな。
そう思いながらまた俺の心にはぽっかり穴が空いた。
28.冬と一緒に
君の隣にはいつもあいつがいる。僕はあいつが憎い。
あの子の隣には僕がいたのに!
付き合い始めたら僕のことは後回しで、イチャついて
あいつは僕を見て「奪ってやった」みたいな
ニヤついた顔しやがって。
僕はムカついて、後ろから近付きあいつを階段から
突き落とした。もう後戻りはできない。
ニヤケが止まらなかった。あいつは死んだ。
「やっと邪魔されまくてすむ。」
冬と一緒にあいつは消えた。僕は君の隣に行き、
君を慰めた。これでいいんだ。
君に、あいつは似合わない僕じゃないと…
これで僕も君も幸せだね。
27.とりとめのない話
天気の話。昨日見た夢の話。今日のご飯の話。
テレビの話。好きなことの話。
君とのたわいない話。とても幸せな時間。
でも明日には忘れてしまう。
そんな僕を笑顔で見てくれる。
僕はなんて素敵な人と出会えたのだろう。
これからも彼女を大切にしたい。
この笑顔を守りたい。
君を大切に、この時間を…毎日に感謝。
26.風邪
僕は熱をだしてしまった。
とても高く、40度近く出てしまった。
「最悪だ…」頭が痛い、喉が痛い、体がだるい。
目の前がグラグラしていて気持ちが悪い。
目をつぶっていたらいつの間にか寝てしまっていた。額が冷たい。冷えピタをつけてくれたのだろうか。
目を開けると天使がそこにいた。
夢でも見ているのではないか?そう思った。
「目覚めたの?おはよう。体調はどう?」
そう聞かれたが、混乱していて声が出ない。
どういうことだ。天使が目の前にいる。
そんなことを思いながらまた寝てしまった。
起きると、夕方になっていた。
隣には夢に出てきた天使に似ている人がいた。
よく見ると彼女だった。
僕は夢でも現実でも彼女が看病してくれたんだと
とても嬉しかった。
これからも彼女を大事にしようと思う。
25.イルミネーション
僕は付き合っている人がいる。
その子は可愛くて、時々見せる可愛い笑顔が
たまらなく愛おしい。子供みたいに小さくて可愛い。
そんなこと付き合えるなんて僕は幸せ者だと
そう思った。だが、そんな幸せは長く続かなかった。
彼女が癌になってしまった。彼女はみるみる
痩せ細っていた。辛いはずなのに彼女は笑顔で
僕を見ていた。
そんな彼女を見ていると涙が出そうだった。
彼女は亡くなってしまった。
僕は悲しみに暮れていた。
毎日声が枯れるまで泣いていた。
久しぶりに外を見ると雪が降っていた。
家から出ると寒くてイルミネーションが見える。
「もうこんな時期か…」
そう思いながらマフラーを巻いた。
「君と来年もずっと一緒に見たかったな〜笑」
また目に涙を溜め込んで雪の中を歩き始めた。