#距離
【past distance】
友達に、距離感が異常におかしい奴がいた。
そいつの名前は山田。
クラスでただ1人ふざけていて、みんなを笑わせてくれる。みんなに人気で良い奴。だが距離が近い。
何をするにも距離が近すぎる。
話す時は、拳2つ分くらい近付いてくる。
そんな山田だが、某ウイルスの感染拡大の影響で、距離を取らなくてはいけなくなった。
それからというもの、山田はとても静かになった。
ソーシャルディスタンスがどうとか言われ始めて、山田の異常な距離感はもう見れない物となった。
ある日、山田は黒板に文字を書き始めた。
『俺はみんなと話したい。でも今は話せないから、凄く悲しい。みんなと一緒に声を出して笑いたい』
その文字を見て、クラスのみんなが泣いた。
そこに担任の先生が来て、クラス全員が泣いているのを心配する。女子に言われて黒板を見る。
先生も同じように泣いた。
それを見て、涙を堪えていた山田も泣き出した。
声を出して笑えていた、あの頃に戻りたい。
クラスの誰もがそう願った。
#泣かないで
【言葉の難しさ】
「泣かないで?」と誰かに言われた。
誰に言われたかは覚えてないけれど、言われて良い想いはしなかった。
嫌な想い、つらい想いをしたのに「泣かないで?」なんて…意見を否定されたような気がした。
相手はそんな意味で言ったのではなく、励まそうとして言ってくれたのは分かる。
励ましてくれた相手に「その言葉少し嫌だ…」とは言いづらい。
自分も同じような経験をした事がある。
相手に気持ちを伝えるのは難しい。
だから嫌な想いをしてしまうのだろう。
#冬のはじまり
【無題】
冷えた空気の中、息を吐くと白く見える。
土を踏むと霜が降りているのか
「サクサク」と微かに音がする。
クリスマスの用意をし始める店が増え始める。
冬はもう目の前まで来ている。
#終わらせないで
【同じ絶望を知る者はいるのか】
僕は今、とあるゲームにハマってる。
そのゲームは世界的にも流行ってて、凄く面白い。
ただ、セーブ機能とバックアップ機能がなくクリアが難しいゲームでもある。
僕はそんなゲームのラスボスを倒している途中。
「よっしゃ!あと体力半分!」
そこに母が来て大きな声で言う。
「あんた!いい加減ゲーム終わりにしなさい!ご飯食べないの!?」
「食べる、食べるけど今は無理!」
「今は無理、今は無理って…さっきからずっとそう言ってるのに全然終わりにしないじゃない!」
「だっていま、良いとこなんだよー?」
「いますぐに食べなさい!」
「えー無理!」
「じゃあ、あとどれくらいで終わるの?」
「えー、1時間くらい?」
母が大きなため息をしてゲーム機に手を近付ける。
ブチッ
母がゲーム機の電源ボタンを押す。
「ちょっと!強制的に終わらせないでよ!」
「あのねぇ、ゲーム楽しいかもしれないけど、ご飯くらい食べなさい!」
母の長い説教の後、ご飯を食べた。
僕は急いでゲーム機を再起動させた。
だが、遊んでいたゲームのデータは消えた…
#愛情
【植物】
私は植物を育てている。
もともと、母が植物を育てていたのを見て、自分も植物を育ててみたいと思ったのがきっかけ。
「おはよう、今日の水だよ。元気に育ってね」
母は水をやるたびに、声をかけていた。
そうすると植物たちが元気に育ってくれるらしい。本当なのかは知らないが、植物に我が子のように、たくさんの愛情を注ぐのはとても楽しい。
「可愛いなぁ…」
植物に可愛いとさえ感じてしまう。
相手が植物だろうと愛情というものは大切だ。
言葉を発する事ができなくても、私たち人間と同じように生きているのだから。