柊 蒼真

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#距離

【past distance】

友達に、距離感が異常におかしい奴がいた。

そいつの名前は山田。
クラスでただ1人ふざけていて、みんなを笑わせてくれる。みんなに人気で良い奴。だが距離が近い。

何をするにも距離が近すぎる。
話す時は、拳2つ分くらい近付いてくる。

そんな山田だが、某ウイルスの感染拡大の影響で、距離を取らなくてはいけなくなった。

それからというもの、山田はとても静かになった。
ソーシャルディスタンスがどうとか言われ始めて、山田の異常な距離感はもう見れない物となった。

ある日、山田は黒板に文字を書き始めた。

『俺はみんなと話したい。でも今は話せないから、凄く悲しい。みんなと一緒に声を出して笑いたい』

その文字を見て、クラスのみんなが泣いた。
そこに担任の先生が来て、クラス全員が泣いているのを心配する。女子に言われて黒板を見る。

先生も同じように泣いた。
それを見て、涙を堪えていた山田も泣き出した。

声を出して笑えていた、あの頃に戻りたい。
クラスの誰もがそう願った。

12/1/2022, 2:11:47 PM