なにかないかな
自分の世界に色をつけてくれるもの
モノクロで面白みのない世界は味がない
誰か私の世界に絵の具を垂らしてくれないだろうか。
ただ、
待っているだけでは
なにも変わらないことはもう知っている。
無色がなにかに染まるまで、
私の世界を模索しにいこうか。
無色の世界
ひらり、ひらり
もう桜の花に、緑が色づいてきた。
桜が咲き誇るのを待つ期間は長いのに、
散るまでは短い。
まるで、新学期に勇気を出して入っていった
教室の扉みたいだ。
新しい出会いに緊張と期待が入り交じり、
勇気をだしてくぐった扉。
思い切って話しかけてみれば会話が弾み、いつの間にか緊張が散っていった気がした。
ほんの少しの勇気を出して、一歩を踏み出せば
緑のように日常に馴染んでいく。
毎年、そんなことを思いながら桜並木をくぐるのだ。
桜散る
3歳くらいのおんなのこが、公園で目を輝かせながらブランコに乗っている。
きゃあきゃあ笑っていて、足をじたばたさせながら、おかあさんに背中をおしてもらっていた。
気をつけて! と言いながら、おかあさんもにこにこと笑みを浮かべて背中を押していた。
小学生くらいのおんなのこが、ランドセルを背負って走っている。
じぶんの背より大きいランドセルを背負って、意気揚々と歩いていた。
買ってもらったばかりなのか、ランドセルはキラキラと輝いてみえた。
中学生くらいのおんなのこが、友だちとおそろいの制服を着て歩いている。
数学よく分かんな〜い! って大きな声で笑っていた。
ケラケラと友だちと顔を見合わせて、時折、お互いちょっかいをかけながら歩いていた。
高校生くらいの女性が、恋人と手をつないでベンチに座っている。
距離が近づいて耳打ちをしたあと、目を合わせて思いっきりそらした。
顔は赤らんでいて、お互いそっぽを向いていたが、手はつないだままだった。
社会人の私がベッドの上で目を覚ました。
時計の針は6時辺りを指していて、いつも通りの憂鬱な朝だった。
いや、いつも通りではないのかもしれない。
なんとなく、いつもより幸福感と劣等感があった。
夢を見ていたのだろう。なにかに憧れていた夢を。
もう大人になってしまった。もう夢を見ていられないことに気づいてしまった。
けれど、時々見る幸福感と劣等感のあるあの夢は、 わたし という少女の夢だったのかもしれない。