はじめ

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7/3/2024, 9:00:59 AM

【日差し】

「暑いな」
「夏だし」
「この強い日差しだけでも弱めてもらえたら幸い」
「駄目だろ、この強い日差しこそ夏」
「この、皮膚をじりじり焼くようなやつが?必要か?」
「必要かどうかと問われたら、ちょっと悩む」
「だよなー」
「アイス食べたい」
「分かる」

6/28/2024, 1:50:57 PM

【夏】

目を閉じても、高い湿度と温度が、眠りに落とさせてくれない。首もとを、汗が流れていく。
仕方ないので、ずいぶん夜中だけれども、サンダルを履いて外へ行く。草むしりの時に使った、携帯用蚊取り線香ケースを、火を付けた蚊取り線香を入れて、腰につける。漂う、独特の煙。
夜空にぼんやりと月が見えて、見ながら歩く。

「煙を止めてくれない?煙い」
突然、隣から声がして振り向くと、真っ白な肌と金色の髪の、背丈からして小学生位の子供がいた。しかし、
「き、つね?」
頭部のふわふわな三角耳と、背中の方のふわふわなしっぽを見て、つい呟く。子供はふふ、と笑って、
「ね、止めて。いいものあげるから」
そう言うので、何となく、線香を折る。火のついた部分はアスファルトに落として、消えるまで踏んで消した。子供は嬉しそうに、
「じゃ、これあげる」
こちらの手に何か握らせて、真っ直ぐ目を見てきて、
「おやすみ」

気がつくと布団だった。いつの間にか帰宅して、寝ていたのか。体をうーん、と伸ばそうとして、手に何か握っているのに気付いた。開く。
「石?」
淡い紫の、石がそこにはあった。
ついでに、蚊にさされていた。三ヵ所。

6/21/2024, 1:56:26 AM

【あなたがいたから】

(もうすぐ始まる……)
手に汗がにじんでくる。心臓がバクバク言い出す。
ここは学校の体育館の、ステージの袖。もうすぐ、私達が立ち上げた演劇部の、初回公演が始まる。文化祭の1ステージで、観客もさっき袖から覗いた限りでは多くないけれど、でも。
「緊張、してる?」
隣で、舞台衣装に身を包んだ相方が、こっちに囁いてきた。頷くと、
「大丈夫だって。ちゃんと稽古してきたんだし、ちゃんと出来る出来る」
笑顔を向けてきた。それでも私の顔が緊張してたのか、
「おまじない」
私の汗ばんだ手をそっと包んで、
「俺の虜にしてやんよ!的な気分でいってこい」
「何それ」
つい、小さく笑ってしまう。
(あ)
緊張が、和らぐ。姿勢を正して、
「ありがと」
小さい声で礼を言った。
幕が開く合図のブザーが鳴り響く。
(いてくれて、よかった)
さあ、開幕だ。

6/19/2024, 1:19:45 PM

【相合傘】

「降ってきたな」
「お前傘は?」
「朝は晴れてたんだよ」
「さて問題です」
「唐突に何」
「ここに折り畳み傘が1本」
「それを俺に譲ってくれて、お前はびしょ濡れと」
「誰が譲るか」
「じゃ、お前だけ傘で俺は濡れてもいいと?」
「言ってない」
「なら?」
「問題。傘1本でガタイのいい男子2人、濡れずに駅までたどり着くには」
「無理」
「だよなー」
「相合傘する?」
「仕方ない、入れてやろう」
「俺の傘なんですけど?」

6/18/2024, 4:21:49 AM

【未来】

明日のこと、明後日のこと、なんなら五分先のこと。
何を考えても、不安と恐怖しかなくて、きらきらした『明るい未来』なんて信じてない。
目を閉じて、開くことがないように。

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