夜景
「綺麗だね。」
「うん。きれい。」
「……。」
「……あのさ___」
「ねえ。」
「……なに?」
「私達、いつまでこんな綺麗な夜景見ていられるかな。」
「……わかんない。」
「来年はさ、私の分も一杯こんな綺麗な夜景見てよね。」
「私の分も、じゃなくて、いっしょに、でしょ?」
「……そうだね。」
車椅子に乗っているあなたは、寂しそうにそう呟く。
バカな私だって、ちゃんとわかってる。
あなたに来年が来ないことくらい。
目が覚めるまでに
ねえ。
私さ、昼寝したいんだよね。
買い出し行ってくれない?
え?嫌?いいじゃん。前は私が行ったじゃん。
……うん。よろ〜
私の目が覚めるまでに買ってきてね。
いや〜、起きたときに誰もいなかったら寂しいでしょ?
うん。そういうことで。
あの日、君が目覚めることは無かった。
でも、俺は待ち続ける。
起きたときに寂しくならないように。
君の目が覚めるまで__
手を取り合って
手を取り合い、見つめ合う二人。
そんなロマンチックなドラマを横目に、晩御飯を食べていた。
あの二人はこれからどうなるんだろう。
結婚?子供?
嗚呼。
こんなんだから僕は結婚出来ないんだ。
後先を考えすぎて、逆に何もできない。
それで成功したこともあったが、何か足りない。
僕に足りないものとは何だろう。
情熱?愛情?
それとも感情?
優越感、劣等感
優越感は下を見て得られるもの。
劣等感は上を見て得られるもの。
下には下が、上には上がいる。
じゃあ、多分私は中間だな。
普通の親から、普通に生まれ、普通に生きてきた。
これほど平均的な人間は居ないだろう。
無個性な自分は、
普通にに生きて、普通に働いて、普通に死ぬんだ。
でも__
一番嫌なのは、中途半端かも知れない。
普通過ぎて目立たない。
自分に、誇れる“何か”があればよかった。
これまでずっと
これまでずっと、耐えてきた。
これまでずっと、我慢してきた。
もう諦めてもいいはずだ。
生きることに。
ぬるい風が、下から舞い上がってくる。
僕は、学校の屋上に居た。
地面を見下ろす。
下は、めまいがしそうなほど高く、歪んでいた。
一歩踏み出せば死ぬ。
そうだ。
こんなに死を近くに感じたのは、初めてかもしれない。
そうか。
死ぬことに勇気なんて必要ない。
死ぬこと自体が、勇気のない行動だから__