窓から見える景色
ある寒い季節の雨が降る日、喫茶店を訪れていた。
客はとても少なく穏やかな時間が流れている。
窓際の席に座っている僕には冷たい雨が肌寒く響いているように感じる。
僕は誰かを待っているわけでも何かを待っているわけではない。
ただ、何杯目かも分からない少し冷えたコーヒーを飲みながら、ずっと繰り返しその一冊を読んでいる。
その本は海の見える場所が舞台で様々な人間模様がえがかれており、とても気に入っている小説だ。
僕は何度、この作品に登場したい、こんな場所に住んでみたいと思っただろう。
それほどまでに心踊る魅力的な内容の本なのだ。
いつか、僕にも窓から見える景色が晴れ渡るように感じることはできるのだろうか。
今は、まだ、先が見えない。
形の無いもの
これまでに様々な人間達が書いた絵や本や音楽などは多々ある。
けれど、人間が減っていき文明が廃れていった世界となった場合はどうなると思う。
文明が自然に飲み込まれていくとこだろう。
コンピューターなどの電機機器も使えず、本はボロボロと崩れていってしまう。
まるで形の無いものと化したようだ。
そんな、ひとりぼっちな世界をボーっと眺めていたら、夢から覚めた。
僕は思った。
夢を見ていることこそが形の無い何かでは…と。
声が聞こえる
天国ってあるのかな。
私みたいな人間でも行けるところなのかな。
今回ね、わたしは死にかけたんだよ。
うっすらとしか覚えてないけど、走馬灯も見た後に私は光眩しい世界にいたんだ。
でも、皆の声がして背中をおされた気がしたんだ。
それで戻ってこられたんだと思う。
もうすぐで皆のところに行けたなら、昔みたいに笑いあいながら話をしたかったなぁとも思っちゃった。
私は弱虫で臆病者だから、話せなかったことが沢山あるんだよ。
けれど、いろんな人たちがね、私を心配してくれて、助けてくれてたんだよ。
だから、私はもう少しこの世界にいるよ。
やっと見つけた、自分の夢を叶えるためにも。
きっと、天国は遠いんだろうね。
皆に私の声が聞こえるのはまだまだ先になるかもしれないけれど、頑張って生きていくよ。
空が泣く
雨が降っている。
貴方を想っているのかしら。
誰を想っているのかしら。
何も思ってはいないのかもしれないわ。
ただ、私が空が泣いているように感じているだけなのかも。
それでも良いと思ったの。
今の私にはぴったりの空模様なのだから。
君からのLINE
君からのLINEが届いて一週間以上がたった。
未読だが、どんな内容かは予想はつく。
既読をつけたくなくて開いていないだけだ。
遂に電話まで来た。きっと心配なのだろう。
何しろ、自殺をほのめかす内容のLINEを送ったのだから。
死ぬしか道はないと思っているんだ。
それでも、まだ実行できていない自分は臆病者だ。
決断をしてからの行動が遅すぎるなと苦笑する。
君からのLINEは無視するよ。
もう、後戻りはできないんだ。