君に会いたくて
朝起きて、思う。
そろそろ仕事してるのかな、お休みかな。
お昼ご飯を食べてて、思う。
今日は何食べてるんだろ。
ちゃんとごはん食べてるかな。
夕方、太陽が沈むのを見て、思う。
この夕焼け見てるかな。
夜寝る前、思う。
今日一日何をしてたんだろ。
そして、思う。
君に会いたい。
そうして、写真ホルダーを開いて涙を流す。
こんなことを思ってるなんて、絶対、秘密。
この世界は
「おはよう!」
「おはよ〜。」
いつものように、挨拶し合う声が聞こえる。
いつもと同じ景色だ。
ただ、ひとつだけ違うことがある。
隣が、色あせて見える。霧がかかったようにぼやけている。
隣にいるはずの人がいない。
隣にいつもいた人がいない。
隣で笑ってくれる人がいない。
この世界からあの人がいなくなった。
それなのに、この世界は何も無かったかのように時が過ぎていく。
大切なあの人がいなくなったのに、周りは何食わぬ顔で“日常”を過ごしている。
この世界は、残酷だ。
どうして
LINEが、ブロックされてる。
彼の声が聞けなくなった。
Instagramが、ハイライトを見れなくなってる。
私の唯一彼の写真を見れる場所がなくなった。
Instagramも、ブロックされてる。
彼に連絡する手段がなくなった。
それでも、私の名義でできた借金は請求が来る。
私のカードでしたキャッシュローンも請求が来る。
私の友達は、彼と会ってるらしい。
私の貸したお金で買ったバイクは売ってしまったらしい。
彼には彼女が出来たらしい。
それなのに、彼が元気にしてるという友人の言葉を聞いて、よかった。と幸せになってしまう。
ただ、人づてにしか聞けない情報。その情報を持つ友人を、羨んでしまう。
嫌いになっていれば、借金を請求できたのだろうか。
何故お金を返さずに連絡手段を消したのか、問い詰められたのだろうか。
あんなに喜んでいたバイクを手放せた理由を、暴き出せていたのだろうか。
彼女が出来たことを、手放しに祝福してあげられたのだろうか。
私は、どうしてを毎晩繰り返す。
どうして、彼と写真を撮らなかったのだろうか。
どうして、動画を撮ったり思い出を残さなかったのだろうか。
どうして、お金を渡してしまったのだろうか。
どうして、名義を貸してしまったのだろうか。
どうして、友人に嫉妬してしまうのだろうか。
どうして、あの日家を飛び出してしまったのだろうか。
どうして、あの後直ぐに謝らなかったのだろうか。
どうして、嫌いになれないのだろうか。
どうして、好きになってしまったのだろうか。
どうして?
こんなにも苦しい。
夢を見ていたい
「暖かいね。」
私は、彼と一緒にいる。
隣でくっついて、お布団の中で、ヨシヨシと頭を撫でられている。
冬はいい。こうしてくっついている口実があるから。
「明日仕事休みやし、2人でどっか行こか。」
「行きたい。どこ行く?」
「山とかどう。」
「いいね、ドライブしようよ。」
明日が待ち遠しい。
明日が早く来て欲しい気持ちと、今の時間を終わらせたくない気持ちが入り交じる。
「もう遅いし、寝ろよ。」
彼はそう言って、私を抱きしめ直した。
「うん。おやすみ。」
「おやすみ。」
そうして、私は眠りに落ちた。
「さむ。」
私は寒さで目を起こした。
なんとなく、幸せな夢を見ていた気がする。
どんな夢だったのか、何故かきつく抱きしめていた抱き枕を見て察しがつく。
ポツンと、抱き枕にシミができる。
抱き枕に顔を埋めて、もう一度寝ようとする。できれば、どこかへ遊びに行く夢を見たい。2人で出かけたことがなかったから。
布団を引き上げ、身体を温めようとする。でも、
「....さむいなぁ。」
君と一緒に
夜、寝る前に写真を眺める。
そこには笑ってる君がいて、楽しそうな君がいて、幸せになる。
細くなった切れ長の瞳も、恥ずかしげもなく開かれた口も、覗く鋭い犬歯も、風に吹かれる長い髪も、どれも君らしくて、愛おしい。
思わずスクリーン越しに、君の頭を撫でる。
上がる口角と共に、雫が頬を伝う。
こんな私を愚かだと君は笑うだろう。
でも、これくらいは許して欲しい。
だって、
君と一緒に、どこかへ行きたかった。
君と一緒に、歌い続けたかった。
君と一緒に、ドライブを続けたかった。
君と一緒に、風に吹かれ続けたかった。
君と一緒に、眠りに着きたかった。
君と一緒に、ご飯を食べたかった。
君と一緒に、笑っていたかった。
君と一緒に、居たかった。ずっと、ずっと。