瀬尾はやみ

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6/28/2023, 1:45:16 PM

春夏秋冬、全部きらい。夏は歩くだけで全身がじっとりと汗ばむし、電車は人間の匂いがもわっとたちこめていて、予定外の駅で降りることもしばしば。
子どものころは夏が好きだった。なかでも心踊るイベントはラジオ体操。普段学校へ行く日は早起きなんて出来ないのに、毎朝しっかり六時に起きて町内会のラジオ体操へ向かった。夏の朝はすっきりとしていて気持ちいい。汗ばむこともない。なにより密かに好きだった男の子に会える。普段、見ることのできない眠たげな顔を見るだけで今日も来てよかったなと思えたし、クラスメイトの知らない時間が増えていくことが嬉しかった。
そういう思い出もまるっと込みで、子どものころは夏が好きだった。

6/27/2023, 1:55:18 PM


帰りのホームルームの時間、進路希望書が配られた。「お前どうする?」「まだ決めてないや」とあちこちから声が聞こえてくるなか、こっそりと視線を湊に向けた。
真剣な眼差しで紙を見つめている。はしゃぐわけでも悲観的になるわけでもなく、淡々としているところがやっぱりいいなあと思う。じっと見つめていると、ぱっと顔を上げた湊と視線があった。にこりとも笑うでもなく、かと言って顔をしかめたりもしない。「一緒に帰ろう」と口を動かすと、湊は小さくうなずいて見せた。
進路希望書の提出は月末だからちゃんと考えておくように、と担任が言い残し、その日のホームルームは解散となった。
「湊、進路希望書どうするか決めた?」
「だいたいは決まってる」
「は!? いつ決めたの?」
予想外の答えに思わず声を上げた。湊もつられて顔を上げたが、また真っ直ぐ進む方へ向き直った。
「……二年の秋くらいには決めてた」
「かなり前じゃん」
「まあな」
どうして言ってくれなかったのだろう。毎日いるのに相談の一つもしてくれなかったことにショックと怒りが込み上げてくる。