瀬尾はやみ

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帰りのホームルームの時間、進路希望書が配られた。「お前どうする?」「まだ決めてないや」とあちこちから声が聞こえてくるなか、こっそりと視線を湊に向けた。
真剣な眼差しで紙を見つめている。はしゃぐわけでも悲観的になるわけでもなく、淡々としているところがやっぱりいいなあと思う。じっと見つめていると、ぱっと顔を上げた湊と視線があった。にこりとも笑うでもなく、かと言って顔をしかめたりもしない。「一緒に帰ろう」と口を動かすと、湊は小さくうなずいて見せた。
進路希望書の提出は月末だからちゃんと考えておくように、と担任が言い残し、その日のホームルームは解散となった。
「湊、進路希望書どうするか決めた?」
「だいたいは決まってる」
「は!? いつ決めたの?」
予想外の答えに思わず声を上げた。湊もつられて顔を上げたが、また真っ直ぐ進む方へ向き直った。
「……二年の秋くらいには決めてた」
「かなり前じゃん」
「まあな」
どうして言ってくれなかったのだろう。毎日いるのに相談の一つもしてくれなかったことにショックと怒りが込み上げてくる。

6/27/2023, 1:55:18 PM