せ な

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12/22/2024, 1:28:19 AM

「 この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ 」

私が、この歌を歌ってもいいのだろうか。

未来もない私が、未来に飛ぶ歌を歌っても。


「 もう、長くないです。 」

目の前が真っ暗になった気がした。

なんて小説では言うのかも知れない。

だけど、実際そんなことなくて、ただ、クエスチョンマークが浮かぶだけだった。

私は、理解が出来なかった。


余命半年。

なんて言われても、見える景色はやっぱり同じで、

感じる風も、光も、全部全部変わらなくて。

実感が湧かなかった。

中学三年生、受験が待ち構える年齢。

あんなに焦っていたのに、急に焦らせていたものが消えて、なんとも言えない気持ちになった。




死んでしまえば、大空に飛んでいけるのかな

なんて、無理に決まっているけれど、夢を見なければやって行けなかった。



#大空 #3

12/20/2024, 12:04:44 PM

リン、と一つ音がなり、貴方が入ってくる。
「 いらっしゃい、ませ … 」
声が裏返り、詰まってしまう。
「 どーも。 」
そんなことはお構い無しに貴方は私に話しかける。
「 オススメ一つください 」
なんだか言葉輝いているような響き。
「 はい … っ 」
私は元気よく返事をした。

今日もまた、長くて短い夜が始まる。



# ベルの音 #2

12/19/2024, 12:08:53 PM

大きな御屋敷。広大な敷地。
そんな家には、1人の少女がいた。
「 私が決めたことだもん、最後までやり通さなきゃ。 」
頑固で淋しがりな少女が。

「 更紗ちゃんの家、おっきいね 」
「 いいな更紗ちゃんの家。おっきいもん 」
見た目が綺麗で、何より大きい私の家は注目の的だった。
「 えへへ、大きいでしょ 」
自慢げに、得意げに、私は何時も笑っていた。

その笑顔が途絶えたのは最近であった。

「 お父さん … っ ( 涙 」

父が死んだ。母がおかしくなり始めた。
お金は沢山あったし、更に増えた。
お母さんは辛いのをお酒を飲んで忘れてた。

あるとき、お酒を飲んだお母さんは言った。

「 もう疲れた … 」

心に封じこめていたホンネが零れた。
そして

「 更紗、ごめんね。だいすき。 」

母は自殺した。
高校生で、義務教育が終わっていたこともあって、親戚から自分の家で暮らすことを許してもらって今に至る。
今まで近くにいてくれた、使用人として仕えてくれていた人達との契約は解除した。
母と父のお金を使いたくなかったから。
その決断を下したのは私だ。
自分の発言に責任を持つために、私は今日も大きすぎる屋敷で1日を終える。
さみしくてさみしくて仕方がないけれど、もう仕方がないことだと割り切って。






#さみしさ #初 #1