「 この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ 」
私が、この歌を歌ってもいいのだろうか。
未来もない私が、未来に飛ぶ歌を歌っても。
「 もう、長くないです。 」
目の前が真っ暗になった気がした。
なんて小説では言うのかも知れない。
だけど、実際そんなことなくて、ただ、クエスチョンマークが浮かぶだけだった。
私は、理解が出来なかった。
余命半年。
なんて言われても、見える景色はやっぱり同じで、
感じる風も、光も、全部全部変わらなくて。
実感が湧かなかった。
中学三年生、受験が待ち構える年齢。
あんなに焦っていたのに、急に焦らせていたものが消えて、なんとも言えない気持ちになった。
死んでしまえば、大空に飛んでいけるのかな
なんて、無理に決まっているけれど、夢を見なければやって行けなかった。
#大空 #3
リン、と一つ音がなり、貴方が入ってくる。
「 いらっしゃい、ませ … 」
声が裏返り、詰まってしまう。
「 どーも。 」
そんなことはお構い無しに貴方は私に話しかける。
「 オススメ一つください 」
なんだか言葉輝いているような響き。
「 はい … っ 」
私は元気よく返事をした。
今日もまた、長くて短い夜が始まる。
# ベルの音 #2
大きな御屋敷。広大な敷地。
そんな家には、1人の少女がいた。
「 私が決めたことだもん、最後までやり通さなきゃ。 」
頑固で淋しがりな少女が。
「 更紗ちゃんの家、おっきいね 」
「 いいな更紗ちゃんの家。おっきいもん 」
見た目が綺麗で、何より大きい私の家は注目の的だった。
「 えへへ、大きいでしょ 」
自慢げに、得意げに、私は何時も笑っていた。
その笑顔が途絶えたのは最近であった。
「 お父さん … っ ( 涙 」
父が死んだ。母がおかしくなり始めた。
お金は沢山あったし、更に増えた。
お母さんは辛いのをお酒を飲んで忘れてた。
あるとき、お酒を飲んだお母さんは言った。
「 もう疲れた … 」
心に封じこめていたホンネが零れた。
そして
「 更紗、ごめんね。だいすき。 」
母は自殺した。
高校生で、義務教育が終わっていたこともあって、親戚から自分の家で暮らすことを許してもらって今に至る。
今まで近くにいてくれた、使用人として仕えてくれていた人達との契約は解除した。
母と父のお金を使いたくなかったから。
その決断を下したのは私だ。
自分の発言に責任を持つために、私は今日も大きすぎる屋敷で1日を終える。
さみしくてさみしくて仕方がないけれど、もう仕方がないことだと割り切って。
#さみしさ #初 #1