ー禁物ー(楽園)
「お母様、あれはどうしてここに居るのです?」
「雇ってるの。あなたと年も近いでしょう。友達として接しなさい」
「友達は信用ならないと、お父様から教わりました」
「ふふ。対等な関係はそうかも知れないわね。だけど、あれはお金で雇っているのよ。安心して大丈夫でしょう」
あの頃、中性的な体つきをしたそれは、綺麗な顔をしていた。
「名前は?」
「マリと申します」
髪も、結んでいたのに、背中の真ん中辺りまで落ちていたから、結構長かったと思う。
「どうしてここに来たの?」
「家が、苦しくて」
「好きな食べ物ってある?」
「好き嫌いはあまり」
綺麗な声だと思った。
よく響く、中性的な声。
「お父様には会った?」
「はい。お会いしました」
「どうだった?」
「お優しい方だと思いました」
「……」
「坊ちゃま。旦那様がお呼びです」
「え?分かるの?」
「はい」
長いまつ毛に隠れた瞳は、どこか遠くを見つめている。
いつでもすまし顔で、僕の後ろに立ってついてきた。
「旦那様!お辞めくださ」
「黙れ!お前は重罪人だ!息子をたぶらかす悪魔め!」
「お父様。どうかもう一度、考え直してみてください」
「えぇい!煩わしい!今のお前は信用できんのだ!」
「でも!」
「「でも」では無い!いつからか知らんが、いつの間にか子供を作って!あちらとの結婚もこれでパァだ!」
マリはしばらくして、処刑された。
お腹の子と共に。
お腹の子は自分の子ではない。
それを証明するものはどこにも無かった。
誰も疑わなかったのだ。
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私は駄目な人間なんです。どうして忘れてしまうのでしょうか
ータネー(風に乗って)
風に乗って会いに行くわ。
色んなところで、
色んなものを見たの。
教えてあげる。
綺麗なもの。
あなたの家にポツンと落ちて、あなたは私を拾うのよ。
あなたの手で、育ててもらえたらどれだけ…。
私はその瞬間に、ピンクの花を咲かせるでしょうね。
そしたら、
あなたは優しく私を撫でるわ。
「可愛いね」って言いながら、
どこもかしこもその手で掴んで。
私を引っこ抜いちゃうでしょうね。
可哀想な私は、水の中に浮かぶの。
あなたの用意した、私じゃない別の子が描かれた花瓶にね。
そしてあなたは結婚するの。
なんでもない顔で、綺麗な人と。
そのうち子供も生まれるわ。
だから私は復讐をするの。
汚れてしまったあなたたちに。
タネを落として、
机の上でそれが芽吹く。
家具に根っこが絡みついて、徐々に家の中を侵略していくの。
業者を呼んだって無駄。
私は新種なの。
気高くて美しくて…
とっても、繁殖能力が強い。
あなたは後悔するでしょうね。
私を育ててしまったこと。
それで母子と一緒に別の場所へ引っ越すわ。
私と子供たちを残して。
私たちは茎を切られて、研究所に運ばれるでしょうね。
それ以外は家と共に燃やしてしまうの。
でも、運ばれている最中。
子供たちがタネを落とし始める。
そこから根付いて取り返しがつかなくなって…。
あぁ、もうすぐ彼の玄関だわ。
すぐに拾ってもらわなきゃ。
きゃっ!
危ないじゃない!
踏んづけられるところだった…。
さぁ!
お願い拾って?
ぐしゃ
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おやすみなさい。21:10
ーもうー(刹那)
彼女の体を、何かが切り裂いた。
飛び散る肉片。
ビチャビチャと嫌な音をたてる。
「ぁ」
どれがどこの皮膚だったのか判別できないほど、
細かく砕かれた彼女の骨だけは、まだ残っていた。
骨にこびりついた欠片。
僕が握っていた彼女の手だけが、傷ひとつなく手の中に収まっていた。
刹那。
体に鋭く、痛みが走った。
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おやすみなさい。20:30
ーどーでもー(生きる意味)
「生きる意味ってなんだと思う?」
突然の問い。
「え?」
「だから、生きる意味ってなんだと思う?」
「…幸せとか?」
「幸せになりたいの?」
「…そりゃそうでしょ。幸せがいいよ」
「自分の幸せのために、みんなが犠牲になるとしても?」
「壮大過ぎない?流石にそこまでして幸せになりたくはないけど」
「なんで?」
「道徳的にダメでしょ」
「じゃあその「道徳的」が無かったら?」
「…どうだろ。てかなんの質問?」
「無人島になにもってく?的なやつ」
「あー。そっか。なにもってく?」
「船」
「ふね??…いや待ってその船燃料切れだわ」
「木の船は?」
「凶暴なサメがいるから食われてサメEND」
「じゃあ、絶対壊れない船」
「重くて沈んだ」
「…あっ。燃料MAXの凄い硬くてバランス完璧な大型船」
「ふーん。……サメに食われてサメEND」
「ずるっ!めっちゃ硬い船だよ!」
「実は未来のサメだったからなんでも壊せる」
「未来ヤバいねそれ」
「うん。だから生きる意味とか考えてる場合じゃない」
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おやすみなさい。19:55
ーあの子は善ー(善悪)
善悪とは何だろう。
僕を否定するやつらは悪で、僕はきっと善だろう。
僕が好きな唐揚げは善で、トマトは悪。
あの子は善で、あの男は悪。
あの子が善ってことは、あの子が好きなあの男は善?
……あの子が善なら、あの子の嫌いな僕は悪?
ううん違うよ。
僕を嫌いな奴が悪。
僕が好きな人と、僕を好きな人は善。
あれ?
…僕は悪?
でも僕は善で、あの子も善で、あの男は悪。
でも僕は悪で、あの子は善で、あの男も善。
でも僕は善で、あの子は………。
あの子はなんだ?
あの子が善だと変になっちゃうな…。
でも、あの子は善だろ?
基準はなんだ?
僕はなんだ?
誰が善だ?
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お題だけのものが9枠あるので、とりあえずそれ以上溜めないように頑張ります。
多分今日からまた七時〜九時までのどこかに(金、土を除く)書く感じになります。
溜まった9枠は休日のどこかで気が向いた時に書こうと思うので、
あなたも気が向いた時に読んでくれたら嬉しいです。