『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私には双子の兄が居ましたが、この兄は、大層愚かな兄でした。
学生の頃から飲酒と喫煙を繰り返し、教師から目を付けられる。近所からの評判も悪く、姿形が瓜二つの私も、外を歩けば白い目で見られる日々でした。
兄のせいで私はかなりの迷惑を被っていた訳ですが、私は兄のことを愚かだとは思えど、嫌いだとは思わないのです。
思い返せば、兄は幼少期から私に優しかった。
私が母に叱られ、押し入れで声を押し殺して泣いていた時にも、兄はそっと近所の駄菓子で売られている駄菓子を、押し入れのふすまの隙間から差し込んでくれました。
きっと兄のことなので、その駄菓子は買った物ではなく、盗んだ物だろうと子供ながらに察していました。
当時は私達は、小遣いをほとんど持ち合わせていなかったからです。
母は普段から厳しい人でしたが、特に、金に関してはうるさかったのです。
その厳しさは、兄のせいで増していましたから、兄が弟のために僅かな自分の金を使って駄菓子を買うということは、考えにくいことでした。
しばらくして、私達は二人きりになりました。母が死んだからです。父は、随分昔に家を出ていってしまっていました。
母というストッパーが消えたことで、兄の素行不良は日に日に酷くなっていました。誰かに手を上げただとか、カツアゲをしているだとか、女を孕ませただとか、そういう噂が私の耳にも届きました。
その結果、私から友と呼べる人間が居なくなったことは、言うまでもないでしょう。
それでも、依然として、兄は私に対して噂通りの鬼畜ぶりは見せませんでした。
ふと、私は幼い頃に訪れた海のことを思い出しました。その砂浜に埋まっていた、小さな貝のことです。二枚の貝殻で、自分の身を守る、小さな小さな貝のことです。
私に兄以外の拠り所がなくなったように、兄にとっての最後の拠り所も、私だったのでしょう。
唯一の家族、唯一の肉親。
元は一つの肉塊だった私達は、あの貝のように、二枚重なって空虚な中身を守っているのでしょう。
『貝殻』
ざく、ざく、ざく
まだ日が昇ってきていない、あたり一面が薄暗い、それでいて少し明るい
夜明け前のきれいな透き通った海
散歩、と称して歩いているそれは、あまりにも時間が違いすぎるのかもしれない
そうやって20分ほど歩いていると
ふと足に、コツ、と固いものがあたった
なんだろう、と思ってしゃがんでみる
と、あるものを拾い上げる
手探りで見つけたそれはすこし砂がついていた
ちいさくてまるっこくてきれいなもの
それを見つけたとき、わくわくした
これ、どうしようかな?飾るもよし、誰かにあげるのも、アクセサリーにするもよし…どんどん楽しいことが思い浮かぶ
そうして30分くらいいた海辺は、もう日が昇ってきていて
帰るころには周りも海も足取りも、あかるくなっていた
貝殻..。.:+・゚
海に行ったらピンクで綺麗な貝殻を見つけました😆
海はとても輝いていてそこに綺麗な貝殻と言う風景に心が癒されました!
哀しい時、ふらりと海に来る
どこまでも青く青く続く海は
私の哀しさなんてちっぽけだと
そう思わせてくれる
波の音が囁くように聴こえてくる
それでいいんだよと優しく囁く
砂浜に落ちたひとつの貝殻を手に取る
この貝殻をだれに渡そうか
ねえ君にだけ渡そうか
ゆっくり受け取ってほしい
傷跡も哀しみも2人を繋ぐ糸だから
『君に贈る貝殻』
桜色の貝殻を君に
白い貝殻を僕が
シーグラスは2人で
探し集めよう。
海は綺麗で冷たくて
時に僕らに牙を剥くけど
どこまでも続く
海は自由を感じられて
素敵だと思う。
砂浜もキラキラしてて
どこを切り取っても
ステージの花道になりそう
そう感じた。
来年も一緒に同じことをしよう
─────『貝殻』
貝殻
「桜貝の貝殻を100個集めると恋が叶うって子供の頃聞いたな」
「結構ハードル高いな、桜貝ってどれだ?」
夕方の砂浜で他愛のないことを話しながら歩く。しゃがみ込んでいた彼が、これか?と言いながら拾い上げた、思ったより濃いめのピンクの小さな貝殻。
「これは大変だな」
そう言って何度も頷く。
「そんなに叶えたい恋がお有りで?」
そう問いかけると慌てて貝殻を放り出した。
「いや、そんなもの無いな。今の恋が大事、うん」
そう返してくるので、思わず吹き出してしまった。
5月の大洗海岸
父:潮干狩りやるぞー!
娘:楽しみ!
母:2人とも頑張ってね
砂浜を掘る
娘:また貝殻だ
父:掘っても掘っても貝殻しか出てこないね
近場の海を足で掘る
父:全然いないね
娘:ほんとにいるのかな
少し深いところで掘る
父:ん。何かいるぞ。でかいのとれた!
今日の収穫は、貝殻と大きいはまぐり1匹。
環境の変化(人的なもの?)を感じる
ここ数年の5月の大洗海岸。
貝殻
友だちと喧嘩したとき、何か上手くいかなかったとき、学校からまっすぐには帰らず、近所の小さな神社によく立ち寄った。
誰もいない小さな神社。拝殿の扉が開いているのは、お祭りの時にしか見たことはない。
階段に座ってぼうっとしたり、サッカーボールを蹴ったり。
何かをしたかったり、何もしたくなかったり。そんな気持ちで30分ぐらい過ごした。
そんな子どもの頃の記憶。
大人になってグッピーを飼い始めた。熱帯魚初心者にちょうどいい魚。開いた尾ヒレがきれい。仕事で疲れた日も、小さな体で、大きな尾をゆらゆらして泳いでいる姿を見ると、とても癒される。
水槽の中には、水草の他に貝殻も入れている。彼らの隠れ家だ。
3匹いるが、1匹、あまり姿を見せてくれないやつがいる。しょっちゅう貝殻に隠れている。
他の2匹と上手くいってないのかな。それとも僕が怖いのか。
まるであの頃、ひとりで神社にいた自分みたいだ。
今度、もうひとつ貝殻を入れてあげよう。いまの貝殻とは距離をとって。
もし貝殻の間を行き来してくれたら、元気に泳ぐ姿を見せてくれるかもしれない。
怖くないよって、楽しいこともあるよって、知ってくれたらいい。
その小さな欠片は
かつての海の記憶
貝殻は海を忘れない
海も貝殻をそっと撫でていく
波が引いて
貝殻は海を待つ
きみがくれた海。
それが、この貝殻だ。
耳に当てると波の音がするよ。
きみの言ったとおり、耳に当てると音がする。それが、海の波音なのか確かめるすべはない。
海には行ったことがない。この街から海は遠く、そう簡単には行けないのだ。この街には自分のやるべきこともある。
君と海に行きたい。
この貝殻をくれたときのきみの言葉。ずっと忘れていない。
机の上に、いつも見えるところに置いている。そして、行けない言い訳をひとつずつ消していく。
きみと海に行きたい。
同じ気持ちでいる。自分の本音を貝殻にだけ囁く。
貝殻
ふと海に行こうと思った。
ついたら、それはきれいで誰もいない
周りには貝殻が落ちている。
こんなにいろいろな形、色の貝殻があるなんて
知らなかった。
砂浜で見つけた貝殻。
あなたとの思い出を閉じ込める貝殻。
閉じ込めたまま海の底へ沈ませた。
あなたも、貝殻ももうなくなった。
なのに私はあなたを忘れることが出来ない。
ああ、私が貝殻に籠り海の底へ沈みたかった。
『貝殻』
海がない県に住んでいると、あまりご縁のない貝殻という存在。
だからこそ旅行で海を訪れた時に、浜辺で貝殻を見つけると、じっと見入ってしまう。
貝殻を集めて早し最上川。
「五月雨をでしょ」
[五月雨か、じゃあ、貝殻を集めて遅し…?]
「信濃川?」
[信濃川!!]
って、どーゆこと?
君が面白そうに笑うから、うちも面白くなってきて、
貝殻を集めて遅し信濃川
って話てたら先生が
何だそれ、五月雨を集めて早し最上川だろう?
[先生が間違ってるんよ、]
「そーですね、先生が間違ってます!」
何だ、俺が違うのか、でもちゃんと覚えとけよ
『はーい』
貝殻を集めて遅し信濃川、
❦
飼っていた猫はとても人見知りだった
久しぶりに帰省すると籠に引きこもり
そっと覗くとまん丸の目が二つ
たまに尻尾や足がはみ出ていて
砂抜き中の貝みたいだった
籠にフタがついていたから
いい出汁が出るなんて冗談だよ
籠から出ておいでって言ったけど
殻だけ残して行ってしまうなんて
#貝殻
海を聴く
硬い外殻に耳を合わせて
波を聴く
空っぽの虚に雑音を響かせて
声を聴いた
あの日遠く泳いで行った
小さく消えた君の髪を
‹貝殻›
あ 信じてるの?
い うん
あ なら仕方ないけど
い どこかにいると
あ 探そうか?
い ううん
あ 強いんだね
い そうでもないよ
『貝殻』
割れた貝殻の破片で
指の腹が切れた
裂け目から覗く赤い血が
滴り落ちた海の上
私の命は廻ってる
貝殻ひとつ おかあさんの
貝殻ふたつ おとうさんの
貝殻みっつ わたしの
貝殻よっつ みーちゃんの
貝殻いつつ あいせんせいの
貝殻むっつ えんちょうせんせいの
まだまだいっぱいある
おともだちみんなにくばれるかしら
せかいじゅうのひとみんなにわたせるかも
せかいじゅうのひとみんなとおともだちになれるかな
「貝殻」
砂にまみれても波がくるたび洗われる!
今日も貝殻のようにきれいになろう