『誰にも言えない秘密』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
人間とは嘘をつく生き物である。
嘘をついたことのない人間など居ない。
嘘をつくこととは、自分を守ることであり、人を守ることである。
もちろん、僕もその嘘つきの1人である。
誰にだって、誰にも言えない秘密があるだろう。
僕にだってあるのだ。
この秘密は墓場まで持っていくと決めた。
ただ、ずっと心の中だけに留めておくというのは、なかなかにしんどいものなのだ。
だから、僕は、この子達に秘密を託した。
今日も今日とて、可愛い我が子を大事に持ち、病室の前に立つ。
ひとつ、深呼吸をし、扉を3回ノックしてから、扉を開ける。
病室の主は、ベットの上からこちらを見た。
そして、僕の顔をじっくりと見ると、微笑んだ。
「こんにちは。初めまして。」
僕もそんな彼に微笑み返した。
「初めまして。」
1回目。
僕は、後ろ手で扉を閉め、病室に入った。
彼は少し戸惑った様子で、僕の顔色を伺う。
初対面の奴が断りもなしに自分のテリトリーに入ってきたのだ。
僕だったらキレる。
ただ、彼は優しい人だった。
「えっと、実は僕、記憶が1週間しか持たないらしくて...今日がちょうど記憶を失ってから1日目というか、何もかも分からない日なんですけど」
あなたは僕のお知り合いですか?
彼は少しバツが悪そうにこちらに聞いてきた。
そんな顔をする必要なんてないのに。
僕はそれに肯定を示した。
彼はそれだけで更に顔色を悪くし、「すみません」と謝った。
「僕を心配して、お見舞いまでしてくれる人を忘れてしまうなんて...ほんとに、なんでこんな...」
泣きこそしてない無かったが、泣きそうな顔ではあった。
僕は努めて冷静に彼をなだめた。
「覚えてないのも無理はありません。実は、知り合いといっても、僕はただの店員なんです。」
花屋の。
と僕は付け加える。
彼はこちらをぽかんと見ている。
そりゃそうだろう。
なぜ、知り合いというか、顔見知り程度の奴が、見舞いに来てるのか。
もし、僕が同じような状況になったら普通に恐怖である。
ここで不審者扱いをされて、追い出されては堪らないので、僕は続けて話し出す。
「あなたの恋人が僕に依頼してくれまして。1週間ほど出張があって、あなたのお見舞いに行けないので、1週間だけ、あなたに花を届けて欲しいと。」
そう言って、僕は手元にある花を彼に見せた。
これで2回目。
「来週の今日、あなたの記憶がまた無くなった際には、恋人の方がきちんと貴方に会いに来るそうです。」
彼は心底驚いたようだった。
「僕、に...恋人がいるんですか...?」
しかも、花を届けてくれる...?
彼は自分で言っておいて、自分の言葉を理解出来てないようだった。
僕が「はい。」と返事をすると、じわじわと顔を赤くし、キラキラと目を輝かせた。
「僕の恋人、僕の理想そのまんまだな!!!!」
かなり喜んでいるようである。
まぁいつものことだが。
「その方は、あなたの悪口をいつも言っていましたが、決まって最後にはあなたに渡す花を真剣に選ぶんです。」
僕の話を、彼は真剣に、とても嬉しそうに聞いていた。
見たことも会ったこともない、今の彼からしてみれば、赤の他人である恋人に、よくもまぁそんな熱量を向けられるものだ。
単純に尊敬する。
「『あいつは、いつもぽけ〜っとしてる』だとか、『あいつほどのバカはいねぇ』とか、『顔がいいだけで他はクソ。』だとか色々おっしゃってましたが」
かなりの悪口である。
というか、他人が聞いたら、ほんとに恋人かを疑問に思うだろう。
それでも、そんな恋人を持つ彼は、キラキラとした瞳を更にキラキラとさせ、周りに花が飛んでいそうなほど幸せそうだった。
悪趣味なやつだな、と思いながらも言葉を続ける。
「『ぜってぇあいつに俺の存在刻みつけてやる。』と最後にいつも宣言して帰るんです。」
3回目。
僕は、彼の恋人について語る上で、とんでもない爆弾を落としてやった。
彼の恋人の一人称が、"俺"である、ということだ。
これについては、嘘でもなんでもなく事実である。
先に言っておくが、俺っ子女の子な訳では無い。
だが、彼は聞こえてなかったのか気にすることでもなかったのか、先程と変わらず幸せオーラを出し続けている。
彼は馬鹿で優しいやつなので、前者も後者も有り得るのが怖い。
僕はひっそりと後者であれば良いなと思っていた。
「口が少し悪くて、一人称が俺!!!高圧的でプライドが高いけれども、僕のことは愛している!!すごい!!!!僕の理想すぎてすごい!!!!!よくやった昔の僕!!!!!!!!」
後者であるどころか、もはやヤバいやつである。
強すぎる熱意に僕は若干引いていた。
ここが個室じゃなかったら大問題になってたな。
よかった、ここが個室で。
それはともかく、普通に怖いので、これはさっさと帰るに限るだろう。
僕は営業スマイルを崩さないようにしながら、窓際の花瓶に近づいた。
その間も彼は、最初のあの態度はどうしたと思うほどの興奮具合で自分の恋人に想いを馳せている。
それを尻目に、僕は花瓶の前に立ち、今日持ってきた花だけを入れるために、元々入っていた花を取り出そうとした。それらの花達は、枯れている様子がなく、元気に咲いていたが、今日はこの花だけを入れたいのだ。僕が彼らに手を伸ばした時、
「...え?」
僕の動きが止まった。
おかしい。
足りない。
花の本数が足りない。
僕はいつも、11本ちょうどの花を持ってくる。
持ってくる種類は様々だが、花の本数を変えたことはない。
今日以外は。
今日だけは花を1本しか持ってきていないが、それ以外は必ず11本持ってきていた。
枯れたから先に捨てた?
だが、残っている花はこんなにも元気に咲いているし、何より、いつも入荷しても間もない新しい花を持ってきていた。
1週間は必ず持つように、花瓶の水も毎日取り替えている。
1週間以内に枯れるはずがない。
ならばなぜ。
「探し物はこれですか?」
さっきまでの興奮状態はどうしたのか、病室に入る瞬間よりも少し柔らかな態度で、彼は僕に微笑んだ。
彼の手には栞のようなものがあった。
そしてその栞には、濃いピンク色の花が挟まっていた。
押し花だ。
だが、なんだが不格好で、見た目としては悪い。
恐らく、何本かを無理矢理使ったものなのだろう。
なんだか花びらがごちゃごちゃと固まっていて、綺麗とは言い難い。
だが、その花は昨日まで、この花瓶にあった花だった。
「...押し花ですか。いいですね。あなたの恋人も、プレゼントした花を大切に思ってくれているようで、きっと喜びますよ。」
4回目。
じわりと変な汗が出る。
なんで、よりにもよって今日なのだ。
自分の運のなさを呪う。
「これ、4本の花で作ったんです。1本でやった方が、綺麗に作れるみたいなんですけど、どうしても4本が良くて。」
彼は微笑みを崩さずに続ける。
「知ってますか?花言葉って花の本数でも変わるらしいんです。詳しくは知らないんですけど...昨日急に思い出して。それで、どうしても4本で押し花を作りたくなったんです。」
でも、花屋の店員さんなら知ってるか。
彼は、少し冷たいような、そんな声色で僕にこの言葉を吐いた。
もちろん、花屋の店員であるからには知っている。
各々の花の花言葉とは別に、花の本数で花言葉が決まるのだ。
だから、プロポーズではバラの本数を気にする人が多い。
バラの花言葉とは別に、伝えたい言葉をそうやって表すのだ。
「...いいえ。初めて知りました。僕は店員と言っても、ただのバイトなので。」
5回目。
これは僕を、彼を守るための嘘。
この嘘は何がなんでも通さなければならない。
この嘘を墓場まで持っていくと決めたのだ。
彼を襲ったこの不幸は、彼にとってのチャンスなのだ。
何としてでもあの事実は隠し通さねば。
「そうなんですね...でも、おかしいな。」
先程までベットの上にいた彼は、いつの間にか、病室の扉の前に立っていた。
彼は冷たい声色のまま、こちらに微笑んだ。
「これを教えてくれたのは君なのに。」
心臓が爆発したかと思った。
汗が滝のように流れた。
頭が真っ白になった。
そうだ、彼は言った。
「昨日急に思い出して。」と。
彼は今日、昨日のことを思い出せないはずだ。
なぜなら彼は、たったの1週間しか、覚えていられないから。
彼の思い出は、1週間ごとで、リセットされてしまうから。
可能性はひとつ。
彼は思い出した。
彼は"俺"を思い出してしまった。
その答えに至った時にはもう遅かった。
彼に出口を塞がれていた。
もう逃げられない。
神様は、なんて残酷なのだろうか。
今日で最後にしようと思ったのに。
彼を幸せにしようと思ったのに。
震えを抑えるように拳を作る。
手に持っていた黒い花の茎が少し曲がってしまった。
「言ってたよね。4本の花束の花言葉は、『一生愛し続ける』だって。だから、僕は、栞を作る時に、どうしても4本の花で作りたかったんだ。」
彼はこちらをじっと見つめていた。
蛇に睨まれたカエルのように、俺は動けなかった。
「今日の朝、いきなり今までの記憶が戻って驚いたよ。...ただ、記憶を失うようになってからの記憶は戻らなかったんだ。」
彼は続けた。
「何かないかと思って、探してみたら、枕の下に日記があってさ。」
そう言って、彼は栞を持っていない方の手にある日記らしきものを見せてきた。
油断した。
棚や引き出しはいつも確認していたが、枕の下とは。
「そしたらその日記には、『僕の恋人に会いたい』ってことと、『花屋の店員さんの持ってきてくれた花』についてしか書かれてなかったんだ。」
まさか、僕の恋人がその花屋の店員さんだとは思わなかったようだね。
口の中が砂漠のようだった。
墓場まで持っていくはずだった嘘が暴かれていく。
罪を告げられているような状況にいる俺は、まるで処刑台にいる囚人のような気分だった。
今日だけで、5回も嘘をついた。
今までの彼についた嘘を合わせたら、信じられない程の数になるだろう。
こんなにも頑張ったのに、こんなところでバレてしまうのか。
最後の最後で欲をかいてしまった、俺への罰なのだろうか。
「僕は、全部の花言葉を調べてたみたいだね。」
あなたの幸せを願っています。
私はあなたと出会えて幸せです。
今までずっとありがとう。
あなたを忘れない。
そして、11本の花言葉は『最愛』
「色々あったけど、この栞の花言葉は」
変わらぬ心、途絶えぬ記憶。
「どうやら、プロポーズにも使われるようだ。」
彼は愛おしそうにその栞の花を見た。
誰にも言えない秘密
お題「誰にも言えない秘密」
生きていればそんな秘密
ひとつやふたつあるもの
言えないから秘密
心の奥に仕舞い込んで
幾重にも鍵を掛け
誰も皆
知らん顔して生きている
【誰にも言えない秘密】
登場人物一覧
速世夏威(はやせかい)、西埜雫翠(にしのなつみ)
囃田賢司(はやしだけんじ)、藍原洸(あいばらひかり)
私こと藍原洸には人に言えない隠し事がある。
仲良くなった子にも言えない大切な秘密。
「この家と掟はバラしてはならない。もしバレたらその時秘密を知った者は大切な人だろうと表社会から消えるかこの世から消えてしまうから。守れるね。洸?」
「はい、勿論です。お父様、お母様。」
毎朝起きて直ぐに両親とこのやり取りをする。
掟を忘れないように、油断しないように。
私の家…藍原家は外の噂では呪いの館と言われている。
人が住んでいる様子は無いのに、悲鳴や鳴き声、稀には怒声や談笑する声まで聞こえてくるらしい。家の人達はもう少し隠そうよ…
「なぁ!今日の放課後、噂の館に行ってみようぜ!」
声高々に告げるのはクラス一番のお調子者の速世くん
「えぇ?夕方は危ないし近付いちゃダメだから辞めよ?」
興味はあるものの、怒られる事だけは避けたい雫翠さん
「夏威はこうなったら止まんねぇしなぁ…雫翠さんにも無理にすすめねぇけど、洸さんはどうする?行く?」
速世くんの幼馴染で、クラスだけではなく私達のまとめ役もしてくれている囃田くんに誘われ
「…私も、気になるし行ってみたいかな…?」と遠慮がちに言えば嬉しそうに「楽しみだなぁ!」なんて笑っている速世くんと、その速世くんに「大好きな洸さん来てくれて良かったな夏威〜」とふざけ合っている二人を見ていると控え目に制服の裾を掴み引っ張る雫翠さんに目を向けて「雫翠さん、どうしたんですか?」と聞けば「洸ちゃんがあの場所に行くなら私も行きます!男二人と洸ちゃんを置いて置けない!」なんて言う雫翠さん。
(近くまでならまだしも、知っている奴が館まで来たら、慈悲も何も無いまま死ぬだけなのにな…私の友人である子供だから、話は聞いてもらえるだろうけど)
何とも言えぬまま家には「友人が遊び半分で行きますので、私が付き添うため、監視を願います。」と連絡を入れた。
___続きはまた後ほど制作致します。
誰にも言えない秘密
秘密なんてないから、近くに、ものすごくネガティブな子が居て、その子が時たまに死にたいって呟いてるから、そういう子に面と向かって言えないからここで言うね。
うん。我ながら本当に自分勝手だと思う。
面と向かって言って嫌われるのが怖いなんて、これほど情けないことは無いね。
まぁいいや。
本題からずれた、、ごめんね〜
死にたいって思った数は、君が挑戦しようと思った数だよ。
それに、日本人は優しいらしいからね〜
誰かのことを思ってるから死にたいって思うんだよ。
思っている本当に君は優しい。
優しい人、私大好きだから。自信もって生きて!
あと、本当に辛くなったら、寝る前にうん子って10回言ってから寝てみて。
てか、寝る前じゃなくてもいいんだけどね。
ちゃんと口に出して言うんだよ?
ほんっっとうに何もかもどうでも良くなるから。
あと……
クソ喰らえボケナスチンパンジーの踊りは今日も今日とて元気過ぎて目に目薬指しちゃったって、3回くらい唱えたらなんか頭面白いことなるよ。
私は、少しでもネガティブな感情になったら頭バカにしてるんだけど、やっぱり洗脳が1番早い。
でもね、ほんっとうのバカになったらダメだよ?
1度バカをしたら沼から出れなくなっちゃった。
誰にも言えない秘密
誰にでも秘密がある…子供の頃、その意味が理解出来ずにいた。せいぜい大人に怒られないように、悪戯を黙っているくらいだった。其れから、歳を重ねる度に、グッと心に溜め込んでは蓋をしてきた…本音で生きよう…そう云いながら、心の奥底に溜め込んでいる…ど言う秘密…
俺には、彼女に言えない秘密がある。
言ってしまったら、今までしてきたことが台無しになってしまう。
朝早くから、でかけて
家に呼べない日がある
まるで、浮気だ。
ある日、彼女に問い掛けられた。
けど、言えない
このプロホースを成功させるまでは
(フィクション) 誰にも言えない秘密
舞い落ちる花びら。笑顔。喝采に、祝福。
柔らかな日差しにも愛されて、二人は今日門出を迎える。
参列客に紛れるようにして、私は拍手を送っていた。
大切な友人。心から幸せそうな、満ち足りた表情。ふにゃりとはにかむようなその笑みに心をくすぐられて、胸の中に愛しさが満ちる。
おめでとう。小さくつぶやく。素敵な人に出会えて良かった。
その幸せが永遠のものであることを、心から祈る。
この気持ちに嘘はない。あなたが幸せなら、私だって嬉しい。
だから、そう。秘めておく。
あなたに伝えたくて、ついに伝えられなかった言葉があったことを。
あなたの幸せを願うから。
私は静かに、秘密を抱える。
【誰にも言えない秘密】
誰にも言えない秘密は此処には書けない。
なぜなら書いたら秘密じゃなくなるから。
私の心の中に留めておきます。
それで言ったら、コレはそうなのかもしれない。
ずっと、しまって置こうと思ったことで。
ーーーでも、きっといつかは、知られてしまうのだろうな。
”誰にも言えない秘密”なんて、自分が理解している時点で意味がないよ。
誰にも言えない秘密
【誰にも言えない秘密】
あなた以外にも好きな人がいます
カーテン越しに差し込む優しいオレンジ
肩を寄せて座るピアノ椅子
あなたが好きなパッヘルベルのカノンと
ぎこちないファーストキス。
大人のキスをあなたは知っている
それでも忘れないよって
恥ずかしそうに笑うあなたと
伝う涙を拭えないでいる僕
旅立ちの針は止まらない。
あの小さな教室は
2人だけの世界だったね。
誰も知らない秘密の話
2人だけの遠い日の甘い記憶。
-sweet memory -
オレンジジュース
朝日が差し込む部屋で
飛び起きて大あくび
なんか嫌な夢見てたけど
切り替えていこうぜ
今日はまだ始まったばかりだ
昨日のことまだ怒ってる?
それなら謝るよ悪かった
テレビの天気予報は晴れだ
そんな顔するなよ
良い一日にしようぜ
焼きたてのパンと
冷たいオレンジジュース
幸せと活力と希望は
その暖色の液体に溶けていくのさ
誰にも言えない秘密がある
誰にも言えないけど
君には知ってて欲しい
たとえ君が気まずくなろうと
ずっと愛してるよ
誰にも言えない秘密
リアルでは腐女子なことを黙ってる。
隠してはないけど、なんだか言いづらい。
BLの映画を勧めてきた子はきっと腐女子じゃない。
私の言う腐女子は本棚にずらっとBLが並んでる人のことをいう。
私のBL好きな歴は小学生から。
根が深い。
いいかい? この子は決して誰にも見せてはいけない。これはボクとの約束だからね。
日を追うごとに、記憶に残る声が大きくなる。
なのに僕は今日もこの子を連れてきてしまった。
鞄の中からひょっこりと顔を出す妖獣。黒い角に黒い毛並み。つぶらな瞳に毒を持つ鋭い牙。この世には存在しないはずの怪物。僕が育て上げると決めた子だ。
頭を撫でていると足音がして、慌てて鞄の中に押し込む。
「お前、こんなとこで何やってんだよ」
「一人で飯食ってんの?」
「うわ、さみし〜」
ゲラゲラと耳障りな笑い声がする。込み上げる悔しさに我を忘れそうになって、急いでその場を離れた。
校舎裏、鞄の中を覗く。僕が膝に顔を埋めていると、その子が小さく鳴く。最近は妙に勘が良くなってきて、僕の感情まで汲み取ってくれる。体も成長してきて、大きくなった羽で空を飛ぶ練習をしている。いつかは僕を乗せて大空を翔んでくれるそうだ。だからいいんだ。僕は寂しくなんてない。
でも、一度でいいからあいつらに見せてやりたいな。
どんな顔をするだろう。きっと、僕のすごさに恐れ慄くに違いない。あいつらの自尊心をビリビリに引き裂いてやれたら、どれだけ愉快だろうか。
こめかみが脈打っている。警鐘が鳴っている。
わかってる。僕とこの子が今のままであるためには、
誰にも言ってはいけない。言ってはいけないんだ。
お題《誰にも言えない秘密》
深海の底に沈めた歴史。
永遠に水底で、眠っていてほしい。
誰にも言えない秘密。
現実、あまり深刻な秘密は持ちたくない。
小説の中なら、気になる導入だけどね。
とはいえ、いちいち人に言いたくないことはあるかもね…
何もかも考えてること口に出すと、誰かに足元救われそうな気がするし。
また、これは秘密だ、ってあえて意識したことないけど、
人に言わずにずっと心に持ってる話はあるな。
辛いことや、楽しいこと、現実や想像やあれやこれや。
考えてみればこれらも、秘密って言えるのかな。
意識的にも無意識的にも、秘密がない人間なんていないよねきっと。
自分でも気づかない自分の秘密、っていうのもあるんじゃないかと思う。
そう考えるとなんとなく、ワクワクしてくるかも?
自分自身も知らない、自分のポテンシャルがあるというか。
秘密が人の個性も、際立たせるスパイスみたいになることもある気がする。
どうせ秘密があるなら、良い秘密、自分が楽しくなるような秘密を持っていきたいな。
誰にも言えない秘密を私にだけ話してほしかった
改札で別れたあと君はもう振り向かない
昔話をさせてほしい。
取り立ててなんの特技もない、強いて言うなら元気さが取り柄な男の子がいた。
そうだな、年は7歳くらい。
その子は1週間程前からよく家に遊びにくる猫に餌をやったり、こっそり家に上げたりして遊んでいたんだ。
両親が共働きで帰ってくるのが夜遅くなってからだったから、寂しいのもあったんだろう。「ミーコ」と言って可愛がっていた。前から何度かお母さんに猫が欲しい、猫がだめなら犬でもいいからとねだったことがあったが、動物の毛でアレルギーが出るからと却下された。
その日も玄関先でキッチンから取ってきた煮干しをやって、撫でたり、膝に乗せたりして遊んでいた。
この季節、空が明るいこともあってまだ夕方だと思っていたが、実際は夜に差し掛かった時間で、毎週楽しみにしているアニメを見逃しそうになっていることに気づき、慌ててミーコを下ろして中に入った。
アニメも見終わって、腹も減った頃「ただいまー」と玄関先からお母さんの声が聞こえて、今日担任の先生からもらった資料やら封筒やらを手にかけ寄ったら、
「たっくん、玄関の鍵、閉め忘れてたでしょ。戸も開いたままだったわよ」
「え……」
「知らない人入ってきちゃうから、ちゃんと鍵まで閉めないと」
焦ってたからな…。これからも気をつけないと、帰ってきた時にミーコと遊んでいるのを見られたらまずい……と思っていると、
「キャーーー!!」
2階からお母さんの悲鳴が聞こえた。
――ひょっとしたらまだ家の中にミーコが?
猫を家に上げたことがバレたら怒られてしまう!
ヒヤヒヤしながら階段をかけ上ると、廊下を進んですぐ右側にあるお父さんの部屋、仕事帰りのカバンを持ったままお母さんが一点をじっと見ている。お母さんの後ろからひょいと顔を覗かせると、良かった、ミーコはいなかった。
しかし、安心したのも束の間、あるはずのものがなかった。
その部屋の本棚にはたくさんの動物図鑑があって、お父さんがインコを飼っていたんだ。鮮やかな空色の羽と真っ白な頭につぶらな目がとっても可愛くて、僕も大好きだ。
その空色の羽から上が、ない。
「たっくん!動物…!家に入れたんじゃないの!?」
「違うよ!僕やってないもん!」
「じゃあ、なんでこんな事になってるの!」
それからお母さんとやったやってないで言い合いになり、僕が泣き出した頃お父さんが帰ってきたんだ。話した後しばらく何も喋らなかったお父さんが「後で一緒に埋めてやろうな」と、動物なんて入れてないと言い張った僕の頭を撫でた。
この事は結局言えずにいた。
死という概念がある事をぼんやり分かるくらいにはなっていたが、生き物は死んだら動かなくなるという事を初めて身近で目の当たりにし、嘘をついたこともあって、怖くなったんだ。
夏の盛り、小学生の頃の苦い思い出だ。
「誰にも言えない秘密」
誰にも言えない秘密は誰だってある
1つや2つだけじゃないコもいるのさ
私だって沢山秘密があるもん
みんな一緒だよ
誰だって言えないことはあるし
秘密は1つじゃなくて
いっぱいあるんだって
大丈夫だよ
秘密は誰だってあるんだから
言わなくたっていいんだよ
秘密だもん