『突然の君の訪問。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
春に引っ越してきたばかりの我が家。
今回はマンションの一階の部屋。
転勤族と言われる家で育ってきたから春の別れも出会いも慣れてる。
夏休み頃には仲良くなる友達もできる。
とは言え、毎日会う程でもないからわりと家にいる。
夕立が来そうだなぁと部屋でゴロゴロしていると、なんだか視線を感じて周りを見回すと、窓の外からこちらをじっと見つめる猫。
誰だお前って感じで見てくる辺り、前からこの部屋のベランダによく来ていたんだろう。
雨宿りに来たっぽい猫からの他所者を警戒する視線を感じつつ、またゴロリと寝転ぶ。
猫も、雨に濡れたくないのか先住者としての意地なのか、ベランダにゴロリと寝転がる。
しばらくして、雨がザーザー降り出した。
猫は前足で上手に顔を擦っている。
まぁ、あれだ。私は今日は一日中出かけないつもりでいたけど、今は雨を理由に出かけないわけで…
ゴロゴロし過ぎて寝入ってしまった私が目を覚ますと、雨は上がり、猫は居なくなっていた。
次の日の午後も、昨日と同じく夕立前に、あの猫がきた。しかも、これまた昨日と同じく、誰だお前って視線。
猫に何か献上したいところだけど、『野良猫に餌を与えないでください』って、エントランスに貼られている注意書きがあるから、ダメなんだろう。
猫からしたら、自分の縄張りに来た餌もくれない突然の来訪者な私に不信感しかないだろう。
突然の君の訪問が来た。
大好きな君が家来た
突然の事なので少し混和してしまった
それを見た君は笑っていた
笑う姿はとても綺麗で上品だった
自分には似合わないぐらい綺麗だったな。
と思わず口から溢れてしまった(言ってしまった)
「似合う似合わないじゃないよ?ふふ、気にしてるなんて可愛いな〜全くも〜!」
と言われてしまった…笑
可愛いのはどっちかと思ってしまったな
照れて上手く喋れなかったけどもちゃんと伝わったて喜んでしまった
君も一緒に喜んでくれたから。
今の時間が何時もよりとても素敵な時間に見えた
もうすぐ君が家に変える時間だ
「大丈夫かい?」
「大丈夫!…送ってってくれない〜?」
「ああ、勿論だよ」
そうお返事を返すと君はとてもはしゃいでた
それが愛おしかったな。
なんてね。
突然の君の訪問に、私はなんとも言い難い感情を体の中に留めることが出来なくて吐きそうになった。
「会いたくなかったのだけれど、あいにきてしまったよ。」
そう、以前と何ら変わらない美しい顔で笑う彼に、
「私だって会いたくは無かったよ。」と、笑顔で吐き出した。
「それで、何故今更会いに来たの。」
うーん、と悩む素振りをする彼の動きに合わせて、さらさらと流れる胡桃色の髪の毛をただただ眺めている私は肩まである髪の毛は前と変わってないんだね、なんてそんなことを思っていた。
「夢から醒める時がきたって感じかな。」
彼の目が私を見る。
瞳の色が、少し変わっているような気がした。やっぱり恋とか愛とかいう情はやはり厄介なフィルターがかかるみたい。
「夢から醒める時が、ねぇ。私は醒めたい訳では無いのだけれど。」
「ふぅん。それはどうして?」
「夢は私に幸せを見せてくれるから。」
彼の目をしっかりと見て伝える。美しさに恐れをなして、逸らした以前の私はもう居ない。きっと、この美しさは蜃気楼なのだから。
「そう。だけども、夢は夢だから何時かは醒める。」
「そうだね、でもそれは今じゃない。」
「全く君は。以前と変わらず頑固者だねぇ」
「そういう私が好きだった癖に」
そりゃあ、と頬を少し赤らめる少しだけ胸が高鳴る。
あぁ、もう。こんな情は捨てたいのに!
「ねぇ。今でも私の事好き?」
彼の冷たい手に私の手を重ねる。
びくっと体を跳ねさせた彼に合わせて髪の毛も動く。ふわふわ、さらさらと。私が猫だったら君の髪を猫じゃらし代わりにするなぁ、なんて思ってみたり。なんてね。
「そりゃあ、好きだよ。」
「じゃあ、」
「だけどね。だけど、それはもう終わりなんだ。」
言い聞かせるかのような終わり、という言葉に喉が閉まる。
息が上手く出来なくなるような感覚がする。嫌いだ、この感覚は。ずっと前にも感じたことがあるから。
「終わりなんだよ。僕達は。」
「…ふふ。あーあ、やっぱり君も私と同じくらい頑固者だなぁ。」
「でもそんな僕が好きだったでしょう?」
「うん。好き、だったよ。」
本当は、今でも好きだけれど、だけどもそれじゃあきっと私たちは前には進めない。2人で見つめて笑い合う。それが合図になる。私たちは昔の頃のように、おでこを合わせあった。
「おはよう。僕の愛した人。」
彼の美しい目がキラキラと光る。その中にきっと私の好きも入っているけれど、見えないふりをした。
「うん。おやすみ。私の愛した人。」
夢から醒めた私は、久しぶりに感じる体の重さに少しのだるさを感じながら目を開けた。
真っ白な空間に、私の生きている証を刻む音。
私を起こす為に来た彼はきっともう目を醒さない。二度と会うことも無いかもしれない。けれど、それでも、辛くても泣きたくても生きるから、何時か会えたその時は君の「おやすみ」を聞かせてね。
訪れたのは闇だ。
鬱だ。
この世の杞憂の全て。
憂に憂いを重ねた何かが、
私を蝕み始めた。
そう唐突に。
突然に。
私を苦しめるのは誰だ
もがき苦しみながら、今日も息をする
会いたかった
なんて言ってくれると思ったけど君は相変わらず飄々としているね
花と戯れる蝶のように
いっそう軽やかに 自由な君を
繋ぎとめるなんてたとえ神でもできやしない
透ける向こうの輝きは
白い君を照らすだろう
サヨナラさえない僕への
君からの訪れ(ギフト)
#突然の君の訪問
サカイは割とみんなとそれなりに仲が良かったけど、後半は特にイヌちゃんとタローくんと一緒にいることが多かったのかな。イヌちゃんも最初の頃は女の子にかまって欲しくて誰にでもちょっかい出してたけど、だんだん落ち着いてきたよね。私も最初気があるのかと思ったことあったけど、2つ年上だったし異性と言うよりはお兄ちゃん的な立ち位置に収まった。たくさん追いかけ回されたけど、おかげでイヌちゃんには言いたいこと隠さす言えるようになった。心配性で優しいのはイヌちゃんのいいところだって思ってるよ。
3人で記念になるからってLAマラソンに出たよね。
私は車で送り迎え担当。現地に着いてタローくんがランニングシューズを忘れたことに気づいたけど、何とアディダスのサンダルで強行参加。ゴールまで何時間も待ったけど、3人とも何とか無事にゴール出来て本当に良かった。3人とも頑張ったね。
ゴールした完走メダルをサカイはすぐに私の首にかけてくれて「これ、あげる」ってプレゼントしてくれた。私のために走ってくれたんだね。ありがとう。
今も大事に持ってるよ。何かを残したかったんだね。
ポストを開けると
昔々の友達から
手紙が届いていた
何年ぶり?
十年以上?
声を聞きたいね
逢いたいね
突然届いた手紙
君が訪れてくれたようで
心まで
昔々のあの頃に
戻っていく
懐かしさに
心も踊っているような
ふわふわな気持ちになったよ
いきなり来るのは困るよ、と言いながらも、
君の顔を見ると、それ以上何も言えなくなるんだ。
             「突然の君の訪問。」
カタルシス
突然の君の訪問に
救われたんだ
真っ白な空間が
何も見えなかった全てが
君によって
全て見えるようになったんだ。
ありがとう
#2#君の訪問に
「えへへ、ごめんね?来ちゃった」
「え、あ、ーっと、約束、してないよね?」
「うん。してないよ?」
 彼女をあげるべきか否か。悩んでいると彼女が笑顔で指を指す。
「それ、なぁに?」
 それは女物のパンプスです、なんて正直に答えたら答えたで怒られるの目に見えてんだよね。あー、もうめんどくせ。どうすっかな。
「やっぱり浮気してた…!」
「とりあえず中入って。ここで騒がれんのちょっと…」
「ふーん?入れてくれるんだ?」
 ガチャンと鍵をかけると、彼女が奥の部屋に向かって言う。
「こんばんはー!浮気相手さーん!本命の彼女でーす!」
 夜も遅いしご近所迷惑になるような事しないで欲しいんだけどなぁ。ズカズカ部屋に入っていくものの、浮気相手さんとやらは見つからない。クローゼットの中にもベッドの中にもお目当ては見つからない。バスルームのドアに伸びる手をそっと押さえる。
「ここなんだ?」
 睨むようにバスルームと俺を交互に見る。
「何で?浮気相手庇うの?」
「庇うとかじゃないけどさ、いいじゃん。俺が1番好きなのは優しくて可愛い君だよ?」
「…やだ。誤魔化されないもん!」
 私知ってるんだからね、随分前からこそこそ誰かと連絡取ってるの、デート断って誰かと会ってるの、スマホで何か見て嬉しそうなの浮気相手の写真なんでしょ、私全部知ってるんだから!そう言いながら彼女はドアを開けてしまった。
「え…?」
 そこに居たのは浮気相手なんかじゃない。アプリで知り合っただけの、本名も知らない女───だったもの。
「う、そ、なん、し、しんで、る…?」
 死にたてホヤホヤよ?今からバラそうって時に君が来ちゃうからさ?
「浮気じゃなかったでしょ?」
 みるみる青ざめていく君に口角が上がってゆく。知ってたって言ってたじゃん。まぁ?随分前からこそこそしてたというより、l君と会う前からずーっとこうしてたんだけどね?証拠は残しちゃいけないって分かってるけど、コレクションだから、やっぱり撮っときたいじゃんね?
「っ…」
 あぁ、叫ぶなこりゃ。反射的に彼女の首に手をかける。恐怖と絶望で何とも言えない顔をした彼女と見つめ合う。優しくて可愛い君が、いいよいいよって許してくれてたらこんな事しなかったんだけど。まぁこれはこれでありだけど。
「変に浮気とか疑わなきゃ良かったのにねぇ?」
 残念。アドバイスはもう聞こえていないらしい。
 満員電車の中、欠伸を噛み殺す。一晩にふたりはキツいなぁ。おかげで寝不足だ。
「あ」
 スマホから彼女の連絡先を消す。もう必要ないもんね。でもお陰さまでコレクションが増えた事だけは感謝してるよ。ありがとね。そうだ。次は優しくて可愛くて、ちょっとお馬鹿な子を彼女にしよう。
『突然の君の訪問。』
「突然の君の訪問。」
ピーン  ポーンとインターフォンが鳴った。
ガチャ
開けてみるとそこには君がいた。
君はいつも突然くるんだ。
社会人になりたての頃、私は真面目な社会人として
貴重な休みは真面目に休むことにしていた。
もうじきお昼だなとやっとこさ起きて、わちゃわちゃ始めた時
突然玄関のピンポンが鳴った。誰だろ?聞いてないが。
…宗教の勧誘だった。
だが、顔を見た瞬間に知ってる顔だったことに気づく。
小学校の同級生で5、6年生の時クラスが同じだった。
あきらかに相手からも動揺が伝わってきたが
社会人のマナーとして気づかない振りをした。
宗教の勧誘って、遮二無二勧めてくるもんだと思ったけれど
うわずった調子で早々に帰って行った。
勧誘に回る先って決められないのかな。
それ以来、訪問予定のないピンポンで
扉を開けることはなくなった。もう会うこともないだろう。
ガチャガチャ
君は突然、僕の部屋に来た。
合鍵は渡して合ったし、別に好きに使っていいよと言ってある。
でも、急に。
僕は、珍しく平日休みだったので、出迎えると。
「あ、いたの」
と、挙動不審な態度。
コーヒーを飲みながらでも、焦点は僕には合わない。
とはいえ、僕もやましい事が無いわけではないので、ドキドキなのだ。
余裕の態度をみせるべく、ベランダで一服する事を告げると、室内に痕跡が残って無いか反芻する。
多分、多分大丈夫だ。
一旦、落ち着いたので部屋に戻ると
「あ、まつげが・・・洗面所貸して」
と、彼女は部屋を出て行った。
僕はその間に部屋を見渡し、確認。
うん、大丈夫。
「よかった、あ、あと会社から電話だからゴメン行くね」
残りのコーヒーを一気飲みすると、彼女は出て行った。
ふーっ。
女の勘は鋭い。
俺が遊んでる時に不意にこういう事があるから恐ろしいんだ。
もう一度、タバコを吸おうとベランダに出る。
でも、
でも、あいつは何しに、家に来た?
本当に女の勘?
そういや、僕は出張で家を空けてる時があったな。
あいつ・・・
この家で・・・
お題 突然の君の訪問 
ピンポン ピンポーン ピンドン チリリリ ジー
インターホンの音って色々ある
それは君が訪れたことを知らせる音
ピンポーン あっ 誰か来た はーい!
突然の君の訪問。
 突然君が訪問してくるから何事かと思ったよ。君は基本、僕の家に来るときは連絡をいれるだろう? もしくは、学校帰りに僕が寄ってく? って、誘うかだ。いや、悪いとは思ってはいないさ。驚いてはいるけれどね。
 再々言うけど、君はのっぴきならない理由がない限り連絡もなしに突然来るなんてことをする人ではないと僕は思っている。
 君はきちんと確認をとる男だ。そして、きちんと自分の考えを伝えてくる男だ。
 本を返したいから、庭先の梅がみたいから、僕と話がしたいから。君はそう言ってからお前の家に行っていいか? と聞くだろう。今までそうやって確認をとってから家に来ていた。君の行動は確認という手順を最初にいれてくる。これは僕と君が出会って二年以上経った中で得た君に関するものだ。これは間違いないと僕は断言できる。
 では、どうして今君は何も連絡なしに突然家にやって来たか。そこがわからない。
 あ、いや、答え合わせはあとでいい。まず、僕の見解を聞いてほしいんだ。
 それで、考えられるものはそうだな……サプライズ、僕を驚かせたかったとか有り得そうだな。というか、今日は僕の誕生日だ。去年祝ってくれたから覚えているだろう。そして君のことだ。僕に最高のプレゼントを渡そうと考えてくれたんだろう? だって僕の誕生日だからね。
 それで、僕は意外なものとか面白いものが好きだ。君もそれは良く知っている。だから意外と思えるものをプレゼントにしようと思った。そして僕が意外だと面白がってくれそうなものはなんなのか考えた。そこででた案の一つがサプライズだ。
変なところで不器用で、真面目な君の事だ。月並みではあるが有効だと思ったんだろう。なんといってもサプライズをやりそうにない男がサプライズをしようっていうんだからな。意外だと思ってもらえるとか思ったんじゃないか? 実際、僕が君の家に来たとき、すごく驚いたんだ。僕が寄越した連絡に返事がつかない。おかしい。今どこにいるんだろう。今日は特に予定がないはずだと言っていたのに、かれこれ数時間もメッセージを見ることもしていないっぽいのはどういうことだろう。そう思いながら部屋の窓の外を眺めていたんだ。
 そこに、君が来た。君は、大急ぎで走って僕の家の玄関に飛び込んできた。弾丸って、こういうことを言うんだなと僕は感心したよ。それくらいまで早かったんだ君は。
 まあ、話しを戻して。
 そう。君は、これを見越して僕のもとへ来たんだよね。驚いてくれるはずだと君が連絡なしに来るのは珍しい何かあったのかとそう聞いてくるに違いないだろうと思っていたんだろう。うん、正解だ。僕はほんとうに驚いた。そして今はワクワクしている。
 いったいこれからどんなプレゼントを渡されるのかをね。ほら、後ろに隠し持っているんだろう? 僕に近づかないのも見つかったら楽しくないからだもんな。うんうん。きっとそうに違いない。
 さあショーゴくん。僕は君の奇行の理由を考えてみたぞ。答え合わせといこうじゃないか!
……何? 誕生日を覚えていなかった。そもそも今日は何日なのかわからなかった。おいおいどういう事だい? 僕の誕生日を忘れてしまうとか、君、らしくないよ。だったらどうして君はここにいるんだい?
 ふむ。何? ただ会いたくなった? それだけ? ……僕が好きな曲が流れていていてもたってもいられなくなって、ねえ。ほんとうにそれだけなのかい? ほら、もっとこう、あるだろう? そんな思春期特有の衝動とかそんなものではなくてさ、君が考えた思考みたいなものが。
……ほんとうにない? 嘘だろ。じゃあほんとうに理由なく会いたかったから訪問しただけ? え、っっと……君、そんな人じゃなかったよね? 熱でもあるんじゃない?
「突然の君の訪問。」
 いやいや、ちょっと待って欲しい
 急にくるなんてさ、失礼じゃない?
 え?なんか隠してるのかって?
 やましいことがあるのか?
 ないない、いや、ちょっと!
 勝手に入らないでよ!ちょっと!
中学生の頃は死を考えていざそこに立って見下ろすと怖かったです。
これで飛んだら私の人生はここまでで終了で、大好きな漫画を読むことも出来ないし話すこともできない。
そうやって考えて死ぬのをまだ辞めていました。
けどもう怖くはありません。
むしろ死ねたら好都合でしかない。
こんな事を書いてる自分が恥ずかしい
突然キミが訪問してきた。
「泊めてくれ」なんていきなり言われて、ボクは少し戸惑う。
だけど、ボクはキミのそのお願いに弱いから、結局泊めちゃうんだけどね。
ある日の昼下がり、君が突然訪ねてきた。
ベランダで鉢植えの剪定をしているとき、突然声をかけられた私は飛び上がりそうになった。
「ソラチャン。ゴハン!」
慌てて振り返ると、ベランダの手すりに君がいた。
空色の羽が可愛らしいセキセイインコだ。随分と人慣れしている上に喋っている。迷子鳥だろうか。
「…どうしたの?迷子になっちゃったの?」
言いながらそっと手を差し出すと、彼(彼女?)はちょこんと手に乗ってきた。
飼育されている鳥にとって、外の世界は非常に危険だと聞いたことがあった。
手から降りようとしないので、部屋に連れていく。
ネットで調べながら即席のシェルターを用意すると、警察と愛護センターに迷い鳥を保護していることを伝える。
また、SNSで迷い鳥を保護していることを発信する。
あとは飼い主さんがこの情報を見つけてくれることを祈りながら待つしかない。
小鳥の飼育経験がない私は、とりあえず動物病院に彼(彼女?)を連れていく。
健康状態を診てもらい、一時的な飼育に必要な道具や方法を聞く。
ケージにいれるとフードを食べてくれたので一安心する。
君が来てから、私の生活に彩りが添えられた。
ソラちゃん(最初に名乗っていたのでそう呼ぶことにした)がいる空間は、とても温かく感じられた。
一方で飼い主さんはどれだけ心配しているだろう。早くお迎えが来るといいな。
君と一緒の生活を幸せに感じる一方で、君が本当の家に帰れることを願っていた。
ある日、警察から電話があった。君の飼い主と思われる人が現れたらしい。
私は君を移動用のケージにいれて指定された交番へ向かった。交番の中では同い年くらいの女性が座っている。
女性は私に気づくと駆け寄ってきた。ケージに被せていた布を取ると「ソラちゃん!」と叫ぶと泣き崩れてしまった。君はしきりにケージの扉を開けようとしている。
間違いなく、君の本当の家族だ。
女性は何度も何度もお礼を言うと、君と一緒に帰っていった。
家に帰ると、とても静かに感じられた。
君のケージは空っぽだ。
君が本当の家族の元に帰れたことを喜ぶ一方で、君がいないことが無性に寂しかった。
後日、飼い主の女性が菓子折りを持って訪ねてきてくれた。
女性は丁寧にお礼を言うと、写真を私にくれた。
写真の中では、君がこちらを向いて首を傾げている。
もらった写真は写真立てにいれて、ケージを置いていた場所に飾っている。
君の幸せそうな姿は、いつも私を勇気づけてくれる。
「じゃん!来たよ!」
「……何時だと思ってんだてめぇは」
陽が昇る前の時間帯。外はまだ静まりかえっている中、何度も何度もインターホンが鳴らされ何事かと思った。ベッドから起き上がり覚醒しきってないままの頭でモニターを覗く。こんなことするのはどうせ。
「……どちら様ですか」
「ひどぉーい!いいから早く開けてよ!」
放っておくと隣近所からクレームを受けかねないので仕方なく解錠してやる。メインエントランスが開き、小走りでこの部屋に走ってくる姿がカメラに映っている。
「おじゃましまーす!」
テンションに差がありすぎて軽く頭痛を覚えた。相変わらず広いねだとか良いながら平然とソファに座る相手を無視してシンクへと向かう。
「あぁ、だめだめ、私がやるよ?」
「……あ?」
「朝ごはん。私が作ってあげる」
「俺は別にそんなもの望んでいない」
ただ水が飲みたかっただけ。大体、こんな夜と朝の狭間みたいな時間帯なのに何が朝ご飯だと言うんだ。コイツの体内時計はどんだけ狂ってやがるんだ。
「いーからいーから。パン派?ご飯派?パンならねぇ、コンビニで色々買ってきたよ」
そして何やら持ち込んできたビニール袋の中身を広げだした。見たこともない形をしたものや、ほぼチョコの塊のようなもの。殆どがいわゆる菓子パンというものだ。
「おい。いい加減言え」
「なにが?」
「何の目的でこんな時間に押しかけてきたのかって聞いてんだよ」
朝ご飯を作りにだなんてふざけた理由じゃないのは分かっている。俺が睨みつけると観念したのか笑顔が消えた。そして、何をするかと思えば買ってきた1つのパンの袋を破り目の前で食べ始めた。
「あのな、俺は別にお前がここに来たことを攻めてるわけじゃねぇんだよ。何の連絡もなしにいきなり来て――」
「いきなり来ちゃいけないの?」
そう言ってこっちに顔を向けてくる。口の周りにチョコがついている。
「いきなり、会いたくなったから……いきなり来たの」
「バーカ」
だったら最初からそう言えよ。会いたいとでも言えばこっちから迎えに行ってやったのに。けれど、コイツなりに我慢をしていたんだろうと思うともうこれ以上咎める気にはならなかった。
「お前が食べているそれは何なんだ?」
「え?これ?これはね、チョココロネっていうんだよ。食べる?」
「そうだな」
だが、差し出された食べかけを受け取ることはせず、代わりにその華奢な手を引き寄せる。無防備なそのチョコ付きの唇にキスをした。
「……なにすんの」
「甘い」
「当たり前だよ。チョコだもん」
瞳を潤ませそのまま勢いよく抱きついてきた。ちょうど窓の外で朝日が顔を出したところだった。こんな早朝も悪くない。