『秋風』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
秋風
秋風が吹いた。
そっと僕の頭を吹き飛ばした。
首なし鶏のように、僕は失くしたものを探すために旅に出た。
秋の道に歩き出した。
きれいだね、と人たちの声が聞こえた。
僕の頭もきっともみじのように空を舞ってるから。
秋風
志織とは春に出会った。今はもう並んで電車のホームの椅子が冷たい。柔らかく冷たい風が彼女の方から吹いていつものサボンの香りが鼻をくすぐる。
「…誰かが泊まりに来るなんて中学生以来。」
「あ〜…うん、うちも最後がいつか覚えてないな。」
しおりの家の方面に向かう電車がやってきた。
試験勉強のための教科書とノートでずっしり重いリュックを持ち上げて、一泊するための荷物で膨らんだトートバッグを抱えて乗り込む。
「…ふふ、ルイ、意外と荷物多い。」
「しおりの服じゃ入らないし…。」
「ふふふ、まあそうだけど。」
秋風を締め出してゆったり電車が動き出した。
少し進んでカーブを進むとがたんと揺れて志織が掴んでいたバーに自分も掴まる。
心なしか彼女を壁に追いやるような体勢になってしまった。
でも彼女は真顔よりは少しはにかんだような表情をしたから、そのまま傍に立つ。
「……、」
志織が少し俯いて艶めく黒髪が片耳から流れ落ちる。睫毛を伏せて、色付きのリップがついた唇をきゅっと結んでいる。
透けるグレーの眼鏡フレームは彼女を凛とクールに仕上げるけど、私の前でこの子は特別な感情を揺らしている。手に取るように分かるのは、私も同じだからか。
勉強会は別に泊まりじゃなくたっていい。そんなことお互い分かってる。
まだ何も言葉にしたことはないけど、移り行く季節と一緒に傍に居る時間を伸ばす、それだけで十分な気もしているんだ。
春風、秋風、同じ風なのに季節で感じ方が違う
色々と、同じ事なのに言葉ひとつで感じ方が違う
あなたに言われた言葉ひとつで、いい日にも悪い日にもなる
私の言葉でも、そう感じる人はいるのだろうか?
誰もが、温かく感じる言葉を発していきたい
秋風
聞いたことない言葉だから調べたら秋に吹く風らしい。そのまんまだな。
季節の移り変わりに使う言葉なんだろうけどまぁ使う機会はなさそうだ。実際今まで聞いたこともない言葉だし。
しかし今年は暖かいな。部屋の断熱はとりあえず完成したけどそもそも寒くないから効果を実感できてない。
断熱効果を確かめたいから早く寒くなってほしいと思う気持ちがちょっとだけある。なんとも本末転倒なことだ。
そして風邪はほぼ治った、と思う。鼻水とだるさはほとんどなくなった。ただ喉の痛みと咳がまだちょっと残ってる感じだ。
でもこの程度なら今夜にでも治りそうだ。風邪が悪化しないでよかった。
#秋風
山の麓の小道に、色鮮やかな落ち葉が散らばっている。
大きくて真っ赤な一枚を、ふと取り上げて裏を見たら、小枝で引っ掻いたような字で
“どんぐり300コおねがいします”
と書いてある。
もう一枚拾ってみると、それには
“ミナミのクニへ引っこします。春までさようなら”。
他にも“冬みんのおしらせ”やら“しんせんな栗あります”やら、どれも手紙のようだ。
どうやら秋風の郵便屋さんが、鞄をひっくり返してしまったらしい。
秋風
昨日は心地よく感じたのに
今日はちょっぴり冷たく感じる。
昨日は気分が良かったのに
今日はちょっぴり寂しく感じる。
電動自転車の充電はできたし
ひとりでも行ってくるか。
今日の天気は曇り。
おひさまが背を向けてしまって
秋風だけが私をすり抜けていく。
外の空気は、もうすっかり冷たくなってきた。この前“木枯らし一号”が吹いたというニュースを見た気がする。秋風がひんやりと顔のあたりを刺す。
こんな寒いのに会社行くのやだなぁ。
真夏にもおんなじことを言ってた気がする。在宅ワークOKのゆるいデザイン会社だけど、今日は珍しく対面のミーティングが予定されていた。散歩で歩くのは好きなのに、会社に向かうときだけ足が重いのはなんでだろう。
やっとの思いで会社にたどり着いた。早く来てる人があっためてくれてるから室内はぬくぬくしている。
「あーさぶさぶさぶー」
暖気に触れて独り言が口をついた。
「人間って寒い時より、あったかいところに入ったときに寒いっていうよな。なんでなんだろう」
すぐ後ろにナカガワ課長が立っていた。
「わ、ちょっと驚かさないでくださいよ〜。おはようございます」
「おはよう。カシマ久しぶりか?ずっと在宅だったろ」
特に嫌味な言い方じゃない。この人はフラットに世間話をする人だ。
「1週間ぐらいこもってました。ホントは今日も出たくなかったんですけどー」
「自由人だな。その調子で頼むよ」
私の悪態にもツッコミなしでスルーするのがナカガワスタイルだ。
メールチェックと大事なミーティングを終えたらもうお昼。食堂と名のついた休憩室にコンビニで買ってきたものを持ってきて食べる。
「あー、カナデちゃん久しぶり〜!」
「あ、ユウキさん、ミサさん、お久しぶりです〜」
コンシューマ…あれカスタマーマーケ…えーと販売企画室の先輩たちだ。部署が違うとお昼ぐらいしか顔を合わせない。この人たちとは前にチームで仕事をしたことがあった。
同じテーブルを囲んでお昼を食べる感じになった。二人は一緒にいるとずっとしゃべっている。
「ミサは最近彼氏とはどうなの?」
「ウチはちょっと秋風入ってるかなぁって感じです」
「うーわ、古典みたいな言い方! カナデちゃんわからないんじゃない?」
ユウキさんからキラーパスが入る。え? 私?
「え? あー、最近風強いですよねー」
「ほら、わかってない。古い表現でね、関係が冷えてくることを“秋風が吹く”っていうのよ」
そうなんだ。としか思えない。
「カナデちゃんは彼氏いるんだっけ?」
この流れだとやっぱり来るよなぁ。
「や、いないです。全然。最近、友達とルームシェアしてるんです。それで今の生活がすごく楽しくって」
「あーそれもいいなぁ。ケンカとかしないの?」
「もうぜんぜん! パートナーはすごく優しくて、甘えちゃってるんですけど、私が家事とかサボっちゃってても文句言わないでやってくれたりとか」
やだ私なんか早口になってる。
「なになに? パートナーって呼んでるの? そういうカンケイなんだぁ」
え、そこからかう? いいじゃんパートナーで。
「この前、向こうは“家族”って言ってくれました」
「キャー!もうアツアツじゃない。いや、うん、もうイマドキ全然おかしくないと思うわよ」
「いや、そうゆうんじゃないですって。女同士仲良くやってるだけです」
「ちょっともうユウキ、やめなって」
「あ、ごめんね、また聞かせて。ルームシェアのエピソード」
そう言うと二人は休憩室を出て行った。
帰り道、昼間のことを思い出していたら、ちょっと胸がチクチクした。あたしとナオの関係をそんな風に言ってもらいたくない。一緒に暮らす大事な家族。私だけに見せてくれるナオの笑った顔、寝ぼけた顔、お風呂上がりの濡れた髪…。
「あー熱い熱い」
ひんやりとした秋風がほてった顔を優しく冷やした。
何となく、先日この場でお別れを告げたような気がするけど、まあ、気のせいだろう。
それか、お題がそんなんだったのかな。
いや、「また会いましょう」だから、あながち間違ってないか。
まあ、それはそうと秋風。
もはや秋な感じではない今日この頃。
寒さに震えながら、仕事に向かう。
駅で降りて、たくさんの人達に混じって。
ふと思う。
あの、うだるような夏はどこへ行った?
あの日と同じ場所にいながら、まるであの暑さが思い出せない。
だって、この場所はこんなに肌寒い。
かろうじて秋風と呼べるような、一陣の風が吹き抜ける。
夏の熱風に比べたら、かなり心地良いが。
気付けば、こんな繰り返しを早半世紀。
そしてもうすぐ、今年も終わりが近付いている。
生きてるんだな。
季節が移り変わってゆく。
時を止めることは出来ず、巻き戻しも早送りも叶わない。
そうやって、私達はゴールに向かって生きている。
秋風に吹かれながら、職場に到着した。
朝から黄昏るな。自分に言い聞かす。
しっかり働いて、誰かのためになろう。
自分に出来ることを、精一杯やろう。
ただ、それだけだ。
秋風
連絡先を交換したのが今年の4月末、実質5月からの付き合いだ。半年が経った。最初は互いに遠慮があったし、モラルの擦り合せもとい価値観の相違点を探っていた。出身地が違うだけで多少の言葉の壁がある。隣同士の県ではあるが、イントネーションが全く違うので同じ言葉なのに聞き取れなかったりする。文化の差もある。育った環境も違う。山と平地。片田舎と田舎。末っ子と一人っ子。2歳差。共通点と言えばアレルギーの多さと躁鬱病ぐらいのもだ。映画の趣味も似ているか。先日はR15+(グロ)をツッコミを入れつつ笑いながら鑑賞したから、そういう所の感性は近いのかもしれない。
この半年間で結構な数のイベントに参加したし、県外にも旅行に行った。たぶんフェーズが移行したのだ。「この人は何が嫌なんだろう」といった探りの段階を抜けて、今はきっと「どこまでなら許されるだろうか」という試しの段階なのだ。君は不機嫌を隠さなくなったし、怒りを表面化するようになった。自分は軽〜中度の幼児退行が度々出ているのだと思う。君に言われるからね、「5歳の姪っ子と完全に一緒だ」って。どちらも悪いことじゃない。互いに受け止められるかどうかだけだ。
「精神科に行ってきな、あなた自身にダメージが溜まるから」と君は言う。その内耐えられなくなるのは君の方なんだろうな。来年辺りに引っ越して一緒に住むという話になっているけれど、どうか秋風が吹く前に。
心地よい風から寒さを感じる風に変わっていく
駆け足で過ぎ行く時と共に
風景も日に日に変わっていく
冷たく変わる風は人の心も変えてしまうのか
あの人と熱く交わしていた視線が
いつの間にか違う方を見つめてる
気のせいだよと言って欲しいけど
気付いてしまって
壊れてしまうのが怖くて
何も言えないでいる
風よ お願いだから
あの人の心まで持っていかないで
「秋風」
秋風
このところ秋(11月中旬)とは思えない程の暑さが続いてる。それでも夏よりは天国だけど。
今日は蒸し暑い。木枯らしが吹いてくれないかな🍂🍁
西風のため息が吹けば今日までの思い出はまるで名画に変わる
「秋風」
僕の身体の中を
突風が駆け抜けた
秋風の中
公園で落ち葉を掃き掃除していた時だ
急に僕はブルっと震えた
空風が体を巡っているような感覚なのだ
そして
突風だ
あぁ!
僕は午後から友達の家に行くのを忘れて居た!
スマホから電話すると
さっきから来ないのかと
君の事を考えていたのだが
そうか
虫の知らせか
そんな事があった
「秋風」
ひやりとした空気が頬を撫でる
どっちつかずで優柔不断で
この空はまるで私みたいね
あなたの隣は息がしやすかったけれど
もう私をおいて行ってしまうのでしょう
眩い赤黄の葉とともに風にのせて
ここではないどこかへ連れ去ってほしかった
秋風や
吹けば風呂屋へ
脚動く
この景色さへ
現し世なりや
秋風… 夏と明らかに違って涼しく感じる風 10月くらいに吹く湿度が低くてさわやかな… 今11月半ば ほんとはもっと気温が下がるイメージだが 日中はまだ汗ばみ 未だに夏日とか天気予報で聞く これからもあれ?と感じる日が増えていき あらゆる事に影響がでる事に不安を抱く…
ポポヤ
秋風
もうすぐ今年が終わる。
11月も半ばだというのに
なんて暖かいのだろう。
「今日は風がつよいな…」と
まだ暖かく感じる秋風に
乱れる髪を 慌てて押さえた。
秋風
バイクの後ろに乗せてもらって紅葉を見に来た。
彼に初めて連れてきてもらったそこは、縁結びのお寺だった。
「知ってたの?」
「いや、まぁ、うん。知ってたかな」
2人で絵馬に願いを込めた。
帰りに参道入り口のお豆腐屋さんに寄った。
お店は混んでいて外で食べた。
頬にあたる秋風が心地良い。
黄金色の三角の形をした油あげは、カリカリでふわふわだった。
「おいしい!」
「良かった。また来年も来よう」
でも、約束は4回でストップした。
久しぶりにひとりで来てみた。
同じ景色のはずなのに、色のない風は冷たかった。
ひんやりとした冷たい空気
大きく深呼吸をすればスッキリする
澄み切った 綺麗な空気
北からの風に吹かれて両腕をさする
そろそろストールくらい出してもいいかも
『秋風』
あの時は…あぁ、そうだ。文化祭に向けての買い出しをしつつ、後輩とだべりながら町を歩いてたんだったな。
そんで…、なんでオレがそっちを見たかは、あんま覚えてねぇけど。本当になんとなく、道路の方に目をやって…。
黒猫と、それに気付いてないらしいダンプを見た。
気付いた時には、オレは、後輩のポケットから魔道具をひったくっていた。
魔道具に認められた所持者じゃなかったんで、世界の時の流れを止めることはできなかったが…時の流れを遅くすることはできた。
オレの足は最悪 轢かれてもいい。だからどうか、黒猫だけは。
俺が向かいの歩道に飛び込んだのと、ほぼ同時くらいだったか。
時間の流れが戻り、ダンプが走り去った。
夏場だったら肩でも擦りむいていただろうが、秋物のコートを着ていたおかげで、オレは負傷せずに済んだ。黒猫も…。
……いない?
まさかと思って後ろを見たが、道路に赤色は見当たらなかった。
…まぁ、猫は俊敏だし、野良猫ともなれば人間への警戒心は高いだろうからな。オレがダンプに気を取られている内に、何処かに去ったんだろう。
そうこうしていると後輩が駆け寄ってきたんで、勝手に使ったことを謝りつつ魔道具を返した。歩道に飛び込んだ衝撃はこの道具もきっと受けたはずだが、幸い傷や破損はなかったようだ。
もう道路に飛び出すんじゃねぇぜ。今回のように、誰かが助けてくれる補償はねぇんだから。
(「ティマセル学園」―天遣 空妖―)