『理想郷』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ほんの少し開いた窓から
ひんやりとした涼しい風が入ってきた
壁一面の本棚にギチギチと
音が鳴りそうなほど詰まった本
テーブルの上に広がる読みかけの漫画
行き場がなく床に置いたお盆
香りの良いアールグレイティーにチョコレート
柔らかくも体を支えてくれるソファに埋もれて
体を伸ばして心地の良さにうっとりとする
好きな音楽を止めて
今度はモニターでライブDVDの再生
観ているうちにウトウトし始めて
次に目が覚めたときはどこからか分からなくなる
それも「まぁいいや」と片隅に追いやって
窓の外はいつの間にか暗くなっていて
そろそろ夕飯を作らなきゃと思いながら
またソファにしがみつく
好きな時間に好きな場所で好きなことをやり尽くす
ここが私の理想郷
『理想郷』
私の理想郷は、私の中でしかない
だってこの世は、私好みじゃない
存在しないからそこ、理想郷として存在たりうるんだよ
なんだか禅問答みたいだね
「故郷を探して」
二年か三年ごとに住む街を変えることにした。
実家が無くなり、同級生たちの多くも都会に出てしまって、その街に住んでいない。
だが、帰る場所がないのなら、これから作っていけば良い。しかも複数作っておけば、安心。
軽い気持ちで始めた生活だが、どうやら私には合っているらしい。
そしてわかったことがある。
「この街は、今の私には早かったな」
荷造りを終えて、部屋を見渡す。
ちょうど二年。
この街から新しい街へ。
この街とは違う気候、違う景色、違う文化の街へ。
「子育てするには良い街なんだろうなぁ……」
次の街は、国立大学のキャンパスがあるから大学生が多いかも。同世代との出会いは期待できないかもね。
まぁ、こんな定期的に引越しを繰り返す女と結婚しようとする男がいるとは思えないけど。
「じゃあ、またいつか」
辛い思いをしたわけではないけど、この街にはもう来ないだろうな。
すっかり荷造りと各手続きはプロ級だ。
記念すべき十回目の引越し。
故郷にするのはどの街でも良いはずなのに、故郷にしたい街はなかなか見つからない。
────理想郷
この先は誰だろうと通さない六畳間に「好き」が溢れる
「理想郷」
理想郷
自分が言葉を綴り、
それを世の中に発信できるシステムがあるなんて、
思いもしてなかった。
(しかもこんなに簡単に……!)
私にとって、
ここは小さな理想郷だ。
理想郷
眠るのと気を失うことはとても似ていて
眠ることが怖い
いつか目覚めない日がくると知っているから
私は寝具を持たない
気を失うように寝たいから眠るための準備はいらない
必要なのは頑張ったが寝てしまったという言い訳だ
ああ苦しみのない世界の苦しみはどこにいったんだろう?
たぶん苦しみしかない世界があるんだろうな
#理想郷
ひろと君と僕は図書館で、クジラに飲み込まれた男の、古いお話を見つけた。
男の名まえはヨナ。神さまの言いつけに従わず、船で逃げようとしたら嵐になった。
自分のせいだと思ったヨナが、海に飛び込むと、大きなクジラがやってきて彼を飲み込んだ。
ヨナは三日間クジラのお腹にいて、そのあと吐き出され、今度は神さまの言う通りにした。
「じゃああれも、僕らを見張ってるってこと?神さまに逆らうヤツがいたら、飲み込むために」
「うーん」
図書館前のベンチで、僕らは空いっぱいを覆う、巨大な宇宙クジラを見上げる。
「なんか見張るとか、そんな風に見えないなあ…」
あれはもっと、ゆったりしてて大きくて。
まるで方舟みたいに、僕らを遠い新しい世界へ運んでくれそうな気がする。
そう言ったら、ひろと君は
「僕も」とにっこり笑った。
世界中の人の理想郷は、
地理とそこから生まれる歴史、文化によってみんな違うから,
戦争になるんだよね。
【理想郷】
理想郷を想い描く
胸が締め付けられる
今存在している世界は
苦しくなるほど辛い世界
その現実に早く気づいて
手を伸ばしてあげて
争いの無い世界
自然との共生
人々の調和
哀しみの極限まで無い社会
美しい地球
そこに在るのは美しい秩序
その筈なのに何故・・・
争いは何も産まぬという事を
何度繰り返しても学ばないのか
「理想郷」
理想なんて出てこない、だって理想したって意味無いから。
《理想郷》
乳の川 葡萄酒の泉 ちぎってもちぎっても尽きないパン 常春の花園 迦陵頻伽の歌う声 互いに長大な箸で食べさせ合うような 悟りと隣人愛 ただし、禁を犯して林檎を食べた者は永久追放だから注意するコト
理想郷
一部の金持ちとそれを支える奴隷のごとき労働者。そんな格差社会は金持ちにとっては理想郷だろう。労働者からすれば地獄でしかなくても。
死ぬまで働き続けないといけない人がいる一方で生まれてから一度も働かないでいい人もいる。
死にたいと思いながら生きている人もいれば一度も死にたいと考えたこともない人もいる。
すべての人が幸せな世界などなく誰かの幸せは誰かの苦しみによって支えられている。
きっとこの世界にはそこにいる誰もが幸せに生きている理想郷がある。だけどその理想郷は間違いなく地獄を積み上げて作り上げたものだ。
理想郷とは
想像上に描かれた理想的な世界
らしい。
理想的な世界。ってきっと、争いがなく、みんなの差がなく、平等に暮らせている。
って感じなのかもしれない。
けど、僕が考える理想郷、理想的な世界は、実現できていると思う。
僕がいて、愛する妻と子どもがいて、笑顔で楽しく暮らせている。
ちっぽけだな。って言われるかもしれない。けれど、小さくても幸せを感じられる今の生活が、僕にとっての理想だから。
その理想を手放さないように、僕は頑張りたい。
この地球に生きているありとあらゆる生き物がお互いに助け合い、争いのない愛と調和に満ちた世の中が理想郷だ。
自分だけ 理想郷には 馴染まない
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世界のあらゆる所で考えられた理想郷の一覧を見ていた。
飢えも貧乏も怪我も病気も老いも喪失もないその世界に、私と同じ俗人がいるならそこは理想郷だろうか。私と違う聖人がいるならそこは理想郷だろうか。誰もいないならそこは理想郷だろうか。
孤独を寂しがる心と、他人と比べる心を抜いた私は私と言えるかしら?
理想郷
君と笑って
歌って
踊って
1日が過ぎるそんな日が
続けと願う夢を見ては
線香を焚く
この場所は君と僕の理想郷
子どもの頃は大人の世界が理想郷だったな
子どもは親に自由を制限される一方大人は自分で稼いだお金でなんでもできるなんて思ってた。
実際は子どもの頃の方が自由だったなんて思いもしなかった。
でも大人も不自由なりに自由を楽しめるし案外人生って楽しいものなのかも
<理想郷>
もし理想郷というものが実際にあるとしたら、私はその存在を他の人に教えるだろうか。
多分教えないと思う。その場所を自分のものだけにしたいと思い、徹底的に隠し続けるだろう。
だから私みたいな人間の前には理想郷は現れない。理想郷というものは、この世に存在する全ての愛おしい人々が住まうべき場所。私ができることは愛する人たちがそこに行くことだけだ。そうやって思い続けていくことで、秘匿しようという思いは長い年月をかけてきっと消えていく。
不可能の希求は徒労に終わるだろうが、それでもこんな理屈を捏ねて諦めるよりも、愚直に進み続ける状況の方が幾分理想郷には近いと思った