小絲さなこ

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「故郷を探して」


二年か三年ごとに住む街を変えることにした。

実家が無くなり、同級生たちの多くも都会に出てしまって、その街に住んでいない。
だが、帰る場所がないのなら、これから作っていけば良い。しかも複数作っておけば、安心。
軽い気持ちで始めた生活だが、どうやら私には合っているらしい。
そしてわかったことがある。


「この街は、今の私には早かったな」
荷造りを終えて、部屋を見渡す。

ちょうど二年。
この街から新しい街へ。
この街とは違う気候、違う景色、違う文化の街へ。

「子育てするには良い街なんだろうなぁ……」

次の街は、国立大学のキャンパスがあるから大学生が多いかも。同世代との出会いは期待できないかもね。
まぁ、こんな定期的に引越しを繰り返す女と結婚しようとする男がいるとは思えないけど。




「じゃあ、またいつか」

辛い思いをしたわけではないけど、この街にはもう来ないだろうな。

すっかり荷造りと各手続きはプロ級だ。
記念すべき十回目の引越し。



故郷にするのはどの街でも良いはずなのに、故郷にしたい街はなかなか見つからない。

────理想郷

11/1/2024, 3:22:30 AM