『特別な存在』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君の中で特別の存在になりたいと思って考えてみたんだ
大切な人がいる君の中で、その大切な人になれなかった僕が特別になるにはどうしたらいいかって
それでまず「特別」の意味を調べたんだ
辞書を引いたら
普通のものとは違う扱いをする事とか、例外になる状態とか書いてあった
つまり、僕が君の中で普通じゃなくなる事、それが特別になるってことだってわかった
それで僕考えたんだ
僕が君の中の特別になる方法
僕が今からやる事、よく見ててね
しっかりと見逃さないように
その少し茶色みがかった綺麗な両目で
── 君だけに捧げる僕の最後を
彼に笑顔でそう告げて、僕は屋上の端から踏み出した
君の中の普通じゃなくなるために
君の特別になるために
頭から勢いよく落ちていく
でも笑顔は絶やさない
屋上から焦った顔で僕を見下ろす君の目をしっかりと見つめて
君にしか見せない最高の笑顔で
衝撃が走る
だんだんと体の感覚がなくなっていく
意識を失う直前最後に見えた君の顔が脳裏によぎる
…僕は君の特別になれただろうか?
「ぁ゛いし゛て る…」
たった1人に向けたその言葉は
悲鳴の中に消えていった
お題:『特別な存在』
「特別な存在」
「だいたいこんなところか」
頭にタオルを巻き朝から部屋の掃除に追われている。
こんないかにもみたいな格好、いかにもなセリフを吐いている…それは何故か?
高校から付き合っている彼女と同棲が始まる日なのだ。
無事彼女は俺と同じ大学に合格し一人暮らしを始めるものと思っていたのだが…
彼女が大学に合格したとき大事な話があると告げられた。
受験前半年ほど彼女とほとんど会っていなかったこともあり「まさかな…」と一抹の不安を覚えながら待ち合わせ場所に向かった。
想いを伝えあった駅前の公園。
「先輩遅いです!」
「まだ5分前なんだけど」
「彼女より遅いとかありえないですよ!」
「…なにそのルール初めて聞いたんだけど」
「なんで先輩ちょっとニヤついてるんですか?キモいですよ!」
「うるせぇ」
「冗談ですよ先輩っ」
彼女の言葉にほっとして顔が無意識にほころんでいたらしい。
「で、大事な話って何なんだ?」
「えっと…ですね…あの…とりあえずあそこ座りましょ」
「あ、あぁそうだな」
二人で座ったベンチ、その場所はあの時の…
彼女は座った瞬間、俺に寄りかかり腕を絡めてきた。
お互い同じことを考えていたのだろう…しばらくお互い言葉を交わさずお互いの温もりを確かめ合っていた。
「先輩…私の夢覚えてますか?」
「…あぁ覚えてるぞ」
「それでですね…あのー…そのですね…」
「なんか言いにくそうだな…お前らしくないな」
「……」
「んーそれはお前の夢と関係あるのか?」
「……はい」
「…お前の夢叶えてやりたいし…俺もそうしたいと思ってるが今すぐは流石に無理だぞ…経済的なこととか、いろいろと」
「それは全然全然わかってます!それにちゃんとプロポーズもしてもらいたいですし!」
「お、おぅ」
「じゃなくてですね…あの…先輩と…同棲…したいです…」
「ふぇ!同棲?」
「はい!」
「いやいや…俺は嬉しいけど…親御さんが許さんだろ」
「それがですねー…もう許可はもらってます!」
「マジか!てかどこの馬の骨とも分からんやつとの同棲に許可するってどういうこと!」
「普通そうなんですけど…どこの馬の骨ってわけでもなくてですね…ただ1つ条件がありまして…」
「嫌な予感するわ…」
「…うちの両親と1度会って頂きたくてですね…」
「だよな…」
「ダメですか?…」
「…分かったよ」
「ほんとですか!ありがとうございます先輩!」
嬉しそうな彼女の顔を俺はどうしょうもなく愛おしく感じ強く抱きしめた。
特別な存在は、沢山あるよ。
人も自然も地球も太陽も
明日降る雨も、毎年楽しみに待つ
桜の花も…そして自分自身も。
ただ、特別に想う人は
密かに胸の奥。
そういう人に出会えた事が
嬉しい。
特別な存在よりも
私…特別な人でありたい。
【お題:特別な存在】
特別な存在に食べさせてあげる、甘くてクリーミーな素晴らしいキャンディ――そんなコマーシャルがあったことを思い出しながら、俺は、ただただ甘ったるいだけの、キャンディと呼ぶのも烏滸がましい砂糖玉を噛み砕いた。
夜の帳に身を隠し、廃ビルの屋上で狙撃銃を構える。スコープ越しに見えた組幹部に喰らわせるのはもちろん鉛玉。彼は依頼主にとって特別邪魔な存在であり、俺にとってはただの的だからだ。
特別な存在なんだよ
ずっと、初めてあったあの日から
でも君は、僕を一人の友達として
僕とは違う価値観を持ってる
僕にとって友達は奴隷同然
問題を解決する道具でしかない
僕は君と、友達止まりは嫌なんだ
奴隷同士じゃ、長くはもたない
だから、君は僕の奴隷として
手離したくない道具として
僕の手の中で、自由になって欲しいんだ
キラキラ頑張る他人を推したり、いい子、いい社員、いい地元民でいることに頑張るの面倒になって、というかパワーが足らなくなって、しばらく自分を推すことにした。リアルで公言すると気持ち悪がられそうなので、こっそりやる。これまでの推しもリアル紐付けせず、周囲にバレてないのでお手のものである。
推しは私!
あなたがこの世界に生きて
存在してくれていることに感謝する
少しも私の思いどおりにはならない
あなただけれど
溢れ出す思いを
ひとつ ひとつ 手放して
心の底に残った
たったひとつの思い
どうか あなたが幸せでありますように
特別な存在
リナちゃん。私のリナちゃん。私の、私だけのお友達。とっても、とぉっても大切な私の特別な存在。
なのに…、どうして私をそんな目で見つめるの? やめてよ、どうして? どうして私をそんな目で見るの。
私、どこかおかしい? そんなことない、よね? だって私はただ彼女が好きなだけなの。
私はただ、なんでも話せるお友達がほしかっただけなのに。一緒にいてくれるお友達がほしかっただけなのに。
「おはよう、リナちゃん。今日もいい朝だね」
今日もカーテンを開けて、陽の光を浴びながら私のリナちゃんに朝の挨拶をする。そしてぎゅっと抱きしめる。
これが欠かせない私のルーティーン。彼女に挨拶しないと私の一日は始まらないの。
「…」
だけど、今日も相変わらず彼女からのお返事はなかった。
まあ、いっか。いつものことだしね!
「今日のご飯はなにかなぁ…、早く下に行かなくちゃ! リナちゃん、待っててね! すぐに戻ってくるからね!」
「…」
「ふふふ、そんな悲しい顔しないで。あなたを捨てたりなんてしないからね」
タッタッタッ
下で私を待っているであろう朝ごはんのために小走りでダイニングに向かった。
「はぁ〜、美味しかった!」
ガチャッ
リナちゃんは私の部屋で私を待ってくれていた。真っ白の肌に、大きくて真っ赤な綺麗なおめめ、可愛いおべべに、綺麗でつやつやなお肌、サラサラで輝いている黒色の長い髪の毛。
ぜーんぶがかわいいの。
「ご飯美味しかったよ、リナちゃん。 ふふ、今日もかわいいね。ずっと見ていたいぐらいだよ。…あ、そろそろ時間だ! 学校に行かないと」
「いってきます! リナちゃん!」
『カナチャン、いってらっしゃい』
リナちゃんがそういってくれた。今日はリナちゃんのおかげで頑張れそう!
「はあ〜、やっと学校終わったよぉ。ほんとに長すぎぃ」
「それなぁ。…ま、もう学校終わったし今日金曜日じゃん? 遊びいかね?」
学校が終わり、放課後になったところで友人から声をかけられた。
「あーごめん、無理だわ。また今度にしてよ」
「また例のリナちゃん? ほんとに好きだよねー。ね、こんど会わせてよ。うちカナがこないなら帰るわ。一緒に帰ろ」
「いいよー、帰ろ帰ろ」
二人で教室を出て帰路につく。彼女はリナちゃんの話を聞いてくれる人だ。だから仲良くしている。
「それでね、今日のリナちゃんは一味違ったんだよ」
「え、なになに」
「今日のリナちゃんはね、私に『いってらっしゃい』って言ってくれたの!」
「え?」
私がそういった瞬間、彼女の顔色が変わった。悪い方に。
「え、勘違いだったら悪いんだけどさ…、あんたの言ってるリナちゃんってさ、」
「あ、もう私の家じゃん! あ、ごめん。遮っちゃった…。なんて言ったの?」
家につき、もうすぐリナちゃんに会えることが嬉しくてつい彼女の言葉を遮ってしまった。
「あ、ううん。なんでもない。…じゃあね。また月曜日」
「? うん。じゃーね」
彼女の様子が少し変だった。顔には困惑と少しの恐怖があるように見えた。
まあ、いっか! そんなことより、早くリナちゃんのところに行かなくちゃ!
「ただいまぁ!」
「はい、おかえりなさい」
珍しく母親が家にいた。
「…なんでいるの?」
「なんでって…、いたらいけない理由なんてあるの? ここはあなただけの家じゃないのよ。それにやらなくちゃいけないこともあったし」
「やらなくちゃいけないこと…?」
なんだか胸騒ぎがした。急いで部屋に行かないと。
ダッダッダッダッ
母親がなにか言っていた気がしたけれど、そんなものを気にしている余裕はなかった。
ガチャッ
「…ない。リナちゃんが、…ない」
私の部屋に、リナちゃんはいなかった。
「嘘、嘘、うそ、ウソ、ウソ」
部屋を必死ですみずみまで探す。
「どうして…? まさか!」
母親が捨てた。という考察が頭の中に生まれた瞬間、母親は私の部屋にやってきた。
「なにしているの、騒がしい…。ああ、あれのこと? あれを探していたのね? あれなら捨てたわよ」
「は…?」
頭が、真っ白になった。なにも考えられない。捨て、た? リナちゃんを…? ステ、タ?
「あなたがいつまでもあんなのに執着しているから、しょうがないことなのよ。高校生にもなっても必死にあれに話しかけて、いい加減大人になりなさい。いい切り替えになるでしょ?」
なにを、言って、るの?
「なに、言って、」
「大体、不気味なのよ、あなた。小さい頃はまだよかったし、いつかなくなると思ってたのに…」
「だって、リナちゃんは…。生きてるでしょ?」
「なに言ってるの? あなた。…はあ、やっぱりあんなもの与えるべきじゃなかった。だからあれほど止めたのに…。あんな不気味な人形をあなたに渡すのを」
ぬい、ぐるみ?
違う、違う、違う違う違う違う!
「違う! リナちゃんはぬいぐるみなんかじゃない! おかしいよ!」
そうだよ、じゃああの悲しそうな顔は? いってらっしゃいって言ってくれたあの言葉はなんだったの?
「おかしいのはあなたよ! いつもいつも一日中あの気味の悪い人形に話しかけて、挙げ句の果にはあのぬいぐるみは生きているですって!? 冗談はいい加減にしてちょうだい!」
なんで? どうして?
「どうして? なんでそんなこと言うの? リナちゃんは生きてるんだよ? いい加減にするのはそっちの方、だよ?」
「目を覚まして! あなた、どうしてこんな風のなってしまったの?」
私が、おかしかったの?
_それは違うよ。_
そうだよね、リナちゃん。
_そうだよ。ねえ、リナのことカナチャンは捨てないよね?_
「うん。もちろんだよ、リナちゃん」
「何、急に」
「あは、あははははは」
リナちゃん、リナちゃん。私のリナちゃん。私の、私だけのお友達。
ほら、やっぱりそうだ。私はおかしくなんてなってないの。おかしいのはあいつだ。
「カナ!」
「うるさい!! 黙れ!」
ああ、もう邪魔しないでよ!
_大丈夫だよ、カナチャン_
ああ、リナちゃん。私のかわいい、かわいいお友達。
誰もわかってくれなくても、リナちゃんだけはわかってくれる。リナちゃんだけが、私の全てをわかってくれる。私の、私だけの特別な存在。
リナちゃんのいない世界にいる意味なんてないよ。
だから、ずっと一緒にいようね、リナちゃん。
私はただ、私のそばにいてくれる人が欲しかっただけなのに。
特別な存在
だれもがみんな特別な存在
だれもがみんな愛されるべき存在
ーーーーー🌙ーーーーー
パジャマに着替えて、電気を消して
ベッドに潜って、クッションを抱いて
目を瞑り集中する
脳裏に浮かび上がる
私の、特別な人
身体は温かいのだろうか
どんな匂いかするのだろうか
寝つきはいい方だろうか
早起きは、苦手かもしれないな
どんなに想っても
どれだけ願っても
指一本触れることさえできないあの人は
私の、特別な人
人には
特別な存在がいます
親だったり恋人だったり
動物だったり
人が
特別だと思うのは
人それぞれです
自分だけがそう思っていればいい
相手にもそう思わせようとするから人間関係がおかしくなる
――二人いればできないことなんてない。
いや、こう言える存在が私にも本当に欲しい。
……改めて思ったけど、特別って何なんだろうな。
なんて考えながら、打っている今。
凡人な私が考えたところで、答えなんて出てくるわけないのにねー。
〜特別な存在〜
#特別な存在
勇気を出して
弱みや、隠し事や、心の内をLINEする
スマホが震える
勇気を出して
あなたの返信通知を開く
よかった
まだ、あなたとこれからも一緒にいられる
自分を本当に理解してくれる人なんて
どこにもいない。
今は…
人人人人人人人人人人人人人人人人
< >
< ヴ ェ ル タ ー ス オ リ ジ ナ ル >
< >
﹀V﹀V﹀V﹀V﹀V﹀V﹀V﹀V﹀V﹀
#特別な存在
声が聞きたい、隣にいたい、自分の腕の中にいてほしい。そんなことばかり考えていたのに、今となっては、ただ穏やかに優しい時間を過ごしていてほしいと思うようになった。少し寂しいと思うことももちろんあるのだけれど、その距離感が心地良くも思えてくる。
心の大部分を占めていたのに、歳を重ねるごとにその面積は狭くなっていった。自信があったからこそそんな自分を薄情だと思う。でも、まだいる。心の中に小さくずっといる。今はそれが、特別な存在なんだと思えている。
とある日曜日の午後7時。
友人から飲みに誘われた。
その友人とは昔からの付き合いで私も暇していたので誘いにのった。
焼肉屋につくとさっそく
「最近よー嫁がずっとイライラしててよー。」
と奥さんについて愚痴りだした。
しばらく愚痴っているとだんだん酒もまわっていき最終的には惚気話になっていた。
正直羨ましかった。
特定の人がいない私にとって友人と奥さんの話は胸に刺さった。
街ゆく人々を見ていると様々な人がいることに気づかされる。
お昼で忙しいカフェの店員。
死にそうな顔をして歩いているサラリーマン。
子供を泣き止ませようと頑張る母。
駅のホームで寝ている人。
少しだけホッとしてしまった。
私にとってあの子は唯一だっけど、
あの子にとって私はその他大勢の中の一人だった
人に心を開くことが下手な私は
頑張って友達を作る度に思い知らされた
いつしか相手の顔色ばかり窺うようになって
周りが求める答えと態度を探すことに必死になって
それが上手に出来なかったときは酷く落ち込んだ
ある時疲れはてて、ついに一切の交流を絶ったことがある
そこまでして気がついたのは、
結局人は、人に依ってしか生きられないということ
今でも人付き合いは苦手
うわべの綺麗な顔しか見せられない
そんな私でも、いつか
誰かにとっての特別な存在になりたい
▼特別な存在
【特別な存在】
昔々、遠い昔。“円の神”が世界を全部丸く混ぜ合わせて、水を混ぜるように空をぐるぐる混ぜ合わせ、真ん中にできた渦を大地にし、回り続けるもの空にしました。少し寒くなった“円の神”は、手を擦り合わせて暖かくしました。すると、手と手の間から火が起きて、これもまたぐるぐる混ぜられて太陽になりました。暖かくなったので、今度は雲を呼び寄せて雨を降らせました。大地は潤い、たくさんの泥ができました。“円の神”はその泥の中を歩きました。泥は足で踏まれて盛り上がり、山と谷ができました。やがて苔生して草地となり、次第に大きな木を生みました。木の中に入り込んだ泥は虫となりました。“円の神”が泥を手ですくうと、泥は下に落ちました。落ちる途中で、泥は鳥になりました。落ちて低く積もった泥は、獣になりました。“円の神”はまた雲を呼び寄せ、手や足を洗いました。それらは踏んで盛り上がった泥を削っていき、川になりました。川になった水は低いところに集まって、海になりました。そして、川の中で手を洗ったときに、手から浮かんだ泥が魚になりました。海の中で足を洗ったとき、足から離れた泥が魚になりました。“円の神”はそうしてから、まだ濡れた泥があるところに息を吹きかけました。すると、強い息は風になり、風が立たせた泥たちは、人間になりました。そして、“円の神”があくびをして涙を落としたところに、ポツポツ生まれたのが、その他の神様達でした。
今はもうできないこと、まだこの世に神様と人間が会話できた頃のこと。“走る神”と呼ばれる若い神様がいました。目が覚めるなり走り出して、太陽を大地の端から端へと運ぶのが役割でした。“走る神”は両親である“風の神”と“雨の神”に太陽の世話を任されていたので、それを誇りに思って毎日毎日運びました。
ある日、“走る神”は人間の女の子に出会いました。運んで運んでいる時に、「いつもありがとう、おかげでとっても暖かいわ」と微笑みかけてくれたのです。
「そうかい、暖かいかい」
「ええ、沢山の花と沢山のお魚も穫れて、暖かいって素敵なのよ」
女の子は他にもいましたが、最初に話しかけてくれた女の子は特別でした。お話をしていないときでも、“走る神”の祭壇に祈り、花を捧げてくれました。
“走る神”は嬉しくなって、太陽をゆっくり運んで、女の子のことをずっと眺めていました。けれど、太陽は火なので、森や川が熱くなりました。そうすると皆喉が渇いてしまって、「暑い、暑い」と言いました。“走る神”の両親は二人でぐるぐる走って、大地と太陽の間に分厚い雲を敷きました。そして、“走る神”にこう言いました。
「お前が決まった速度で走らないと、大地が太陽に燃やされてしまうよ」
「太陽は夜眠るまで燃え続けているのだから、ちゃんとしなければならないの」
“走る神”は驚きました。自分では熱くもなんともなかったのです。地上を覗いて見ると、風と水が与えてくれた優しい涼しさに、あの女の子も喜んでいました。“走る神”は後悔して、また同じ速度で太陽を運びました。
女の子は毎日毎日、“走る神”に微笑みました。“走る神”はそれが嬉しくて嬉しくて、毎日せっせと太陽を運びました。
ある日、“走る神”はこう思いました。
「太陽を早く運んでしまえば、あの子とお話する時間ができるんじゃないか」
そうして“走る神”は太陽を手にするなり飛ぶように走って、大地の端へと運んでしまいました。すると、今度は太陽の火が行き届かなくなり、大地の上は冷えていきました。水は凍りつき、木々は凍った水に傷付いて葉を落とし、生き物達は身を寄せ合っていました。“走る神”の両親は驚きました。これでは二人がどんなにぐるぐる走っても、冷たい風と冷たい水が大地に落ちるばかりです。
「“走る神”よ、どうしてズルいことをしたのですか」
“水の神”に言われて、“走る神”は黙り込んでしまいました。
「我が息子よ、お前は二度、大地の生き物達を死なせてしまおうとした」
“風の神”は怒りました。
「何がそうさせたのか、正直に話しなさい」
“走る神”はしばらくもじもじしてから、大地の一点を指さしました。
「あの子が毎日お礼を言ってくれるのが嬉しくて、あの子とたくさんお話したかったんだ」
両親は顔を見合わせました。
「分かった、ではたくさん話せるように、あの子を空に上げることにしよう」
こうして、“走る神”を応援していた女の子は、空に召し上げられました。空には“円の神”が用意した神殿があり、そこで祈りを捧げることができました。そして、祈りの時間は太陽を運び終わったあと、夜にするよう定められました。それなら、“走る神”が仕事を終わってからお話できるからです。
けれども、“走る神”は「それならずっと夜がいいや」と、太陽を運ぶのをやめてしまいました。空はずっと暗く、女の子も大地のことを心配しました。
ついに“走る神”の両親は怒りました。
「お前のような怠け者は、殺してしまおう!」
しかし、そこに“円の神”が手を差し出しました。
「待て待て、お前たちの息子はこれまで随分頑張ったじゃないか。罰を与え、規則を守れば、許すとしよう。だが、次はないぞ」
“円の神”に言われて、両親は“走る神”に与える罰を決めました。
「一年のうち、半分は今までの速度で運び、半分の半分は大地を眺めていたときのようにゆっくり運び、半分の半分は早く仕事を終えられるように急ぎ足で運ぶ。女の子を眺めていたときのようにしなさい、自分が与えられた罰の意味を忘れないために」
「女の子は毎日お前に祈るでしょうが、お前と話せるのは神殿がすべての姿を見せている時だけです、あとの日は“円の神”が隠してしまうでしょう」
こうして、“走る神”は毎日毎日太陽を運びますが、その速度が定められ、空の神殿は月と呼ばれるものになりました。満月の夜に耳を澄ませれば、“走る神”がその女の子と話している声が、密やかに聴こえてくるかもしれません。