『特別な存在』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
キラキラ頑張る他人を推したり、いい子、いい社員、いい地元民でいることに頑張るの面倒になって、というかパワーが足らなくなって、しばらく自分を推すことにした。リアルで公言すると気持ち悪がられそうなので、こっそりやる。これまでの推しもリアル紐付けせず、周囲にバレてないのでお手のものである。
推しは私!
あなたがこの世界に生きて
存在してくれていることに感謝する
少しも私の思いどおりにはならない
あなただけれど
溢れ出す思いを
ひとつ ひとつ 手放して
心の底に残った
たったひとつの思い
どうか あなたが幸せでありますように
特別な存在
リナちゃん。私のリナちゃん。私の、私だけのお友達。とっても、とぉっても大切な私の特別な存在。
なのに…、どうして私をそんな目で見つめるの? やめてよ、どうして? どうして私をそんな目で見るの。
私、どこかおかしい? そんなことない、よね? だって私はただ彼女が好きなだけなの。
私はただ、なんでも話せるお友達がほしかっただけなのに。一緒にいてくれるお友達がほしかっただけなのに。
「おはよう、リナちゃん。今日もいい朝だね」
今日もカーテンを開けて、陽の光を浴びながら私のリナちゃんに朝の挨拶をする。そしてぎゅっと抱きしめる。
これが欠かせない私のルーティーン。彼女に挨拶しないと私の一日は始まらないの。
「…」
だけど、今日も相変わらず彼女からのお返事はなかった。
まあ、いっか。いつものことだしね!
「今日のご飯はなにかなぁ…、早く下に行かなくちゃ! リナちゃん、待っててね! すぐに戻ってくるからね!」
「…」
「ふふふ、そんな悲しい顔しないで。あなたを捨てたりなんてしないからね」
タッタッタッ
下で私を待っているであろう朝ごはんのために小走りでダイニングに向かった。
「はぁ〜、美味しかった!」
ガチャッ
リナちゃんは私の部屋で私を待ってくれていた。真っ白の肌に、大きくて真っ赤な綺麗なおめめ、可愛いおべべに、綺麗でつやつやなお肌、サラサラで輝いている黒色の長い髪の毛。
ぜーんぶがかわいいの。
「ご飯美味しかったよ、リナちゃん。 ふふ、今日もかわいいね。ずっと見ていたいぐらいだよ。…あ、そろそろ時間だ! 学校に行かないと」
「いってきます! リナちゃん!」
『カナチャン、いってらっしゃい』
リナちゃんがそういってくれた。今日はリナちゃんのおかげで頑張れそう!
「はあ〜、やっと学校終わったよぉ。ほんとに長すぎぃ」
「それなぁ。…ま、もう学校終わったし今日金曜日じゃん? 遊びいかね?」
学校が終わり、放課後になったところで友人から声をかけられた。
「あーごめん、無理だわ。また今度にしてよ」
「また例のリナちゃん? ほんとに好きだよねー。ね、こんど会わせてよ。うちカナがこないなら帰るわ。一緒に帰ろ」
「いいよー、帰ろ帰ろ」
二人で教室を出て帰路につく。彼女はリナちゃんの話を聞いてくれる人だ。だから仲良くしている。
「それでね、今日のリナちゃんは一味違ったんだよ」
「え、なになに」
「今日のリナちゃんはね、私に『いってらっしゃい』って言ってくれたの!」
「え?」
私がそういった瞬間、彼女の顔色が変わった。悪い方に。
「え、勘違いだったら悪いんだけどさ…、あんたの言ってるリナちゃんってさ、」
「あ、もう私の家じゃん! あ、ごめん。遮っちゃった…。なんて言ったの?」
家につき、もうすぐリナちゃんに会えることが嬉しくてつい彼女の言葉を遮ってしまった。
「あ、ううん。なんでもない。…じゃあね。また月曜日」
「? うん。じゃーね」
彼女の様子が少し変だった。顔には困惑と少しの恐怖があるように見えた。
まあ、いっか! そんなことより、早くリナちゃんのところに行かなくちゃ!
「ただいまぁ!」
「はい、おかえりなさい」
珍しく母親が家にいた。
「…なんでいるの?」
「なんでって…、いたらいけない理由なんてあるの? ここはあなただけの家じゃないのよ。それにやらなくちゃいけないこともあったし」
「やらなくちゃいけないこと…?」
なんだか胸騒ぎがした。急いで部屋に行かないと。
ダッダッダッダッ
母親がなにか言っていた気がしたけれど、そんなものを気にしている余裕はなかった。
ガチャッ
「…ない。リナちゃんが、…ない」
私の部屋に、リナちゃんはいなかった。
「嘘、嘘、うそ、ウソ、ウソ」
部屋を必死ですみずみまで探す。
「どうして…? まさか!」
母親が捨てた。という考察が頭の中に生まれた瞬間、母親は私の部屋にやってきた。
「なにしているの、騒がしい…。ああ、あれのこと? あれを探していたのね? あれなら捨てたわよ」
「は…?」
頭が、真っ白になった。なにも考えられない。捨て、た? リナちゃんを…? ステ、タ?
「あなたがいつまでもあんなのに執着しているから、しょうがないことなのよ。高校生にもなっても必死にあれに話しかけて、いい加減大人になりなさい。いい切り替えになるでしょ?」
なにを、言って、るの?
「なに、言って、」
「大体、不気味なのよ、あなた。小さい頃はまだよかったし、いつかなくなると思ってたのに…」
「だって、リナちゃんは…。生きてるでしょ?」
「なに言ってるの? あなた。…はあ、やっぱりあんなもの与えるべきじゃなかった。だからあれほど止めたのに…。あんな不気味な人形をあなたに渡すのを」
ぬい、ぐるみ?
違う、違う、違う違う違う違う!
「違う! リナちゃんはぬいぐるみなんかじゃない! おかしいよ!」
そうだよ、じゃああの悲しそうな顔は? いってらっしゃいって言ってくれたあの言葉はなんだったの?
「おかしいのはあなたよ! いつもいつも一日中あの気味の悪い人形に話しかけて、挙げ句の果にはあのぬいぐるみは生きているですって!? 冗談はいい加減にしてちょうだい!」
なんで? どうして?
「どうして? なんでそんなこと言うの? リナちゃんは生きてるんだよ? いい加減にするのはそっちの方、だよ?」
「目を覚まして! あなた、どうしてこんな風のなってしまったの?」
私が、おかしかったの?
_それは違うよ。_
そうだよね、リナちゃん。
_そうだよ。ねえ、リナのことカナチャンは捨てないよね?_
「うん。もちろんだよ、リナちゃん」
「何、急に」
「あは、あははははは」
リナちゃん、リナちゃん。私のリナちゃん。私の、私だけのお友達。
ほら、やっぱりそうだ。私はおかしくなんてなってないの。おかしいのはあいつだ。
「カナ!」
「うるさい!! 黙れ!」
ああ、もう邪魔しないでよ!
_大丈夫だよ、カナチャン_
ああ、リナちゃん。私のかわいい、かわいいお友達。
誰もわかってくれなくても、リナちゃんだけはわかってくれる。リナちゃんだけが、私の全てをわかってくれる。私の、私だけの特別な存在。
リナちゃんのいない世界にいる意味なんてないよ。
だから、ずっと一緒にいようね、リナちゃん。
私はただ、私のそばにいてくれる人が欲しかっただけなのに。
特別な存在
だれもがみんな特別な存在
だれもがみんな愛されるべき存在
ーーーーー🌙ーーーーー
パジャマに着替えて、電気を消して
ベッドに潜って、クッションを抱いて
目を瞑り集中する
脳裏に浮かび上がる
私の、特別な人
身体は温かいのだろうか
どんな匂いかするのだろうか
寝つきはいい方だろうか
早起きは、苦手かもしれないな
どんなに想っても
どれだけ願っても
指一本触れることさえできないあの人は
私の、特別な人
人には
特別な存在がいます
親だったり恋人だったり
動物だったり
人が
特別だと思うのは
人それぞれです
自分だけがそう思っていればいい
相手にもそう思わせようとするから人間関係がおかしくなる
――二人いればできないことなんてない。
いや、こう言える存在が私にも本当に欲しい。
……改めて思ったけど、特別って何なんだろうな。
なんて考えながら、打っている今。
凡人な私が考えたところで、答えなんて出てくるわけないのにねー。
〜特別な存在〜
#特別な存在
勇気を出して
弱みや、隠し事や、心の内をLINEする
スマホが震える
勇気を出して
あなたの返信通知を開く
よかった
まだ、あなたとこれからも一緒にいられる
自分を本当に理解してくれる人なんて
どこにもいない。
今は…
人人人人人人人人人人人人人人人人
< >
< ヴ ェ ル タ ー ス オ リ ジ ナ ル >
< >
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#特別な存在
声が聞きたい、隣にいたい、自分の腕の中にいてほしい。そんなことばかり考えていたのに、今となっては、ただ穏やかに優しい時間を過ごしていてほしいと思うようになった。少し寂しいと思うことももちろんあるのだけれど、その距離感が心地良くも思えてくる。
心の大部分を占めていたのに、歳を重ねるごとにその面積は狭くなっていった。自信があったからこそそんな自分を薄情だと思う。でも、まだいる。心の中に小さくずっといる。今はそれが、特別な存在なんだと思えている。
とある日曜日の午後7時。
友人から飲みに誘われた。
その友人とは昔からの付き合いで私も暇していたので誘いにのった。
焼肉屋につくとさっそく
「最近よー嫁がずっとイライラしててよー。」
と奥さんについて愚痴りだした。
しばらく愚痴っているとだんだん酒もまわっていき最終的には惚気話になっていた。
正直羨ましかった。
特定の人がいない私にとって友人と奥さんの話は胸に刺さった。
街ゆく人々を見ていると様々な人がいることに気づかされる。
お昼で忙しいカフェの店員。
死にそうな顔をして歩いているサラリーマン。
子供を泣き止ませようと頑張る母。
駅のホームで寝ている人。
少しだけホッとしてしまった。
私にとってあの子は唯一だっけど、
あの子にとって私はその他大勢の中の一人だった
人に心を開くことが下手な私は
頑張って友達を作る度に思い知らされた
いつしか相手の顔色ばかり窺うようになって
周りが求める答えと態度を探すことに必死になって
それが上手に出来なかったときは酷く落ち込んだ
ある時疲れはてて、ついに一切の交流を絶ったことがある
そこまでして気がついたのは、
結局人は、人に依ってしか生きられないということ
今でも人付き合いは苦手
うわべの綺麗な顔しか見せられない
そんな私でも、いつか
誰かにとっての特別な存在になりたい
▼特別な存在
【特別な存在】
昔々、遠い昔。“円の神”が世界を全部丸く混ぜ合わせて、水を混ぜるように空をぐるぐる混ぜ合わせ、真ん中にできた渦を大地にし、回り続けるもの空にしました。少し寒くなった“円の神”は、手を擦り合わせて暖かくしました。すると、手と手の間から火が起きて、これもまたぐるぐる混ぜられて太陽になりました。暖かくなったので、今度は雲を呼び寄せて雨を降らせました。大地は潤い、たくさんの泥ができました。“円の神”はその泥の中を歩きました。泥は足で踏まれて盛り上がり、山と谷ができました。やがて苔生して草地となり、次第に大きな木を生みました。木の中に入り込んだ泥は虫となりました。“円の神”が泥を手ですくうと、泥は下に落ちました。落ちる途中で、泥は鳥になりました。落ちて低く積もった泥は、獣になりました。“円の神”はまた雲を呼び寄せ、手や足を洗いました。それらは踏んで盛り上がった泥を削っていき、川になりました。川になった水は低いところに集まって、海になりました。そして、川の中で手を洗ったときに、手から浮かんだ泥が魚になりました。海の中で足を洗ったとき、足から離れた泥が魚になりました。“円の神”はそうしてから、まだ濡れた泥があるところに息を吹きかけました。すると、強い息は風になり、風が立たせた泥たちは、人間になりました。そして、“円の神”があくびをして涙を落としたところに、ポツポツ生まれたのが、その他の神様達でした。
今はもうできないこと、まだこの世に神様と人間が会話できた頃のこと。“走る神”と呼ばれる若い神様がいました。目が覚めるなり走り出して、太陽を大地の端から端へと運ぶのが役割でした。“走る神”は両親である“風の神”と“雨の神”に太陽の世話を任されていたので、それを誇りに思って毎日毎日運びました。
ある日、“走る神”は人間の女の子に出会いました。運んで運んでいる時に、「いつもありがとう、おかげでとっても暖かいわ」と微笑みかけてくれたのです。
「そうかい、暖かいかい」
「ええ、沢山の花と沢山のお魚も穫れて、暖かいって素敵なのよ」
女の子は他にもいましたが、最初に話しかけてくれた女の子は特別でした。お話をしていないときでも、“走る神”の祭壇に祈り、花を捧げてくれました。
“走る神”は嬉しくなって、太陽をゆっくり運んで、女の子のことをずっと眺めていました。けれど、太陽は火なので、森や川が熱くなりました。そうすると皆喉が渇いてしまって、「暑い、暑い」と言いました。“走る神”の両親は二人でぐるぐる走って、大地と太陽の間に分厚い雲を敷きました。そして、“走る神”にこう言いました。
「お前が決まった速度で走らないと、大地が太陽に燃やされてしまうよ」
「太陽は夜眠るまで燃え続けているのだから、ちゃんとしなければならないの」
“走る神”は驚きました。自分では熱くもなんともなかったのです。地上を覗いて見ると、風と水が与えてくれた優しい涼しさに、あの女の子も喜んでいました。“走る神”は後悔して、また同じ速度で太陽を運びました。
女の子は毎日毎日、“走る神”に微笑みました。“走る神”はそれが嬉しくて嬉しくて、毎日せっせと太陽を運びました。
ある日、“走る神”はこう思いました。
「太陽を早く運んでしまえば、あの子とお話する時間ができるんじゃないか」
そうして“走る神”は太陽を手にするなり飛ぶように走って、大地の端へと運んでしまいました。すると、今度は太陽の火が行き届かなくなり、大地の上は冷えていきました。水は凍りつき、木々は凍った水に傷付いて葉を落とし、生き物達は身を寄せ合っていました。“走る神”の両親は驚きました。これでは二人がどんなにぐるぐる走っても、冷たい風と冷たい水が大地に落ちるばかりです。
「“走る神”よ、どうしてズルいことをしたのですか」
“水の神”に言われて、“走る神”は黙り込んでしまいました。
「我が息子よ、お前は二度、大地の生き物達を死なせてしまおうとした」
“風の神”は怒りました。
「何がそうさせたのか、正直に話しなさい」
“走る神”はしばらくもじもじしてから、大地の一点を指さしました。
「あの子が毎日お礼を言ってくれるのが嬉しくて、あの子とたくさんお話したかったんだ」
両親は顔を見合わせました。
「分かった、ではたくさん話せるように、あの子を空に上げることにしよう」
こうして、“走る神”を応援していた女の子は、空に召し上げられました。空には“円の神”が用意した神殿があり、そこで祈りを捧げることができました。そして、祈りの時間は太陽を運び終わったあと、夜にするよう定められました。それなら、“走る神”が仕事を終わってからお話できるからです。
けれども、“走る神”は「それならずっと夜がいいや」と、太陽を運ぶのをやめてしまいました。空はずっと暗く、女の子も大地のことを心配しました。
ついに“走る神”の両親は怒りました。
「お前のような怠け者は、殺してしまおう!」
しかし、そこに“円の神”が手を差し出しました。
「待て待て、お前たちの息子はこれまで随分頑張ったじゃないか。罰を与え、規則を守れば、許すとしよう。だが、次はないぞ」
“円の神”に言われて、両親は“走る神”に与える罰を決めました。
「一年のうち、半分は今までの速度で運び、半分の半分は大地を眺めていたときのようにゆっくり運び、半分の半分は早く仕事を終えられるように急ぎ足で運ぶ。女の子を眺めていたときのようにしなさい、自分が与えられた罰の意味を忘れないために」
「女の子は毎日お前に祈るでしょうが、お前と話せるのは神殿がすべての姿を見せている時だけです、あとの日は“円の神”が隠してしまうでしょう」
こうして、“走る神”は毎日毎日太陽を運びますが、その速度が定められ、空の神殿は月と呼ばれるものになりました。満月の夜に耳を澄ませれば、“走る神”がその女の子と話している声が、密やかに聴こえてくるかもしれません。
特別な存在
朝早く…もない午前10時半過ぎ頃。屋敷の2階から騒がしい音が聞こえ、思ったより早かったな、と男は己の主人の起床を知った。
きっと次は大声で自分を呼ぶだろうと容易に想像がつく。苛烈で鮮烈で凄烈な浅葱と焱の魔女が実は誰よりも寂しがり屋なことを男はちゃんと理解していた。
「すもも!すーもーもー!どこにいるのか返事なさいな!」
案の定聞こえた主の呼び声に「ここにいるよ」とキッチンから声をかける。すると直ぐにどたどたどたという階段を転げ落ちるような音と共に、ふわりと広がる金青の髪を踊らせながら浅葱と焱の魔女が飛び込んできた。
「すもも!お前、焱が起きるまで傍に居ないなんてどういう心算なのかしrむぐっ!」
「はい、おはようさん」
文句を言うために大きく開かれた口に1口大に切った出来たてのオムレットを突っ込んでやれば、行儀は悪くない焱の魔女は口の中が終わるまで一旦静かになる。そうしてごくんと飲み込んだ後に「おはよう、すもも。…お前ねぇ!」ときちんと挨拶を返してから、またも猫のように毛を逆立てた。
「そう怒りなさんな。あんたが言ったんだろ?昨日テレビを見ながら「このふわふわのオムレットが食べたいわ。近々朝食を取りにこの店に行くわよ」ってさ」
男、李の言葉を聞いた焱の魔女はぴたりと動きを止めて頭ふたつ以上上にある顔をじっと見つめた。
「…お前、焱が食べたいと言ったから、朝からそれを拵えていたの」
「あー、まあ。予想より俺の魔女サマが起きる方がちょっとばかし早かったから、こいつを持って起こしに行ってやれなかったけどな」
傍を離れて悪かったよ、と少し決まり悪そうに視線を逸らして頬を掻く李に、焱の魔女の乙女回路はギュルンギュルンすごい勢いで刺激されまくった。
「お、お前というすももは、無駄に大きな図体に死んだような三白眼に堅気に見えないオールバックなんて最高に格好良い見た目しておいて…。そんな可愛い名前してそんな可愛いこと考えてそんないじらしい行動をするなんて焱をどうしたいのかしら。格好良くて可愛いなんて流石焱のすももね感服だわ。そこまで細やかに焱のことばかり考えているなんて見所しかないわね」
そのままつらつらと李の賛辞なのか自分の自画自賛なのか分からない言葉を並べ立て続ける焱の魔女を、李は慣れたように席に座らせて食事の邪魔にならないように髪を後ろでまとめてやる。この魔女は話始めると長いのだ。待っていたらせっかくの暖かい料理を食べさせてあげられなくなってしまう。
食卓にオムレットを並べながら
「容姿はそれ全く褒めてねーし、名前はあんたが付けたんだからな?俺の趣味100%じゃねーからな?」
と一応相槌という名の訂正を入れるのも忘れないが。
「まあとにかくすももは本当に焱が好きね。…まあ焱は顔も声も可愛いし頭は良くて天才だし好きになる要素しかない完全無欠の存在だもの、尽くしたくなる気持ちは分からんでもないわね、理解するわ。他の有象無象ならさておき、お前の気持ちはしっかり受け取るわありがとうすもも。美味しそうなオムレットね、いえ、先程の味見で美味しさは確認済みなのだけど。せっかくだから冷める前にいただくわ」
「あんたはいつも自信満々でいいなぁ」
李は向かいに腰掛けながら、焱の魔女のオムレットを少し引き寄せて口に入れやすいサイズに切っていく。
「焱が優れているのは事実だもの。過ぎた謙遜は対峙する相手にとっても失礼にあたるわ」
「へーへー。そんなもんかねぇ」
当然のように開いた口へとそのひとつを運べば「うん、美味しいわ」と焱の魔女は花のように微笑んだ。
その顔を見て1度納得したように頷いた李はカトラリーを取りやすいように魔女へと向けつつ自分の分のオムレットへ雑に噛み付いた。
「…生クリーム甘すぎたか?」
「いえ?ちょうど良いわよ、お前の狙い通り焱の好みど真ん中」
「ならいーや」
少し食べ進めたあたりで「でもなぁ…」と李が急に呟いた。
「何かしら?」
「いや、何度考えてもさ。確かにあんたは特別だけど」
李は話しながら魔女の唇の端についた生クリームを指で掬い、
「別にあんたの容姿も才能もなくたってあんたがあんたのまま焱であれば、俺はあんたが特別だなって」
思ったってだけ。とそれをぺろりと舐めた。
焱の魔女は一拍置いてからふぅー、と深めの息を吐き、全くうちのすももは末恐ろしいわねと内心天を仰ぐのだった。
「最高の殺し文句ね、この発禁野郎すもも」
「なんで最後罵られた?」
一目惚れだとか
そんなんじゃないって
そう言いたいけれど
あの時確かに
君だけがきらきらして
目が離せなかったんだ
(特別な存在)
自分にとって、特別な存在。
それは───
“ 自分が変わるきっかけを作ってくれた人”
その人に出会ったから、
弱い自分から変わろうと思えた。
その人に出会ったから、
このままの自分ではいけないと思えた。
そんな人。
唯一、自分で考えて自分で行動できる
“ 特別な存在”
それは、《自分自身》
とても大切な、唯一無二の存在。
誰かと違うのが当たり前で誇らしい事。
いつか、誰かの
“特別な存在 ”
になれるように───。
己のつくりし幻覚に
まどはされて
まどはされて
嘘つきは
自身の嘘に惑はされぬように
誰より現を直視せなければならぬ
にげるな
にげるな
たちむかへ
青年よ
もういちど
機会をあたえる
たちむかへ
おきてたたかへ
それだけで世は満足
われわれの快楽
コロセウムの観客席から
われわれはみている
近所の会場で、前の推しがイベントをしてたという情報を知った。一昨日の話だった。
でも私は悔しいとも思わず、なんの感情も抱かなかった。
何とも思わなくなった自分に驚き、そして少し寂しくなった。
ハマっていた頃はイベントがあれば新幹線飛ばして、一目見たいと意気揚々と観に行って、ファンサ貰ってとても喜んでいたのにな。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
あのときは、私にとって特別な存在だったのにな。