『柔らかい雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雨。雨が降っている。大地を打ちつけるような強い雨じゃない。
大地に染み込むような優しい柔らかな雨が降っている。
全土を包み込むかのように柔らかでしっかりと染み込んでいる。そんな雨が降っている。
戦争の火種を消すかのように。作物を育てるように。
眠りへと誘うような、子守唄のような、雨が降っている。
傷ついた心を癒やすかのように。心に寄り添うかのように。
乾き切った土地を潤すかのように、雨が降り注いでいる。
後悔の冷たい雨じゃない。春の温かみを帯びた雨。それが降っている。
飛んでいる鳥を打ち落とすような強い雨じゃない。羽根を休めるための雨。そんな雨が降っている。
花たちを、草木たちを、喜ばせる。そんな雨が降っている。
昼の光の中で。夜の景色の中で。電灯の光に照らされながら、ただただ静かに降っている。
幻想の中にも、現実でも、夢の中でも、心の中でも、静かに雨が降っている。
やがて、雨は降り止んで、空に虹が架かるだろう。雨はそのために降っているのだからーー。
涙の味って、嬉し泣きと悔し泣きで違うんだって。
そんなことを話していると、ぽつぽつと雨が降ってきた。
とがってなくてどこか柔らかい雨。
泣いているけれど、きっといいことがあったんだね。
したいことは言えるのに
したくないことは言えなかった
してほしいことは言えるのに
してほしくないことは言えなかった
地元にある球場は天然芝が美しい。
晴れた日は空の青さと芝の緑、土の赤さ、ラインの白が様々なコントラストを作って目に楽しい。
試合前、グラウンドキーパーの男性がマウンドの後部に埋まっている水道にホースを繋いで土の部分に水を撒く。彼は手に取ったホースの先を絶妙な強さで押し潰し、赤土の上に順々に細やかな雨を降らせていく。
運がいいと小さな虹が見えることもあり、今日は勝てるかも、なんて思ったりするのだ。
働くひとのつくった柔らかな雨が、試合前に穏やかな気持ちをもたらしてくれる。
【柔らかい雨】
柔らかい雨が優しく包んでくれるから
安心して泣ける、のかもしれないですね
柔らかい雨が、空から降ってくる。
きつねのよめいりだあ。
さすがは、しずくちゃん、雨、外さないなぁ。
窓の外を見ながら、深雪はくすっと笑ってしまう。
「みーゆき、何見てんの」
後ろから声をかけられた。振り向くと、重い前髪にメガネ、そばかすがボーイッシュな魅力を醸している晴子がやってくる。
今日はベストに蝶ネクタイ、裾広なパンタロンといったよそ行きのおしゃれ。
「ほら、お天気なのに雨降ってきたの。これって、きつねのよめいりっていうんでしよう?」
「お、よく知ってるな、深雪」
えらいえらいと頭を掻いぐる。
に、してもと苦い顔になって、
「さすがは雫だな。こんな日でもきっちり降らせるとはね」
「晴れ女の晴子ちゃんが来てるのにね」
「ばーか、あたしが来てるからこれぐらいの雨で済んでるんだよ。来てなきゃ土砂降りだ」
断言する。深雪はへえええと感心した様子。
「さあ、そろそろ行こう。深雪、今日大役あるんだろ」
「うん、もードッキドキだよ! 晴ちゃん、深雪おかしくない? 髪、きれい?」
「大丈夫! 美容室でセットしてもらったんだろ? お姫様みたいにかわいいよ」
「えへへー」
手放しで褒められて深雪は喜ぶ。
しずくちゃんのお友達だっていう晴ちゃんをしようかいされてから、仲良くしてるけど。今日はほんとに心強い。
深雪は晴子に言った。
「じゃあ、行ってくる。見ててね、ちゃんとおつとめ、するからね」
「おー、行っといで。席から見てるよん」
ひらひらと晴ちゃんは手を振って、式場へ向かった。
ようし!
深雪は花嫁さんのヒカエシツに向かう。そこには真っ白なウエディングドレスを身に付けたしずくちゃんが待っているんだ。
うちのパパと、並んでバージンロードっていう赤いじゆうたんを敷いたところを一緒に歩いていく。そうして結婚式が始まるんだって。
深雪は二人のあいだで手をつないで一緒に歩くの。パパとしずくちゃんのたっての希望でね。
ドキドキするなぁ。たくさんのお客さんで、式場ザワザワしてる。
「しずくちゃーん、そろそろ行くよ?」
ヒカエシツのドアを開けると、そこにそれはそれはきれいな花嫁さんがいた。
「深雪ちゃん」
夢みたいに美しいしずくちゃんは、にっこりと笑った。
「時間ね。パパは?」
「もうドアの前で準備してる。めちゃくちゃ緊張してるよ」
「私もドキドキして心臓が破けそう」
「大丈夫、深雪がついてるよ」
「ありがとう」
美しい笑顔を見せるしずくちゃんーー今日、深雪のママになる人に、あのね、と深雪はヒソヒソ話を教えてあげた。
しずくちゃんはアメフラシでいつも大雨を降らせるけど、今日は特にパパが大雨だよ。男なのに、おじさんなのにきっと大泣きしちゃうよ嬉しくて。
そう言って深雪は、花嫁さんの手をきゅっと握った。
#通り雨 完
「柔らかな雨」
ご愛読ありがとうございました。
柔らかい雨
私の心を癒してくれる
無条件に
そして包んでくれる
優しく
私の全てを浄化してくれる
偏頭痛持ちの俺から言えることは
柔らかい雨が降った時は
偏頭痛の痛みは ちょっとピリ辛のように襲ってくる
胸の中に
柔らかい雨が降る
こわばった心が
ほぐれて
ほどけてゆく
………柔らかい雨
柔らかい雨は
私を慰めてくれるから
柔らかい日差しは
私を微笑ませてくれるから
なのに柔らかいあなたの笑顔は
私を誘惑させてしまう
仕事で褒められた時。
仕事が早く終わって帰れる時。
彼女とお出かけする時。
出先で彼女とバカ言って笑いあってる時。
虹が見えた時。
そんな時に降る雨は柔らかい気がする。
「雨」
俺は雨が嫌いだ理由はいっぱいある
雨で髪型が決まらなかったり偏頭痛だったり
1番災厄なのは雨の日振られたことだ
だから俺は雨が嫌いだ
チャレンジ108(柔らかい雨)
最近は雨の降り方が激しい。肌に突き刺さるような、叩きつける雨だ。柔らかい雨は、3月か4月頃、芽吹き始めた木々の若葉に降る雨だろう。新しい命を育む、静かな雨だ。さらさらと若葉に注ぐ雨。やさしい雨の降る日は、おだやかな気持ちになる。
雨が降ったらいつも
傘をさすけれど
それが柔らかい雨だったら
濡れながらスキップで
帰るほうがきっと楽しい
しとしと
ついさっきから降り始めた雨
秋雨前線の影響だとかなんとか
ニュースキャスターが言っていたなぁ
傘をさして、
いつもの通りを歩く
雨が降ると、
同じ景色なのに
違うように感じる
声は無く
雨の音だけが聞こえる
目当ての店に入れば
しっとりとしたジャズが聞こえた
…喫茶店に入るのは
決まって雨の降った日だ
雨とコーヒーとジャズ
と、ふと聞こえた声
懐かしい思い出を
見つけた気がした
喫茶店で友達と話す
少女とも女性とも言い難い子
昔の私の様な子
彼女の様子は
昔の私と違って
満ち足りている様で…
雨だけが、柔らかく
私を許してくれる
帰りに傘はさせなそうだ
…雨に打たれて帰りたい
【柔らかい雨】
見上げれば空は灰色に染まりつつある。暗い雲に覆われた青空は、今の私の心模様と似ていた。どうしようもない出来事。感情。それらが心に雨を降らせる。それはもうどしゃ降りだ。ベンチに座り、あなたが通らないかと期待したけど、きっとあなたは会いたくないんだね。涙が零れそうになる顔を上げた。もうすぐ雨が降ってくる。思い出すのはあなたの優しい声。好きだと思った。真剣な眼差しにどきどきした。目が合うと嬉しくて思わず笑顔がこぼれた。会いたいです。そんな願いは降ってきた雨に欠き消された。
【柔らかい雨】
柔らかい…おだやかである。柔和である。
おだやかな雨とはなんだろう
霧雨(きりさめ)だろうか
慈雨(じう)だろうか
甘雨(かんう)だろうか
しかし、雨に対して柔らかいとは
どういうことなのだろう
雨はその人、その時の心情によっても
変わってしまうだろう
雨を見て
ただ雨が降っていると思う人もいるだろう
その雨に己の心情を表す人もいるだろう
その雨がその人にとってどう映るかなんて
その人にも分からない
ただ、その空がこぼしたその水に
君は何を思う
柔らかい雨がすぐ乾き、叩きつけるような雨はなかなか乾かず身体を冷やす。
優しい言葉より厳しい言葉が、人を刺し記憶に残るように。
【柔らかい雨】
「柔らかい雨」
どっちを選べば、明るい未来が待ってる?
そんなことを迷っている暇なんて無い。
全て諦めて自分の首をはねろ。
どっちにも明るい未来なんてないさ。
地獄は良いところだといいね。
【#110】
「柔らかい雨」
みぞおちに落ちた塊の
行方も知らないうろこ雲
葉越しの空に探しては
代わる代わるの雨雫