『手ぶくろ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
これからの冬風景
時間が許す夕どきを
君を思う時間は
スロープ上の100均
この季節の手袋
仕事終わりの君に
隠れながらも
見つけやすく
簡単にバレるように
上手に隠れて
いつか君が…
ここでクリスマスの夜に
僕を見つけたように
僕は君に似合う手袋を探して……
仕事帰りの君にバレるように
僕らふたりを……
『手ぶくろ』
冬の夜は、特に突き刺すような冷たさが痛い。心まで冷え込んで、凍りついて、おかしなことばかり考える。このまま誰にも知られずに消えたら、凍った私を探して助けてくれるひとはいるのかな、なんて。こんなことばかり考える私に優しい人なんていないってことくらい、わかりきっているのに。
「あ、ねえ。電車乗って帰る?」
後ろを向くと、寒さに顔を赤くして笑う彼がいた。静かに頷くと、一緒に帰ろうと言ってくれた。なんだ、きっとこのひとなら──あまり考えたくないことを考えた。彼の他愛もない話に耳を傾け、嫌なことを忘れられるように、少し大きめにリアクションをする。手が痺れるほど冷たくなっている。
「あ゙ーっさむ!!てか手寒くないの!?」
「いや、凍りそう」
「えちょっと触ってみてもいい?」
「うん、」
彼は手ぶくろを外して、私の手に触れた。すごく、すごく温かい。思わず涙が溢れそうなほどだった。人の温かさって、すごい。体も心も温める。あまりに素敵だ。
「冷たすぎ!もうおれの手ぶくろ貸すからこれつけてな」
「……いいの?ありがとう」
「いいよ。あ〜おれ優し〜〜」
彼の大きな手ぶくろに、私の手をはめた。あまりに大きくて、指先は行き場を失っている。余った部分が多いのだ。この何とも表現しきれない違和感。ぎこちなく自分の手をぎゅっと握る。そしてゆっくり開く。そして思う。きっとこれでは、温まることはないだろう。
ねえ、あなたの手で温めて、って言ってもいいかな。
はぁ…と白い空気を吐き、赤くなった指先を温める。
どれだけ温めても冷めて痛み始めてしまうのは、心を写しているからだろうか。
早く温まって欲しくて、痛みが消えて欲しくて手袋をはめても、まだ痛みは消えない。
子供のころは
雪が好きだった
雪で雪だるまを作ったり
小さなかまくらも作ったり
弟といっしょに
シャベルを操った
雪をさわると
毛糸の手ぶくろはすぐ濡れる
疲れると
ストーブの側で
手ぶくろと体を暖める
私達はすぐまた飛び出す
湯気がホカホカ出てる
まだ濡れた手ぶくろを
手にはめて
いつから着けなくなったのか。
思い出せない。
理由は明確なのにね。
┊︎手ぶくろ┊︎
【二学期の ええやんあんた そのままで】 20
「手ぶくろ」を反対から読んで
ろくぶて
六 ぶて
六回ぶたれたことありませんか?
「手ぶくろ」
手ぶくろよりも、人の手のほうが
温かく感じるのはなぜだろう。
誰かに手を握ってもらうと、温もりと
安心感を感じる。
小さい頃お母さんの手を握ると、不思議と
ぐっすり眠れた。
今は、少し寂しい。
手袋の片方をひっくりかえしてまん丸に
もう片方にかぶせて手袋人形の完成
去りゆく友に手を振れたり
手を組んでお辞儀できたりと礼儀正しい
但し頭を引っこ抜かれるとイソギンチャクエイリアン
あんま好きじゃないんだ。
君の体温を直接感じていたい。
手ぶくろ
かわいい手ぶくろを
あげよう。
お誕生日に。
あの日、マフラーで赤い顔を隠した彼がそっぽ向いたまま、プレゼントしてくれた手袋。
いつまで取っておくつもりだ。
捨てなければいけないのに。
この厄介なだけな感情も一緒に。
手袋に詰まった思い出が、心臓の真ん中につんとした色を落とす。まるで水槽のなかに入った絵の具の色がぶわっと広がるみたいに。
ぽたり、と落ちて手袋に染み込んだ涙とともに、タンスの奥のおくに押し戻す。
ああもう。はやく捨てたいのに。
なんでこんなにも捨てることができないんだよ。
─手ぶくろ─ #152
手ぶくろ #1
爪の先から肘まで2回、念入りに手洗いをする。
滅菌タオルで滅菌水を拭き上げて、滅菌手袋を二重に装着。
いざ、手術室へ。
大好きなあなたのために。
◆
2025/01/02
宮島看護師×佐々木小児科医 を思いついたので、#2として追加
手ぶくろ #2
自宅マンションの宅配ボックスを開けると、A3サイズの郵便物があった。
差出人は佐々木貴弘と記されていて、その字面を見ただけで私の胸は高鳴る。箱を大切に胸に抱えて部屋へ持ち込んだ。
今すぐ開封したいのをグッと堪えて、コートを脱いで手洗いやうがいをする。看護師という職業と冬という季節柄、感染予防は必須。と言いつつ、初めて佐々木先生からの郵便物にテンションが上がって、開封を優先しそうになったけれど。
先生がうちの総合病院を辞めて、地元の長野県へ帰ったのは先月のこと。先生はそこで小児科のクリニックを開業するための準備をしている。
私は先生から告白をされていて…いつの間にか、私も大好きになっていた。私からの告白は、機会を逃してしていない。
まだ先生が東京にいるときに、「先生と離れるのは寂しい」と泣いたことがある。「僕も寂しい」と抱きしめられ、「想い出を作ろうか」と優しく触れるだけのキスをされた。
---先生、想い出に残りすぎてます。感触も、眼差しも、声音も何もかもが私の胸を締め付けます。
先生と繋げたラインを開く。
新しいメッセージはなく、郵便物について何も書かれていない。
外箱を開封すると、綺麗にラッピングされた箱が入っていた。
中には、スモーキーピンクの手袋。手首の同色のファーが可愛い。小さなストーンが控えめに散りばめられて、光の屈折でキラキラと輝く。柔らかな風合いの上質な手触りで丁寧な縫製が、直感的に高価な物だと予測できた。
雪景色のイラストが可愛いメッセージカードが添えられている。
『宮島さんに似合いそうな手袋を見つけて買ってしまいました。良かったら使ってくださいね』
先生らしいメッセージにクスッと笑みが溢れる。『似合いそう』だから『買ってしまった』と伝えてくれる先生の素直さを可愛いと思う。
「逢いたいな」
この手袋を着けて、東京でも長野でも。
手袋を嵌めてみる。嵌めたままでもスマホが操作できる加工が施してあって実用的。女性用に作られた細身の手袋は指先が動かしやすいし、軽くてとても温かい。カシミヤだ。それも高価な。
デザインの可愛さ以上に日本製の価値のある商品なのだろう。
高価な商品のこの手袋を身に着けていて変ではない女性になりたい。それがきっと、佐々木先生の隣に並んで相応しい女性だと思うから。
願わくば、先生が想像した通りにこの手袋が私に似合っていると思ってくれると良いな。そしたら告白する勇気も湧いてくるから。
ラインに文字を打ち込む。
『手袋が届きました。ありがとうございます!
とても可愛くて、温かくて、素敵な手袋で気に入りました。』
この手袋をはめて、先生に逢いたいです、…って書いても良い?と一瞬躊躇して、書くことに決めた。
先生は、私の考えていることを知りたいときっと願ってくれているから。私が逢いたいなら、先生も逢いたいと思ってくれていると信じられるから。
『この手袋をはめて、先生に逢いたいです』
手ぶくろ #2
『手ぶくろ』
冬に強い私のオトモ
寒さから守ってくれる
私と共に動いてくれる
私たちはフルシンクロ
寒さにとっても強いけど
時々滑るおっちょこちょい
中には滑りに
とっても強い子いるけれど
私の相棒
たまに時々おっちょこちょい
だけどこの子もちょい寒がり
だから先にあったまる
この子が先に
ストーブまえで あったまる
〜シロツメ ナナシ〜
手ぶくろのように、
ほんわかと、
誰かの心を少しでも暖かくしてあげれるような、
そんな存在になれたらいいのにな。
人にやさしく。
自分にもやさしく。
やさしいってどうしたらいいんだろう。なんかむずかしいな
(。ŏ﹏ŏ)
手ぶくろ
私は毎晩ハンドクリームを塗って、
手袋をして寝る。
冬になると手がカサカサになって仕方ない。
おすすめされたなんちゃらってやつ使ってる。
「手ぶくろより俺の方があったかいに決まってる」と言い切った君。
だから今日からは君の手が、手ぶくろの代わり。
今さら取り消そうとしてもダメだよ。
これから毎日手を繋ぎにいくから。
【手ぶくろ】
また喧嘩して、めんどくさい人は私で
めんどくさがり屋はあなたで、
それでもあなたは
自分の性格はこれからも変わらないって言って
それが嬉しいようで悲しいようで
やっぱり私はめんどくさい人なんだと思う
でもね、
あなたが失くしたって言ってた
私があげた、てぶくろ。
つけてきて照れくさそうに、あった
って言ってくれた時、
私たちがどれだけすれ違っても
そのてぶくろがつなぎ止めてくれる
気がする。
「てぶくろを買いに」という物語がある。子狐が狐だと悟られないように、山から街におりて手ぶくろを買いに行くというお話。絵柄の温かさやハッピーエンドで終わる物語に子供ながら心が温かくなった覚えがある。
大人になって手ぶくろをしなくなった。車のハンドルが握りづらかったり、スマホが操作できなかったりと理由をつければ沢山ある。しかしどうだろう、あの子狐のように手ぶくろを着けて笑顔になるのもいいかもしれない。
「手ぶくろ」
お揃いの手ぶくろを失くした時の君の焦り具合と。
踏まれない所に避けて置いてくれた人の優しさと。
“手ぶくろ”っていいよね。あったかくて、一人でも平気になれて、冷たい手をすぐあたためてくれるんだ。その手ぶくろを見るだけであったかくなれて。でも、心は手と反対に冷たくなって凍え始めちゃうんだ。
だってあっためてくれる人がいないから手ぶくろをはめるんだ。だからさ、ひどく孤独を感じちゃって。あぁ、寒い、冷たい、痛いよ、かじかんできちゃった。手は、ひどくあったかいのに。不思議だね。