あの日、マフラーで赤い顔を隠した彼がそっぽ向いたまま、プレゼントしてくれた手袋。
いつまで取っておくつもりだ。
捨てなければいけないのに。
この厄介なだけな感情も一緒に。
手袋に詰まった思い出が、心臓の真ん中につんとした色を落とす。まるで水槽のなかに入った絵の具の色がぶわっと広がるみたいに。
ぽたり、と落ちて手袋に染み込んだ涙とともに、タンスの奥のおくに押し戻す。
ああもう。はやく捨てたいのに。
なんでこんなにも捨てることができないんだよ。
─手ぶくろ─ #152
12/27/2024, 1:54:48 PM