『愛を注いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
朝にみそ汁を注いでくれたら
それを愛と呼んでいいんじゃない
あさり辺りを入れてくれてたらもう
そんなの愛どころじゃないね
え、あおさもいれてくれるの
じゃあもう愛とか言ってる場合じゃないね
王城の廊下を歩いていたメユールは、石畳の隙間に躓いて前のめりに倒れ込んだ。咄嗟に手をついたので、顔面から地面に突っ込むことは免れたが、掌を擦り剥いてしまった。大した傷ではないが、広範囲に擦り剥いたので、洗い物などをする際に沁みるだろう。ぼんやりと掌を見つめながら、彼女は大きな溜息をついた。
最近、気持ちがふわふわと浮き足立っている。地に足をつけなくてはと思ってはいるのに、なかなか浮遊感は収まらない。そのせいで、あちらにぶつかり、こちらに躓きと、ここのところ生傷が絶えない。
(……原因は、わかっているのだけれど)
ひと月前、彼女は彼にプロポーズされた。とても嬉しかったが、彼と自分では身分が違いすぎる。そう思って丁重にお断りしようと言葉を重ねたが、のらりくらりと躱されて、終いには押し切られそうになった。
口の巧さでは彼に敵わない。今、国内外共に混乱していることを理由に、時勢が落ち着いて平和になるまで返答を待ってほしいと、苦し紛れにメユールは懇願した。彼はそれを快諾した。それで落ち着くはずだったのだが、それから彼は目に見えて、メユールに構い始めたのだ。嬉しいけど恥ずかしくて身悶えしてしまう。彼の侍女であるメユールに、それから逃れる術はなかった。
遠くから、足音が聞こえた。彼女は急いで立ち上がった。埃などを掃って、身だしなみを整えると、先ほどのことなどなかったかのような顔をして、彼女は歩き出した。
明朗な足音はあっという間に迫ってきて、
「メユール!」
肩を叩かれる。彼女は驚いて、肩が跳ねそうになったのを堪えながら、ぎこちなく振り向いた。
「……ジルベール様。どうかなさいましたか?」
「いや、特に差し迫った用事があるわけではない」彼は快活に笑った。「お前を見かけたから、声をかけただけだ」
そうですか、と彼女は強張った笑みを浮かべた。
「お前に訊きたいことがあるのだが……」
「何でしょう」
彼は彼女の腕を掴むと立ち止まった。メユールも仕方なく立ち止まる。
「最近、傷が増えていないか?」
「ここのところ、その……上の空になってしまっていて」
しどろもどろになる彼女を見て、彼は眉を八の字にした。
「俺のせいか?」
「そ、それは違います!」間髪容れずに否定してから、メユールは俯いた。どんどんと顔に熱が集まってくるのがわかる。「嬉しいです、とても。でも……は、恥ずかしくて……」
彼は軽い笑い声を上げた。
「俺はお前を愛している。それは変わらない。仕方ないと、慣れてもらうしかないな!」
そう言うと、林檎のように顔を赤くした彼女を、彼は愛おしげに見つめるのだった。
欲しい。愛が欲しい。
君に優しくなんてできないけど、君に優しくされたい。
純然たる愛、油よりもどろどろのやつ。
甘やかして、ただ甘やかしてよ。
そうして白い息も灰色の町も、全部全部染め上げて。
嫌、やっぱり。やっぱりさ。
全て放って連れ出して、引き返せない位に。
痕が残るほどの力でこの手を引いて。
できたらそのまま私の首を絞めて。
お願いだよ君。どうか私に、愛を注いで。
【愛を注いで】
愛を注いで
朝から、何をするでもなくただボーッと虚空を見つめる。
起きたからにはベッドから出なきゃだとか、支度してご飯食べて、今日は事務所に行かなきゃならないなだとか、そんなことをグルグルと考える。
今日も生きている感じがして、自然と口からため息が漏れる。
愛を注いで
一人でいる時間はとても長く感じる
何故か寂しくなる
自分の心に隙間ができたみたい
誰か、私の心の隙間を埋めて
愛を注いで、
育てた小鳥。
だけど、家に帰ると居なくなっていた。
窓を閉め忘れていたらしい。
鳥の居ない籠を眺めて思う。
きっと私に餌を貰っていたから生きてはいけない。
死ぬ事と引き換えに手に入れた空を飛ぶ自由。
私の注いだ愛は多分自分のためだった。
植物に水を注ぐことも、ペットに愛を注ぐことも、恋人に愛を注いで、関係を維持することも。
たったそれだけのことが、私は出来ない。
私の心が枯れそうです
一人でいる時間が長すぎて
誰か傍に来て
誰か傍にいて
私だけを見て下さい──
(2023.12.13/愛を注いで)
ベランダの植物にお水をあげる時
愛と感謝をそそいでいる
愛を注いで#21
私はまだ恋を知らない。
どんな感情なのか。
異性を好きになる感覚って。
トキメキが足りないのかなんなのか全然恋心わからないんだよね。
そういえば亜紀ちゃんの最近の口癖は「私に愛注いでくれる人いないのかー!」なんだけど私からしたら亜紀ちゃんも注がないと注がれないのではないかなと思うんだよね。
この感覚は変なのかな?
そもそも愛を注ぐってなのなのよ。
愛を注いで
あなたは自分には何も出来ないといつも言うけれど…
それは私以外には姿が見えないからそう思っているのかもしれない
でもね…あなたがずっと側にいてくれたから…
私自身が、消えたいと強く願っていたときでも生きていられたんだよ
だから…
だから、何も出来ないなんて言わないで…
私があなたに気持ちを注ぐように…
あなたも私に愛という気持ちを注いでほしい
愛を注ぐ。
う~ん。なんで愛は液体に例えられるんだろう。
流動的だからか。時々の条件で動きは変わる。
固有の形がない。本質は変わらないのに
受け取る側によって全体像が歪められたりする。
サラッとしてたり、粘ってたり。揺れ動いたり。
身近な液体と言えば水だな。
アツアツなら気体になる。限りなく広がっていく。
冷えたら固体になる。カッチカチにかたくなる。
愛を液体に例えるのは結構面白いな。
探せばまだまだありそうだ。
愛は大量に注ぐと尽きるのも早いのかな?
そこはそれ、無尽蔵に湧いてくるのか?
愛を注ぐ。出なくなったら、尽きたか冷めたな。
(愛を注いで)
〚愛を注いで〛
新婚旅行中、
彼のキャリーケースの中身を見て驚い た
なんと着替えやお金が全く入っておら ず、その代わりに大量の愛が入ってい たのだ
「君にたくさん愛を注ごうと思って」 バカすぎる彼に腹が立った私は、キャ リーケースを無造作につかみ、大量の 愛を頭からかぶった
すると私の体は愛で満たされ、怒りも 鎮まった
それどころか、彼をもっと好きになっ てしまった
みんなに愛を注ぎましょう
その前に自分に愛を注ぎましょう
存在しないものを注ぐことは出来ない。
愛には色も形も質量すらも無い、観測不可能。
存在しないものを有り難がるのは人間の特権だろうか。
それとも、ありがた迷惑だろうか。
少なくとも私は迷惑。
テーマ「愛を注いで」
祖母が亡くなった。
亡くなる数日前から祖母の状態は伝わっていた。親戚や家族は頻繁に様子を見に行っていたらしいが、私は薄情な孫で、課題だなんだと言い訳をつけて見舞いにも行きはしなかった。
数年前から親戚の集まりに出向くのをやめ、学校を言い訳に通夜にさえ顔を出さなかった私は珍しいらしい。顔も曖昧な親戚一同への愛想笑いで頬が引き攣る。元々表情を作るのは苦手だ。
私は祖母の久方ぶりの孫で、可愛がられていた。らしい。そんな祖母の葬式だと言うのに、私は極めて冷静だった。冷めていたと言い換えてもいい。和気藹々とした親戚の会話に、私だけではないと安心していた。
控え室の隅に縮こまり、葬儀では間違っていたとしてもちっとも分からないお経を聞き流し、焼香中に腹痛で一通り苦しんだ後、祖母の亡骸に花を添えた。
美しいまま棺桶に横たわる彼女は正しく眠っているようで、箱いっぱいの花だけが、それが動かないものであるという印だった。
「会えるのはこれが最後だ」という進行役の言葉に、親戚一同が一斉に泣き出したのが印象的だった。その瞬間までしゃんとしていた祖父も、叔母も、従姉妹も泣いていた。この家に嫁入りした身である母までしゃくりあげていたのは予想外だった。
真っ赤になった弟の目に込み上げるものはあったけれど、天邪鬼な私は、恐らく終始微妙な顔をしていただろう。感情をさらけ出せるほど素直でも、完璧に取り繕えるほど大人でもなかった。
けれど、不思議なものだと思う。祖母は既に死んでいるのに、皆は祖母を惜しがるように棺を囲んだ。意識どころか命もない祖母を囲んで涙を流すのは、少し奇妙に見えた。
一連の流れを終えた今、葬式は、私たち遺されたもののためにする行為なのではないかと思う。お別れを告げて、私たちの精一杯で送り出し、天国で幸せになっただろう、なんて妄想を垂れる。遺された私たちに与えられた、故人を偲ぶための時間。
だからきっと、彼女を慕う子や孫が涙を流す光景は、彼女が注いだ愛の結果そのものなのだ。
私はやはり場違いな気がしながら、骨になった彼女に確かに与えられた愛を数えた。
自信がなくて顔を見せられなかった。可愛がってもらったから失望されたくなかった。
お見舞いくらい行っておけばよかった。ごめんね。
『愛を注いで』
知ってる?
わたしはあなたが大好きなの。
あなたはわたしが大好きなの?
大好きなら、
どうして一人にするの?
どうして無視するの?
あなたはいつも「大好きだよ」って言ってくれるけれど
大好きなら、
言わなくてもいいから
行動で示してほしいな。
#愛を注いで
「愛させて欲しかった。」
身勝手だろうか?
ただ信じて欲しかったんだと思う
産まれたくて産まれたわけじゃない
世界で私が生きることを望んだのは私じゃない
これも身勝手で我儘なんだろうか?
何年も2人が望むままに私は生きた
少し足を引っ掛けて転んだ私を
見る2人の目は冷たかった
これが愛と呼ばれてたまるもんか
これを愛だと信じれない
私は普通とやらにはなれなかったみたい
2人が愛だと呼ぶそれは
私の体も心も酷く痛めつける毒でしかなかった
愛として受け取れない
私は世界ではどうやら異端者らしい
どうして愛させてくれなかったんだと
訴えかける勇気もない
私は今日も2人の愛とやらを
塗り潰して飲み込んだ。
私の世界の終わりを望む今日の私より
ホームセンターで枯れた木を買った。自分の腰くらいの高さで、葉は1枚もついていない。ひょろ長く伸びた枝なのか幹なのか分からないのが1本立っているだけ。枯れてるのに値段がついてるなんてびっくりした。店の端の、もっと隅っこに邪魔に置かれてて、何故か分からないけど目にとまったんだ。だから、35円ならいっかって、軽い気持ちで購入したわけ。早速、家に帰って庭の1角に植えてやった。ホームセンターの隅っこより、ここのほうが広いし日当たりもいいだろう。
「きっとお前はお爺ちゃんだな。余生をのんびりここで過ごせよ」
僕はぼそぼそ小さい声で言った。木に話しかけてる現場をお隣さんに見られでもしたら変な噂がたちかねない。
そして次の日。すぐには事態が飲み込めなかった。朝起きて太陽の光を浴びるという、いつもの朝の日課をしようと窓を開けると、ピンク色した花びらが舞い込んできた。1枚だけじゃない。花吹雪のように次から次へと降ってくる。顔だけ窓から出すとありえない光景が広がっていた。うちの庭に桜が咲いている。
「なんで……」
庭の1角にそこまで大きくはない桜の樹が植わっていて、さっき舞い込んできた花びらはそこからのものだった。どういうこと?ここは僕んちだよな?一体いつ桜なんて植えたんだ僕は。そもそも、こんな時期に桜は咲かないぞ。ちょっと警戒しながら近づくと、周辺に土を掘り起こした跡が見られた。
「あっ」
そうだ、思い出した。昨日ここに枯れ木を植えたんだった。だが今あるのは立派な桜の樹。
「まさか……お前、桜だったのか?」
木に話しかけたところで答えは返ってくるわけがなく。僕はじっと、その桃色の花を見つめる。風がふわりと吹いて花がさわさわと揺れた。まるで踊ってるかのように。そうだよ、と、言っているように見えた。
「悪かったな、爺さん扱いして」
僕は水を汲んだジョウロを持ってきて、たっぷりと桜に与えてやった。太陽と水と風を受けて、その樹がまたひと回り大きくなった気がした。いや、錯覚じゃない。本当に大きくなっている。嘘だろ。こんな簡単に木って伸びるものなのか。
「まるで生き物みたいだ」
実際、それは間違っちゃいないんだけど。いったいどこまで成長するんだろうか。楽しみなような怖いような不思議な気持ちを抱えながらこの元気な樹を見上げる。もう既に、僕の背を越しているのだった。
「つ、疲れた…。」
私は疲労を抱えながら椅子にもたれかかる。
つい先週。魔術師である自分の住処の谷に痩せっぽちの子供がやってきた。そのボロボロの身なりを見て、子供が親のいない孤児とすぐに分かった。
ちょうど、自分の魔術の知識を誰かに受け継がせたくて弟子をとろうか考えていた所だったので、その子を拾った。
こうして弟子としてその子を拾ったが、今若干後悔しかけてる。
孤児として当たり前のことだが、この子は読み書きができないことは想定していた。
まさかこの子が犬みたいに皿に顔を突っ込んで食事したり、目を離した瞬間全身泥まみれになるほど遊び回る跳ねっ返りとは思わなかった。
もう魔術の勉強をさせるより先に、行儀作法の指導と汚れたこの子の衣服の洗濯を優先せざる他なかった。
「ねぇっ。これあげる!。」
件の弟子がまた服を泥まみれにして私の膝の上に飛びのった。差し出した手には可愛らしい野花が握られていた。
「はぁまた、服を汚して…。」
ため息をつくも、弟子の笑顔に思わず苦笑してしまった。
《愛を注いで》