『子供のままで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
自分のタネに 水を与えてくれる人がいる
自分の芽を 大切にしてくれる人がいる
自分の蕾を 見守ってくれる人がいる
やがて 自分で花を 咲かせなければいけない時が来る
強く根を張り 美しく
どんな花より 綺麗な色で
※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン
俺のこころの玩具箱の中に、しまってある景色があった。
くちゅん。狭い洞窟に、ひとの発した息の音が響き渡って、白い息が煙となって立ち昇った。
緩い青色の光が零れる外の景色は、はらはらと雪が降りはじめており、辺りは急に温度を失い始めていた。
幼いマクワは分厚いハンカチを取り出して、顔を拭う。
「……今日は一緒に外へ行こうと思ってました。……でもこの天気では危険だから……やめておきましょう。ぼくも勉強のつづきをすることにします」
ため息交じりの言葉は、その優しい色をしたタオルハンカチに半分ほど吸われていた。
ああいうもこもこした素材はタオルというものらしい。
マクワはよく母親の話をする。彼女から譲られたものかもしれないと、なんとなしに思った。
俺は車輪を動かして、マクワに近寄った。少しだけ頭を傾けると、しっかりしたズボンの布地に触れた。身体の奥の方に力を入れてやると、ほんのりと湯気が上がった。
丸くて青い、澄んだ硝子のような目がぱちぱちと瞬きしながら俺を見下ろす。それからその場にしゃがみ込むと、俺の上に手を乗せた。
「……温かい」
ほんの少しだけ和らいだ表情を、もう少しだけ、発熱する力に変えてみせたのだった。
◆
ぱち、と音が響き、それから少しの時間差で蛍光灯の光が瞬いた。年季の入った電灯は、しばらくその灯りを揺らがせながら、埃の被った棚や機材を照らし出した。
俺にはよくわからないが、よく人間が家の中に入れているはずのものだ。しかししばらく使われていないことは、積もったものの分厚さでよくよくわかった。
マクワは持ち上げた髪を震わせながら小さく咳き込んでいた。
「……当たり前ですが埃が凄いですね、この倉庫の中……。早く用事を済ませてしまいますね」
「シュポー」
殆ど隙間みたいな家具と家具の間をマクワは歩いていく。ここはキルクスにある、メロンさんの家の庭に建てられた物置小屋の中だった。
マクワが半分飛び出すようにしてこの家を出て来てしまった矢先、いくつか忘れ物があるのだという。
メロンさんが仕事で顔を合わせない内に、探したいものが何やらあるらしい。
マクワは俺が通れるように道を作りながら隅まで進むと、天井まで積まれたプラスチックの箱の前に立った。
「セキタンザン、申し訳ないですがぼくの足場になってくれませんか」
「ボオ!」
俺はすぐに両手を差し出した。その為に呼ばれたのかと思うとちょっとだけつまらないような気もしたが、それよりもマクワの探し物の方が気になった。
彼は礼を告げると俺の両腕に足を掛け、両足で立つ。俺はゆっくりとマクワを持ち上げて、その高い箱に手が届く様にしてやった。
「……ああ、この一番上の箱です、間違いありません」
マクワがプラスチックボックスを両手で抱えるのを確認すると、再び彼を床の上に降ろしてやる。分厚くて大きな埃がぱらぱらと舞っていた。
箱を近くの棚の上に降ろし、白い手が両脇の留め具を外し、中を開いた。そこにはたっぷりの紙を挟み込んだ冊子がぎっちり詰まっていた。かつて使っていた勉強の道具だろうか。
マクワは更にその本の山を取り出して箱の横に並べていく。
「……あった。ジムリーダーになった今……改めて読みたいと思っていたのです。母が書いて発行した本をぼくにくれたものと……リーグの記録本です」
しっかりした表紙が美しい本と、もう一つはずいぶんと太くて大きな本だった。
「それと……これ」
本たちの山の奥に、ひっそりと隠れていたのは、ヨクバリスが描かれた小さな玩具の缶のケースだった。見た目よりも重たそうで、しかし時折中の物がぶつかるのか、小気味のいい音が聞こえてくる。
マクワが爪を引っかけて力を入れると、擦れるような音を立てて開いた。土のような香りが漂う。缶を傾けると、中に入っているのはたくさんの石だった。
全て黒だったり、昏くて重たい色をしたものばかりだ。
「……きみが喜びそうだと思って拾ったのですが、よく調べてみたらあまり使われない成分のものばかりで……でも捨てるに捨てられずにぼくのコレクションになってしまった石ころたちです」
「シュポォ」
「……どうですか、ぼくにも一応……ずっといわタイプでありたい気持ちがあったのですよ」
それは俺が誰より身をもって知っていると思っている。他のポケモンを育てている癖に、俺をボールの中に入れたのはマクワだった。
「幼い子供の……密かな抵抗でしょうか。……でももうこれは不要になりましたので、捨ててしまおうかと」
マクワは再び缶に蓋を付けた。そして目当てのもの以外を全て箱の中に仕舞うと、同じように元の位置に戻してしまった。もちろん手伝ったのは俺だった。
荷物を抱えて倉庫の外に出ると、ガラガラとシャッターを下ろした。
キルクスの柔らかい陽射しが降りてきて、マクワはサングラスを付け、光を反射させた。ちかちかした明かりが直接目に入って、思わず瞬きをした。
「子供のままだったら……きみとはこうして一緒に居られなかったでしょうね。ひょっとしたらタンドンのままだったかも……」
「シュポオー」
「……ぼくはずっと大人になりました」
サングラスを抑えて、マクワは家の裏へと歩いていく。そして敷地から出ると、林の中に入り、砂利の多い場所に立った。そして缶の中の石をばらばらと撒いてしまった。
一か所に固まらないようにという配慮なのか、ひとの白い足で散らしてゆく。
「……シュポォ」
「これでよし。……それではこのまま退散しましょう、いつ帰って来るかわからな……くちゅん!」
マクワが盛大にくしゃみをした。埃っぽい所にいたせいなのか、それとも。
「……なんですかその眼」
「シュ ポォー!」
俺は笑って鳴き声を上げた。俺のこころの箱の中から取り出したのはあの洞窟で見せた、くしゃみの仕方だけではない。
何かあると母親を避けてしまう所も、ずっとずっと変わっていない。
俺だけが知っている、バディの変わらない姿だ。気が付けば、もうあの捨てた石たちに対する気持ちは遠ざかっていた。
俺のバディはたくさん戦う術を身に着けて、誰より早く大人になってしまった。なろうとした。だけれど、だからこそ。まだ子供のままであり続けているもの。
俺のこころの玩具箱の中に、そうっとしまい込んでいく。
小さい頃、賢く綺麗な大人に憧れた。
早く大人になりたいな。
今はもう高校3年生になって、今まで感じてなかった危機感、それと憂鬱が覆う、
甘えることは、許されないような気がして
体に追いついてない僕の心が周りにどうも浮いて見えて
もう少ししかない子供の時間。
子供のままでいられたらなんて背伸びしてみる
君を好きになってから
学校にいくのが楽しみに変わった
話せた日は、胸が高鳴って
目があった日は、自惚れて
偶然手が触れた日は、夜眠れなくなって
ちょっとした出来事が
私にとっての大事件
このドキドキがいつか
無くなってしまうなら
ずっと子供のままでいたい
【子供のままで】
子供のままで
大人になっても子供のような人がいる。大人は服装から違う。大人は働いているので服装にお金を使う。話し方も敬語を使い分け落ち着いて話す。1日の使い方も無駄のないように心掛けている。社会性があるのでハメを外すこともない。お金の無い人は服装がみすぼらしい。食べて行くのが精一杯だ。少しのお金が残れば趣味に費やす。それでもお金を稼ぐためにスキルアップには関心がある。大人になりたいと思うが、仕事はそう簡単には見つからない。それに比べると子供は良い。大人になるために栄養を取り、学校で勉強をする。親からは愛情をそそがれ、情操も豊かになっていく。そんな社会を想い描いて私も育ってきた。しかし、現代の社会は私の想い描いたものとは違う。大人になりたいと思っても、そう簡単には大人にはなれない。大人になれなくて子供のままの人が多い。やはり、お金を稼げない人は子供を続けるしかないと思うのかもしれない。私の想い描いた世界と現実が違うとき、人は2つの世界を結びつけようとする。物事の概念も変わってくる。これを革命と読んで良いのならば、マイ・レボリューション。
影を踏んで、草花をちぎって、雲に形を見出して。
全ては途方もなく広くて、きらきらと色を教えてくれた。知り得た何もかもが不思議で、理解したことが自慢で愉快だった。
全てが “そういうもの” なのだと目に馴染んだ今、振り返ることしかできないそれらの思い出は多少なりとも都合よく脚色されているのだろう。それでも、妥協と暗黙を身につけて社会を歩かざるを得ないこの現状からしたら、その時代には確かに戻りたいと願うだけの価値があるのだ。
時間は不可逆である。世の理で、常識で、納得しきれないもやもやをいくら抱えようとも、自分では覆すことなど出来ない。だから理解したふりをして、そのもやもやをどこかちょうどいい所に収めておくしかなかった。
冷えた夜風に息を吐く。
こうして窓を開け、暗闇に浮く月と星を見て。いつか金色の粉を振り撒く妖精が偶然にも目に映ることをどこかで期待している。逃げた影を追う純粋で気ままな少年に手を引かれることを夢見ている。
自分は周囲が思うより大人になりきれていないのだ。正しく大人に成長する道のりも知らずに、時間に流されるままで外側だけ立派になってしまった。教えの乞い方も知らなかった。
他の皆はどうなのだろう。皆自分と同じように、大人になりきれない自身と片手を繋いで生きているのだろうか。もしかしたら本当の “大人” なんてどこを探してもいないのかもしれない。
そんなことを考えれば馬鹿らしくなって、塩気がしみた考えは次第に環境音に溶けて消える。
ああ、でも。やっぱり純粋に大人に憧れたあの頃が恋しい。
彩られた記憶より少し褪せた世界を眺め、もう届かないネバーランドを夢想した。
【子供のままで】
『子供のままで』
「ぼく、おねえちゃんとけっこんする!」
なんて、言ってくれたのは幼稚園の時だったか。
ご近所のまーくん。たしか、真くん。
12歳年下の可愛い男の子。
何故だかとっても懐いてくれて、我が家に一人で遊びに来ることもしばしば。お母さまには平謝りされたけれど、まーくんはいい子でうちの母は久しぶりの幼子にテンション上がりまくりで逆にお礼を言っていたり。まーくんは、居間で勉強する私の隣で折り紙やお絵描きやひらがなドリルなんかをやっていて、本当に大人しい子だった。それを言ったらお母さまは何故か唖然としていたけれど。
小学校に上がっても、私をゆき姉ちゃんと呼んで慕ってくれて、それはそれは可愛い弟だった。
だけど、やはり。
思春期というものがくるわけで。
「俺、もう姉ちゃんて呼ばないから」
と、中学の学ランに身を包んだまーくんに言われた私は、一人しょぼくれながら缶チューハイなど呷っているわけで。
ああ、あの舌っ足らずに「ぼく」と言っていたまーくんが「俺」。
「ゆき姉ちゃん」と呼んでくれていたのが、「ゆきのさん」。
さ、さみしい……。
これもまーくんの成長の証、大人の階段なのだとわかっていても、もっともっと子供のままでいて、と思ってしまうのは親目線だろうか。
きっと、まーくんはどんどん成長して、ご近所さんの私となんてすぐ疎遠になって、可愛い彼女が出来て結婚をしてしまうだろう。
寂しいけれど仕方のない話。
そうなったらどこか道で行きあった時に、「昔は『お姉ちゃんと結婚する!』って言ってくれたのにねぇ」なんて近所のおばちゃんムーヴで笑い話にでも出来るだろうか。
ああ、寂しい。まだまだ子供で居てほしい。
そんな風に思いながら酒を過ごして二日酔いになってから数年後。
成人した誕生日にまーくんに告白されるとは夢にも思わないゆきのだった。
2023.05.12
まーくんはまーくんで、ゆきのがまっっっったく意識してくれないので心が折れかけたし、終いにはゆきの以外の両家家族一同みんなに応援されてた。
【子供のままで】
いつからか、自らの容姿を幼い子のようにしていた。子供のままでいたいとかは特になくてつまらんから、なんだと思う。
「そろそろ、上から見るのも飽きた頃ってかつまんないよぉ。」
「仕方ないだろ、私らはそれが仕事なんだ。」
人里からははるか上、雲のそのまたその上の。天界とか言われる場所。そこで、人々を見守って時には助けるのが私たちの役目。そんな、ギリシャ神話に出てくる皆が知っているような神様なんかじゃない。でも、大切な仕事だから。
「てか、その恰好いつ見ても小さくて不便そうだ。なんで、自分で姿変えられるのにそんななりしてんの?」
「特に意味とかはない。ただ、なんとなくだ。」
そう、なんとなく。きっと理由はない。ただ、本当につまらないから。ねぇ、神様。つまんないよ。退屈だよ。もし、神様がいるなら何か楽しいことがしたい。
「あー、神様って私か。」
子どものままでいられたら
どんなに楽だったか
大人になって思い知らされた
子どもは自由が限られてるけど
大人に守ってもらえてた
大人は自由を手に入れる代わりに
責任という大きなものを抱えていく
行きたい場所と到達したいと思う場所も
子どもの頃は夢でいっぱいだったのに
なかなか叶えられない現実を知った
重い責任を背負って生きていかなければならないと
痛感したんだ
お母さん もうすぐ母の日ですね
子供がいるあたしでも
子供で居られるのがこの日でした
テーマでもなんでもないんだけどね
一日の終わりに
どうしてこんなに
「今日」が下手なのかなーって思ってる
やろうとしてたこと
三つくらいあって
でもどうしても一つ二つしかやれないんだよね
なんでかな、
一つやれたらまだいいのかなあ
何度もいろいろやりなおしてるけど
うまくいかないんだ
やり直すことも忘れちゃう
そんなときもあって
崖のぼってまた落ちる
でもやらないより
いいのかな… また明日。
「恋研究班」
子供っぽい人になると
最初は可愛いと思われるけど
途中からめんどくさいと思われるし
大人っぽすぎたら
急に冷められたりするし
何をすればいいのだろう。
何が正解なのか、何が間違いなのか
何が可愛くて、何が美しいのか
その人にしか分からないものなんだろうな。
でも結局好かれるのは
ありのままの自分ってわけか。
〖子供のままで〗
友達とたくさん遊んだり
夏休みの宿題を最終日までやらなかったり
修学旅行で夜更かしして恋バナをしたり
楽しいことばっかり笑
まだ、いっーぱいやりたいことがあるの!
だからもう少し子供のままでいさせて
大人になると褒められることは極端に減る
様々なことは出来て当たり前
色々なことを知っていて当たり前
賞賛や賛同よりも
罵倒や非難が多くなる
生きていることが辛くても
僕の人生を代わりに歩んでくれる人はいない
でも僕たち大人にはひとつだけ武器がある
自分の味方に自分がなれることだ
何があっても自分を否定しない
何があっても自分を責めない
何があっても自分を卑下しない
そう決めた時から
僕は僕の一番の理解者になれる
そしてそれは
何よりも心強く
何よりも確固たるものだ
子供のままでいれない僕の心の中には
子供のままの僕がいる
僕たちはいつも自分に愛を注がなくてはいけない
僕たちはいつも自分の味方でいなくてはいけない
強く生きていくために
永遠にピーターパン
変わる事は何もない
流れる事のない時間
止まったままの思考
叶えられない欲求
自立出来ないジレンマ
守られる特権
権利より義務
#子供のままで
57回目の誕生日がきた
カテゴリーは年寄りだ
なのに、こんなに歳を重ねたというのに、思考の半分は若い頃と変わらない
大人な女になってると思ってたハタチも
かわいらしママになってるつもりだったも三十路も
肉欲と絶望と我と私と不安と諦めと無と安心と柔らかい愛と希死が混ざり合った四十も
病気と激減する体力と激増する脂肪と醜さと注がれる優しい愛も
子供の頃には想像だにしてなかった
今更何かに成れるとかおもわないけど、止まる事を認めたらお終いで、それはみっともないし申し訳ない
マラソンも競歩も散歩も疲れるし足も腰も痛いから嫌だけど,止まったらお終いになるから
ルームランナーで同じ場所で変わらない景色を不満顔で見続けながら、ダラダラと足を動かし続けてくのが精一杯なんだろなぁ
時々見つける新しい何か
昔からやってみたかった何かにちょこちょこ手を出して脳みそと指先動かして
決して純粋でも素直でも真っ白でも無かった子供の頃の私と変わらない狡さと嫌らしさとマヌケさにしがみついて溺れて
注がれる優しい愛に感謝して
とりあえず死ぬまでは生きる
子供のままで
子供になりたいなら
子供であればよくない
大人だろうが
子供だろうが
親はいるわけで
いなくても年長者はいるでしょ
それがいなくても国があるわけで
自分より強い権力もある
それらに全てを任せて
権利を自主的に放棄したらいいよ
子供になれたところで
末路は同じだろうけど
子供のころは
きっと大人になりたかったんだろうね
子供も大人も本当はない
人間としてならなおさらない
それは幼さからくる発想
現実逃避に過ぎない
子供のころには大人がいて
大人になれば子供がいる
子供のままでいたいって
大人が言ったなら
その大人は
ただ歳を食っただけの子供に過ぎない
子供になりたいって
思ったこともなければ
大人になりたいって
思ったこともない
なりたいものなんて何もない
なりたい職とかもでっち上げはしても
何もなかった
物心がついた頃には自分がいた
ただそれだけ
それでも狭い範囲だけど
選びたくないものは
選ばないようにしてきた
やってみたいことはやれる範囲で試した
ほとんどはよく解らなかった
いまでも解らないことだらけだけど
大人にならなければとは思わない
懐かしむのはいいけど
本当に望むなら
痴呆にでもなれるように
いまからでも頑張ってみてはどうだろう
子供の時にはもう生きづらかった。
大人になれば変わると信じてた。
( 馬鹿みたいだ。)
変わるはずないと分かっていても信じてた。
ただ信じてるから生きてこれた。
大人になって生き辛くて信じる物も無い。
子供のまま大人になった気分になる。
でも自分には何も無いと思ったとき2酒が呑めるようになった。
ただ酒があれば生きていける。
( そう思えばよく出来てるルールだ。 )
でも、このルールがある以上どこか世界は病んでる気がする。
子供のままでいられたらどれほど幸せだったことか。
思ったことは数知れない。
でも、子供のままじゃ為せなかったことも、数知れない。
【風に乗って】【カラフル】【楽園】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
4/8 PM 5:15
「あ、宵ちゃん、見て。
アネモネがあるよ。ガーベラも」
屋内アミューズメント施設で
遊んだ後の帰り道。
フラワーショップの前で足を止めて、
古結(こゆい)が宵を手招きする。
赤・ピンク・白・黄色・オレンジ・紫――
カラフルな花々が目に鮮やかだ。
「2人は花が好きなのか?」
店員と話しながら花を選ぶ古結と宵を
見守っている真夜(よる)に訊ねてみる。
「花が好きなのもあるし、少し前に
アネモネとかガーベラとか、春の花が
空から降り注いできたら、なんて会話を
してたから、気になったんじゃないかな」
「花が空から降ってきたら、か。
女の子らしい発想だな」
「アニメの受け売りだけど」
「そうなのか」
聞いた光景を思い浮かべてみる。
明るい空から降り注ぐ、色彩豊かな花々が
風に乗って舞っている――それはきっと
楽園のように美しい景観で――。
「春の花が降りしきる中に2人がいるのは、
すごく似合いそうだし、綺麗だろうな」
「オレもそう思ったよ」
真夜らしい、迷いのない即答だった。
「天明(てんめい)くん、真夜くん、
急にお花屋さんに寄って、ごめんね~」
「……お待たせ」
「いや、全然。古結も宵も、
気に入った花、あったのか?」
「うん! 買ってきたよ」
「ああ、ガーベラにしたんだな」
真夜が2人が手にしている花を見て言う。
古結は濃さの違うピンク色で2本。
宵はほんのり緑がかった淡い黄色で
色を揃えて2本持っていた。
「宵のガーベラ、珍しい色してるな」
「そうだよね! ガーベラってはっきり
した色が多いイメージだし」
「《グリーンティ》っていう品種らしいわ」
「グリーンティ。……なるほど。
色のニュアンスは確かにそういう
感じがする」
宵の持つガーベラを興味深そうに眺めて
問いかけた真夜が、宵の答えに納得した
ように頷いている。
そして、宵の隣で、古結も一緒に
うんうん、と首を縦に振っている。
彩度の高いビビットカラーのガーベラも
きっと似合うだろうけれど、落ち着いた
色も宵に良く似合っているな、と思う。
「それで、暁の品種は?」
「えーとね、こっちが《カップケーキ》で、
薄いピンクの方が《いちごみるく》」
「やたら旨そうな名前だな」
「ツッコミありがとう、天明くん」
待ってました、とばかりに楽しそうに笑う
古結につられて、俺も笑ってしまった。
「可愛いガーベラが買えて、
わたしも宵ちゃんもご満悦です」
「可愛い花を持っている宵と暁は、
花以上に可愛いよ」
「そうだな。真夜の言う通り、
2人の可愛さは、なんかもう
無敵な気がするよ」
「わぁ。……天明くん、真夜くんに
感化されてきてない……?」