【風に乗って】【カラフル】【楽園】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
4/8 PM 5:15
「あ、宵ちゃん、見て。
アネモネがあるよ。ガーベラも」
屋内アミューズメント施設で
遊んだ後の帰り道。
フラワーショップの前で足を止めて、
古結(こゆい)が宵を手招きする。
赤・ピンク・白・黄色・オレンジ・紫――
カラフルな花々が目に鮮やかだ。
「2人は花が好きなのか?」
店員と話しながら花を選ぶ古結と宵を
見守っている真夜(よる)に訊ねてみる。
「花が好きなのもあるし、少し前に
アネモネとかガーベラとか、春の花が
空から降り注いできたら、なんて会話を
してたから、気になったんじゃないかな」
「花が空から降ってきたら、か。
女の子らしい発想だな」
「アニメの受け売りだけど」
「そうなのか」
聞いた光景を思い浮かべてみる。
明るい空から降り注ぐ、色彩豊かな花々が
風に乗って舞っている――それはきっと
楽園のように美しい景観で――。
「春の花が降りしきる中に2人がいるのは、
すごく似合いそうだし、綺麗だろうな」
「オレもそう思ったよ」
真夜らしい、迷いのない即答だった。
「天明(てんめい)くん、真夜くん、
急にお花屋さんに寄って、ごめんね~」
「……お待たせ」
「いや、全然。古結も宵も、
気に入った花、あったのか?」
「うん! 買ってきたよ」
「ああ、ガーベラにしたんだな」
真夜が2人が手にしている花を見て言う。
古結は濃さの違うピンク色で2本。
宵はほんのり緑がかった淡い黄色で
色を揃えて2本持っていた。
「宵のガーベラ、珍しい色してるな」
「そうだよね! ガーベラってはっきり
した色が多いイメージだし」
「《グリーンティ》っていう品種らしいわ」
「グリーンティ。……なるほど。
色のニュアンスは確かにそういう
感じがする」
宵の持つガーベラを興味深そうに眺めて
問いかけた真夜が、宵の答えに納得した
ように頷いている。
そして、宵の隣で、古結も一緒に
うんうん、と首を縦に振っている。
彩度の高いビビットカラーのガーベラも
きっと似合うだろうけれど、落ち着いた
色も宵に良く似合っているな、と思う。
「それで、暁の品種は?」
「えーとね、こっちが《カップケーキ》で、
薄いピンクの方が《いちごみるく》」
「やたら旨そうな名前だな」
「ツッコミありがとう、天明くん」
待ってました、とばかりに楽しそうに笑う
古結につられて、俺も笑ってしまった。
「可愛いガーベラが買えて、
わたしも宵ちゃんもご満悦です」
「可愛い花を持っている宵と暁は、
花以上に可愛いよ」
「そうだな。真夜の言う通り、
2人の可愛さは、なんかもう
無敵な気がするよ」
「わぁ。……天明くん、真夜くんに
感化されてきてない……?」
5/12/2023, 3:22:35 PM