『君は今』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
拝啓 桜が見える季節になりました。
君は今どうお過ごしですか?
高校で別れてから一度も会えていませんが、君が元気に明るく友達と楽しく過ごしていることを願います。この文だけ見れば、会いたい、、と思われるかもしれませんが、そうではありません。今、この手紙が届いているのかは分かりませんが、これを見ている、、、という事は私はこの世にいません。多分ではなく、、です。君はこの先も目まぐるしく移り変わる季節や世界と共に生きていくのでしょう。そんな君を私はまだ見ていたいのです。だからどうか、、あと数十年経ったら私とお会いしましょう。それまではどうかお元気で、、、いつも飲んでいたあの炭酸を飲み干したあの時、、、私達はさよならをしたのですよ。気づいてないのでしょうけれど。さようなら。
君は今、万引きをしようとしたね?
万引きでは言い方が軽いね。窃盗だ。君は盗みを働こうとした。
蚊を一匹殺したことはあるかな?あるんだね。それなら殺生と盗みの罪で死後は黒縄地獄行きだ。
黒縄地獄はね、熱した縄で簀巻きにされたあと、その縄目にそってこれまた熱した斧で切り刻まれるんだ。火の山に登らされたり、大釜で煮られたりもするよ。
震えているね。怖いね
怖いのにどうして盗みを働いたの?え?澁澤龍彦の快楽主義の哲学に影響されて?
一時の快楽こそ、恒久的幸福より求むるべきものである――あれは悪書だからね。燃やしてしまいなさい。あんなのに従っていたら、そのうち額から角が生えてしまうよ。悪魔になるよ。
君の魂はそれができるほど、純粋ではないんだ。分かったら、大人しくお家に帰りなさい。今日のことは忘れて、奴隷のように生きなさい。それが君にできる唯一の生存戦略だ。
君は今元気ですか?
君は今楽しいですか?
君は今悲しいですか?
君は今楽しいですか?
君は今私を思ってくれていますか。
君は今私を思って悲しんでくれて、
笑ってくれて、
楽しんでくれて、
私が君の行動の理由になっていますか?
なってくれたらいいな。
私が君の呪いのようになっていればそれでいいです。
それだけで私は安らかに眠れます。
今日で君に会えなくなってから一年らしい。
まだ一年なのか。
君に会えないというだけで、ずっと長く感じるよ。
卒業式の時、私の胸に優しく花を添えてくれた君は本当に綺麗だった。
嬉しそうな、誇らしそうな。
だけど、寂しそうな。
そんな感情で瞳を揺らす君は、触れると消えてしまうんじゃないかというくらい儚かった。
君に会うためだけに、学校に行っていた。
君と言葉を交わすだけで、今日を生きれる気がした。
ここに来ればまた会えると思っていたんだけど。
太陽のような笑顔で迎えてくれると信じていたんだけど。
君がここを去るということは、何となく解っていたから。
君が今、誰と居て、何処で何をしているのか。
知る術は私にはない。
だからせめて、これだけは願うことを許してほしい。
これほどの愛しさを、たくさんの幸せを教えてくれた君の、今日という日が。
どうか優しさで溢れますように。
〝君は今〟
右手に感じる、私よりも低い体温。
骨ばってごつごつしている友達のとはまた違う手。
いつもと違うつなぎ方。
慣れない。
右上からかかる言葉。
「好き」
友達とは違う声の高さ。違う位置からかかる声。
慣れない。慣れない。いつもと違う。
でも、そんな慣れない違和感も、あなたとなら愛おしいと思うのは、私だけ、かなぁ。
あなたを見て微笑むと、あなたは照れたように目を逸らしたね。そんなとこも、好きだよ。
私はこの時間が続いてくれたらなぁ、って思うの。
「君は、今」
なにを、思う?
物憂げな空
どんよりとした雲を見ると、悪いことがおこるのではないかと思う
小説では、背景描写で感情が描かれるでしょう
だから空が物憂げだと、誰かに何かがおこるのではないかと思ってしまう
それが例えば私だったら?
そう考えると私も物憂げな思考になっていく
明日は嫌なこと、ないといいな
君は今
なにをしているのか、詮索したくないんだ
気になってしまうだけ
たぶんまだ東京にいる、来月には引っ越す
それだけは分かるけど、それだけでいい
動向が分かれば、あとは任せるよ
今日は友人の香織と二人で、執事喫茶に来ていた。
香織が演劇部の劇で、『お嬢様の役をやることになったが、うまく演じれない』と相談を受けたのだ。
そこで私はお嬢様の練習にちょうどいいと思い、行きつけの執事喫茶に連れてきた。
ここでお嬢様として振舞うことで、役への理解を深めてもらおうという算段だ。
扉を開けると涼し気な鈴の声が鳴り響き、店員もといイケメンの執事がやってきた。
「お帰りなさいませ。お嬢様。こちらです」
執事の案内でテーブル席に座る。
「ありがとう。いつものやつ、二人分よろしく」
「かしこまりました」
そう言うと、執事は恭《うやうや》しく礼をして去っていく。
ちなみに『いつもの』と言っても、私がいつも注文する料理が運ばれてくるわけではない。
『いつもの』と言うのは符牒であり、オシャレな日替わり定食が出てくるだけだ。
ようはただの雰囲気作りである。
私たちのやり取りをみて、香織がうっとりしながらため息をつく。
「紗良ちゃん、堂々としているね。本当にお嬢様みたい」
「あら香織さん、何を言ってますの?
ここではあなたもお嬢様よ。お嬢様らしく振舞いなさい」
「無理だよ。恥ずかしいもん」
香りが弱気になっている。
無理もない、誰だって初めては緊張する。
ここはひとつ、先輩お嬢様として後進の育成をするとしよう。
「しかたありませんね。私が力を貸しましょう」
「紗良ちゃん、ありがとう」
「感謝はいりませんわ。これもノブレス・オブリージュですから」
「のぶれ……何?」
「ノブレス・オブリージュ。簡単に言えば貴族の義務というものですわ」
「へー」
香織は分かったのか分かってないのか、よく分からない顔でうなずく。
「では香織さん、これを見なさい」
「……紗良ちゃん。これはいくら何でも……」
私が取り出したのは、紐を括り付けた五円玉、すなわち五秒で作れる簡単催眠術道具である。
ここに来ることが決まったとき、香織が絶対にぐずると思ったので用意したのだ。
プロがやるならともかく、素人のやる物である
効果があるわけがないし、あっては困る。
だが私の狙いはそこではない。
「勘違いなさらないで。私が催眠術をかけるのではないの。
あなたが催眠術にかかるの」
「それはどういう……」
「始めるわ」
私は香織の顔の前に五円玉を垂らし、ゆっくりと揺らす。
「君は今、お嬢様よ。お嬢様らしく振舞いなさい」
「私はお嬢様。お嬢様らしく振舞う」
「もう一度、君は今、お嬢様よ――」
そのようなやり取りを繰り返す。
次第に香織の顔つきが変わる。
私の催眠術をかかったわけじゃない。
香織が自分に自己暗示をかけているのだ。
香織も部活とはいえ役者の卵。
役に入るのはお手の物だろう。
そろそろいいだろうと五円玉を下ろす。
「どうかしら、香織さん。気分はいかが?」
「すみません、紗良さん。少しだけ気分が楽になりましたわ」
さすが香織、もう役になり切っている。
ここからは台本は無いアドリブになるが、問題ないだろう。
習うより慣れろだ。
「フフフ、香織さんの催眠術、お上手なのね。私も教えてもらおうかしら」
「あら、誰を催眠術にかけるのかしら。そう言えば前のお茶会で、クラスメイトの野田くんが素敵と――」
「ちょっと待って、紗良ちゃん。それは反則!」
「だめですよ、香織さん。お嬢様たるものこの程度で取り乱しては……」
そんなやり取りをしていると、執事がお盆にサンドイッチを乗せてやってくる。
『いつもの』が来たらしい。
「お嬢様、どうぞ」
執事がテーブルの上に優雅にサンドイッチを置いていく様子に見とれてしまう。
いつ見ても綺麗なものだ。
これを見るためにここにきていると言ってもいい。
この人、私の専属になってくれないかなあ。
「では何かありましたらお呼びください」
そう言って執事は去っていた。
目の前に置かれたサンドイッチを食べようとすると、香織がこちらを見ていることに気が付いた。
「何かありましたか?香織さん」
「不躾でしたね。ごめんなさい、紗良さん。
少し気になったことがありまして……」
「気になったこと?」
さっきのやり取りで何か変なところでもあっただろうか?
「ええ、紗良さん。もしかして、先程の執事の事が――」
「ストーーーーップ」
「ダメですよ。香織さん。取り乱してはほかの方に迷惑になりますから」
どうやらさっきの仕返しのつもりらしい。
この話を深堀されたらヤバい。
話を変えよう。
「フフ、フフフ。あああの、香織さん。話を変えません事?」
「そうですね。では、ここが行きつけの理由を詳しく教えてもらってもよろしくて?」
「ノーコメント」
お嬢様を始めてまだ五分程度しか経っていないというのに、私を手玉に取るほどの余裕があるとは。
香織の中にとんでもないお嬢様のポテンシャルを感じる。
その後も香織から散々いじられ、私はお嬢様として無様な姿をさらすことになった。
それはともかく、今回の執事喫茶の経験が生きたらしく、劇では香織演じるお嬢様は大変評判がよかった。
そして香織はよほど気に入ったのか、その後もよく私を誘って執事喫茶に訪れた。
そのたびに香織は私をからかい、執事喫茶で私が積み上げてきたクールなイメージが崩れ去ることになったのだった。
このドSお嬢様め。
いつか見返してやるからな。
私のお嬢様道はまだ始まったばかりだ。
周りの喧騒をそのままに
自分の本当を探して目を閉じる
気持ちはそのままただそのままに
あなたの行方を探して
君は今何をしているのだろうか
何を思っているのだろうか
これから何処へ行くのだろうか
僕は君を探して今日もここにいる
足元には春先の風が吹く
君を今見つめている
君は今
「君は今何してる?」って言葉、使う場所とか変わっても意味は一緒だけど時間軸が変わるなぁってこのお題を見て思った。
例えば、この時間帯に「君は今何してる?」と聞かれたら、動画を見てるとか、ご飯食べてるとかだろう。
けれど、数ヶ月とか数年経った時に「君は今何してる?」と聞かれたら、〇〇会社で働いてるよ。とか、今まで読書してこなかったけど、3ヶ月前とかから読書し始めたんだ。とか答えの時間軸が異なる。
言葉って面白いとつくづく思った。
君は今(2月26日)
君は今 何をしているのだろう
君は今 幸せなのだろうか
好きなもの 嫌いなもの
得意なこと 苦手なこと
いろんなこと 変わったのかな
見た目は変わったのだろうか
性格は変わったのだろうか
僕の知っている君から変わったのだろうか
君は今 どうなってるのかな
明日の生き方を考えています。
うーん。少し回線が悪いみたい笑
何をしてますか?
幸せですか?
【君は今/168】
君は今
僕じゃない誰かに
その笑顔を見せているんだね
僕は今。
呑気に小説を書いている。
僕は今。
小さく歌を口ずさんでいる。
僕は今。
友達と話している。
僕は今。
学校の宿題をやる気がないだとか言って諦めている。
僕は今。
弟の面倒を見てる。
僕は今。
ぬいぐるみを抱きかかえてる。
僕は今。
小さくあくびをして、でもテレビを見ている。
僕は今。
眠いのに寝ない、と意地を張って眠気と戦っている。
僕は今。
自分のことが嫌いだけど
君に言われたとおりしっかり生きてるよ。
君は今。
何をしているかな
君は今
もう会えない君。今、どこにいますか?
もう話せない君。今、誰と話していますか?
もう笑えない君。今、誰と笑っていますか?
もう関係ない君。今、誰と関係を持っているの?
僕の大好きな君。僕が大好きな君。
君は今、何をしていますか?誰といますか?
もう会うことのない君。元気で、幸せなことを願っています…
皆さんのおかげでいいねが1000を超えました。ありがとうございます。
これからも日々書いていきますので、読んでいってください。
君は今
今日は
ありがとう
いつも
心配してくれて
自分のことのように
考えてくれる
君は今
何を想ってるの?
なな🐶
2024年2月26日630
君は今、誰と何をしているのか
あの日から
どれだけ待っても音沙汰は一切ない。
いつ君に会えるのか、
いつ君と話せるのか。
ずっと待ってる
こーゆーところが嫌なのかな
―君は今―
曇った夜空の下、
夜景が綺麗だったあの日のこと
僕も君も、それぞれ追いたい夢を見つけていた
けれど、まだ2人とも愛は冷めなかった
だから僕らは恋愛も、自分の夢も、と考えた
久しぶりに、2人で長い時間話し合った末に
『5年間だ…。5年後の今…
つまり、8月13日の午後8時に、
またここで落ち合おう』
と、僕は言った
君は頷き、
「わかった。5年後ね」
と、条件を飲んだ
そして、2人でこう約束した
«明日から5年間を、
僕らがどこでどう過ごそうと関係ない
深く干渉したり、行動を阻んだりはしない
新しい恋仲ができても仕方がないけれど
ここで逢う約束だけは必ず果たすこと»
あれから3年の月日が経った8月の13日
取りたいと思っていた資格も無事取れ、
全てが思い通りではないけれど、
ありがたいことに、案外上手くやれている
今は、マイブームであるキャンプに来ている
ここは星が綺麗だと有名な場所で、
昨夜は見事に晴れていたので、
流星群を見ることが出来た
ペルセウス座流星群
君も見ていただろうか
僕はずっと前、君と一緒に偶然見たのが
最後だったから、とても興奮して、
それから、君のことを思い出した
もちろん、忘れていたわけでもないけれど
彼女とは、最近メールで会話をした
どうやら彼女も彼女で、
なかなか上手くやっているらしい
お陰様で忙しくさせてもらっているの、と
僕は元気でやってるよ
君は今どこにいるの?
|
ひみつ♪
でも、星が綺麗に見えるところだから、
毎日癒されてるよ
|
そっか
約束、まだ忘れてない?
|
もちろん!
ずっと楽しみにしてる
|
僕もだ
約束のあの場所で必ずまた逢おう
君は今、元気でやっているだろうか
君は今、何をして過ごしているのだろうか
君は今、誰の隣で笑っているのだろうか
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『RPG/SEKAI NO OWARI』より着想
to be continued
読み進める小説の
主人公と同化していく
きみは今どこにいる
太陽の動きに合わせて
東の方から西の方へ
当てもなく歩く景色は
永遠に明るい
その強い日差しを受けて
眩しそうに目を細めてる
きみは今どこにいる
(君は今、現実逃避)
同窓会の欠席は1人だけだった。
それが河本陽菜乃だと知った時、落胆と安堵が両立していた。
河本陽菜乃は高校時代の元カノだ。
別々の大学で遠距離恋愛をしていたが、ちょうど1年くらい前、好きな人ができたとフラれてしまった。
僕自身、まだ諦めきれていないところがあったので、会う機会が喪失したことは残念に思う。
ただ、実際に会えたとしても何を話せばいいか分からなかっただろう。
微かな引っ掛かりを残しながら、会は始まった。
久しぶりに会うやつと昔みたいに話せるかと心配していたが、杞憂だったようで会は非常に盛りあがった。
高校時代、一番仲の良かった康介は、先週プロポーズの末、婚約までしたようで、結婚式の展望について一生懸命語っていた。
瓶ビールを追加するため、中座してカウンターに向かうと、翔太くん、と呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、門倉栞がこちらにいたずらっぽい笑顔を向けていた。
「久しぶり」
門倉栞は高校時代、陽菜乃の親友だった。
陽菜乃と同じバレー部で、僕が陽菜乃に告白しようとしていた時は、かなりアシストしてもらった記憶がある。
こっちこっち、と手招きをするので、移動してグラスを見た。
コップの1/8くらい、赤色の飲み物が残っている。
「カシオレ?」
「いや、なんか変な名前のやつ。分かんないけど面白い味するよ」
飲んでみてよ、と差し出されて軽く呷る。
「あー、たしかにそうかも。あれに似てる、えーと」
「ドクターペッパー」
「それだ」
指を指すと、自慢げな表情。
「そこまで飲んだし、飲み干しちゃってよ」
「えー、あんまり好きな味じゃないんだけどな」
「応援したげるから」
別にいいか、残りはほんの少しだし。
そう思って、残りを飲んだ。
後味は微妙に苦かった。
そこからは色々な話をした。
班活動の話や文化祭の話。
そして、陽菜乃の話。
「そっかー、別れちゃったんだ。あんなに応援したのに」
残念そうに栞が言う。
「その節はほんといろいろ助けてもらって……」
拝む僕の肩をやめてよー、と叩く。
その話を詳しくしようと思った時、幹事の声がスピーカーから響いた。
「大盛り上がりのとこ、悪いけど、もう会場時間です!話し足りないぶんは二次会で!」
最初の席に戻るよう促されて、じゃ、と手を振って席に着いた。
まだ少し話していたかったが、仕方がない。
二次会は各々行くようで、ロビーにグループがいくつかできていた。
康介のところに混ざろうとした時、袖を引かれた。
栞だった。
「私と行こうよ。まだ話し足りないでしょ」
かなり迷ったが、栞のところに行くことにした。
栞の希望で外れのバーに歩く。
かなり酔っているようで、足取りはふらついていた。
それほど飲んではなかったみたいだけど、弱いのかな。
かくいう僕もかなり酔っているようで、頭がズキズキと痛んでいた。
喧騒から離れて、街中を抜けた。
しばらく歩いて小さな石橋を渡る。
「こんなところにバーなんてあったっけ」
頭を押えながら聞く。
栞はスっと立ち止まった。
「体調は大丈夫?」
お酒のせいだろうか。会話が噛み合っていないように感じた。
頭の痛みはさっきより増していた。
「いや、まあ。ちょっと、ヤバい、かも」
ふらつく僕の様子を見て、気遣ってくれたのだろうか。
いや、さっきから栞は一度も振り向いていないはずだ。
ようやく振り向いた栞は涼やかな目をしていた。
そのまま後ろ歩きで数歩進む。
足取りはしっかりしていた。
この表情の意味はなんだろう。
考えようとするが、上手く頭が回らない。
視界が歪む。
足を踏み出そうとして、転げてアスファルトに頭を打った。
「ああ、大丈夫?」
栞は僕に肩を貸してくれた。
ぶつけた痛みはほとんど感じない。
内側から蝕むような痛みが響いている。
「気をつけてよ。もし、流血なんかされたら、手がかりが増えちゃうじゃない」
言葉の意味がよく分からなかった。
うまく聞き返すこともできずに、呻く。
「じゃあここで別れましょうか」
それじゃ、と聞こえて体の支えが消えた。
続いて衝撃と冷たい感触。
川に落とされたのだ、と理解する。
だけど体は動かない。
流されながら、痺れた思考で必死に考える。
栞はなぜ僕を殺したかったのだろう。
陽菜乃を奪ったあの人を、私はどうしても許せなかった。
私との約束を塗り替えて、翔太に会いに行く陽菜乃が許せなかった。
元々両想いだと知っていたから、なるべくうまくいかないよう策略していたが、実を結ぶことはなかった。
陽菜乃が別れたと聞いた時、初めて神様に感謝して、そして思った。
二度とこんなことが起こらないように頑張らなくちゃ。
翔太と会わないようにと脅迫の手紙や嫌がらせを繰り返した。
陽菜乃が弱っていくのを見るのは辛かったが、フォローも余念なく行っていた。
同窓会も思惑通り、断ってくれたようだ。
しかし、陽菜乃がうわ言のように呼ぶのはいつも翔太の名前。
存在を消すしかない、と思った。
この辺は人通りも少ないし、川の流れも速い。
行方不明の死体が上がるのは、いつになるだろう。
飲ませた毒は存分に効いていた。
自力で上がってくるのは不可能だ。
陽菜乃は今、何をしているのだろう。
この後、会いに行こうかな。
私の鼻歌が静寂に弾んでいた。