『同情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
この勝負に勝つための条件は2つ
同情しない
後ろを見ない
頭を使う
よく覚えとけ。
〈同情〉
ぬるい瞳。下がるまなじり。
閉じきった部屋で、俯くあなたの背を撫でる。
同病相憐れむ、なんて、とんでもない。
ただ、これは同情だ。傷を知るあなたに、この身が
手渡すことのできる、唯一のシグナル。
けれど、輪郭のない病を温めているからこそ分かる、
隔絶もある。
あなたはわたしと、同じ病ではない。
もっと高尚で、純然たる、うつくしい悩みだ。
その玻璃を、にごり淀んだ唇で、穢すことなどゆる
されない。
だからこそ、たったひとつの同じもの。
揃いの、三十六度の体温のみで、あなたを慰める。
どうか、こんなぬるさでは、孵らないで。
あなたのたっとい胚を眠らす、三十五度の祈り。
「同情」
同情しないで欲しい。
同情して欲しい。
私の悩みを理解できるわけがないのに。
私の辛さをただ受け止めて欲しい。
適当なことばっか言うくせに。
だけど、我慢しなくて良いかもと期待する。
どうせ、どこか他人事に思っている。
それでもその言葉に救われる。
簡単に同情なんかされて
許せない。
もっと慰められたい。
相反する気持ちをどうしよう。
1番安心できる人に全てをさらけ出してしまいたい。
と思うのは自然なことだ。
そして、自分が泣きついたら
静かに受け止めて抱きしめて欲しいと思うのも
また、自然なことだ。
同情に求められているのは
安心感。
自分の辛さを自分が訴えた時に聞いて欲しい。
なんて身勝手な、
だが、
限界を迎えた末の逃避にも似た、自然な思い。
嗚呼、この感情を口にするのは容易いことだ
「好きだ」
「愛している」
饒舌なキミの唇はいつも濡れている
滑らかに優しく心地よく
私の深層にまで染み渡り
こみ上げる懐かしさ
今日もいつもの時間に
待ち合わせ
微笑むキミが現れる
「今日は顔色が良くないね」
「ちゃんと眠れているの?」
「あなたのことが心配なだけよ」
「ううん、私のことはいいの」
その愛らしい声が何よりも
私の耳に揺さぶりをかける
加えて見た目も常に控えめ
嗚呼、非常に良い
まさに私の理想を具現化された
「私の女神」そのものだ
これほどまでに完璧な女はいない
私の手持ち無沙汰な心を
とてつもなく満たしてくれる
私はコスパよりもタイパを重視した
結果をキミに伝えることはないが
非情なキミに同乗するよ
#150「同情」
『同情』
朝の忙しない雑踏の中、私の視線はある一点に
釘付けになった。
前を歩く、幼い子を連れた老人。
孫を幼稚園にでも連れていくのだろうか。
その幸せな景色の中に、ほんのわずかながら
異物が混じっている。
それを無視することは容易い。
気がつかなかったことにすればいい。
でも、本当にそれでいいのだろうか。
この先に起こるであろう未来を、見なかったことにしてしまって本当にいいのだろうか。
防げるのは今、きっとわたししかいない。
やはり、無視はできない。
同情と言われても良い。
勇気を出し、わたしは老人に声をかけた。
「すみません。
肘に食パンついてますよ。」
※実話です。
同情
「は?やめてよ、同情とか。
あんたに、わかるわけないじゃん。」
僕だってね、本当はしたくないよ。同情なんて。
でも、他に何をしたいいのかわからないんだよ。
本当に申し訳ないんだけど、本当にわからないんだ。
同じ情がある
どうにかして、なかったことにしたい古い思い込み
同情
#枯葉
からの小説の続きです。
「あの、僕が見えているんですよね?」
妖精だと名乗るレンズ越しの青年が、澄んだ灰色の目でこちらを伺うように枝から身を乗り出してきた。木の上に登った猫でも撮影しているかのように画面がいっぱいになり、そういえばズームにしていたことを思い出して設定を戻す。
見えているというよりは写っていた。
「…幽霊じゃないんだよな?」
わずかに声が震えた、妖精なら良かったのかと現実味の無い考えに頭が痛くなってくる。息を深く吸い、吐いた息で自分を落ち着かせていく。
「自分でもよくわからないんですよね、気づいたらここにいて」
嘘は無いように思える、ただの直感だが。自分より若く見える画面の中の男は、整った顔立ちに不似合いなあどけなさを持っていて不思議な感覚になった。
「じゃあ、そこで何してんの」
「なにも、寝転んで星をみたりとか」
猫の妖怪なのだろうかと、再びよぎった考えにため息が溢(こぼ)れる。
少し落ち着いてきてきたのか視野が広がってくると、最初は気づかなかった男の服装が、やっと目に留まった。自分と同じ、病院指定の緑色の患者衣。
「ねえ」
画面の中の妖精が楽しげに、こちらへと話しかけてくる。
(きっと漫画だ)
同じ枯葉でも今度は別の既視感で、胸を締め付けるような感覚に顔が歪みそうになるのを下を向いてやり過ごした。男の肌は雪のように白くて、まるで―
「…何?」
俺はひとつ息を吐き会話の続きでもする調子で言葉を返した、ビデオ通話でもしているかのような無邪気な顔がRECの文字とともにこちらを見ていた。
(どうせすることもねぇし)
同情ともいえない哀れみに似た感情を覚えた自分に後ろめたさを感じつつ、少しの好奇心からか微かに笑みが溢(こぼ)れる。
小風に揺れる枯葉をレンズ越しに眺めながら、妖精からの次の言葉を待った。
(後書き。)
消化していきたいのでお題に無理やりねじ込んでいきます^^;
2月中に終わればいいな。
同情
同情しないようにしている
でも気がつくとしてしまってる
あ、大変そう
手伝おう
ってなってしまう
けれど人によっては
よくないこともあると気づいた
私は見返りは求めない
けどやった後に
おせっかいだった
と言われた
その子はプライドが高く
自分は可哀想じゃない
っと言ってきた
私は可哀想だと思ったわけじゃない
仕事だから私もやろうと思っただけ
あ、ダメだ
この子と私は捉え方が真逆だ
となり同情しないようにしている
同情とはなんだ
【同情】
悲しい時、具合の悪い時、
自分はそれが嫌で
無理してでも平気な表情や行動をしてしまう
でも
ほんとに素を出せる相手の前では
ダダ漏れ笑
なんなら手厚く同情してーーーってなる笑
わがままヤツめっ笑
申し訳なーい
『守るために』
ハッと目が覚める。何の夢を見ていたか思い出せないが…何か嫌な夢だった気がする。額に薄っすらと汗をかいていることがわかった。
それにしても……ここはどこ?
私の目に映るのは、見慣れない天井だった。ひとまず状況を整理しようと体を起こす。
「なに、これ…!?」
私の手足にはそれぞれ手錠と足枷が付けられていた。動く度にそれはジャラジャラと音を立てる。外そうとしてみるもビクともしない。
どうしよう、と考えていると部屋の扉が開いた。
「起きたか」
「あんたは……」
入ってきたのは、私のよく知る男だった。
「もうあの時みたいに"先輩"とは呼んでくれないんだな」
「組織を、私たちを裏切ったあんたにそう呼ぶわけないだろ…!」
キッと目の前の男を睨むが、男は気にしてないようにため息をつくだけだった。
「死にかけたお前を助けたのは俺なんだがな」
体を見ると確かに怪我を負った場所には包帯が巻かれていた。
そう、私は任務の最中だった。しかし敵の攻撃を受けて大きな怪我を負ってしまった。なんとか敵の前から姿をくらましたが、逃げている最中に意識を失ってしまったのだ。……そういえば気を失う前、誰かに支えられた気がする。それがこの男だったのか。
「…それについては感謝する。だが、これはなんだ」
そういい手を少し上げる。重さと同時にジャラという音もついてきた。
「お前にはここにいてもらう必要があるからな。逃げないようにする為につけているだけだ」
「ここに…?なんでだ?」
彼は私を見るだけで何も言わない。
「死にかけた可愛い後輩に同情か?……巫山戯るな。私には任務がある。それを遂行しなければいけない。だからこれを外せ」
私の言葉を聞いた彼が眉を寄せた。
「…そんなに任務が大事か。あの組織は…」
「わかってる!」
彼の言葉を遮り、声をあげる。聞きたくなかった……いや、正確に言うと彼の口からその言葉を聞きたくなかった。
「わかってるよ!あの組織がやっていることも、私たちのことを捨て駒としか思ってないことも!」
荒ぶる私と対象に彼は冷静だった。
「それでも、それでも私は良かった!」
「そのせいで死んだとしてもか」
「あぁ!いい!それで死ねるなら本望だ!」
そう言い切った瞬間彼に胸ぐらを掴まれた。彼の体重がかかり、体がベットに戻る。
逆光のせいか彼の瞳には光がなく、真っ黒だった。初めて見る彼の顔に背筋が凍りつく。
「…巫山戯るな、そんなことはさせない」
彼がそう呟いたかと思うと、急に私と彼の距離がゼロになった。いきなり近づいてきた彼に驚き目をつぶってしまったが、息のしずらさを感じ目を開けるとすぐそこに彼の顔があった。彼の髪が私の顔に当たる。
「…は…っ……」
離れていく彼の顔を見ながら息を吐き出す。
なに…今の……?
いきなりの出来事に頭が追いつかない。そう考えている間にも彼は真っ黒な瞳を携えたまま私を見下ろすだけだった。もう一度彼の顔が近づいてくるかと思ったら、部屋に声が響いた。聞こえたのは女の人の声で、優しく、けれども、どこか冷たさがある声で彼の名前を呼んだ。
「そろそろあいつらが来ます。貴方も早く準備を」
その声を聞いた彼は私から手を離し、「了解」と短く返事をした。彼の顔を盗み見ると先程までの陰りはもうなく、どこかホッとした。
「じゃあ、行ってくる。…おやすみ、いい夢を」
彼は私の頬をするりと撫でると部屋から去っていった。彼の姿が見えなくなり、何か逃げる方法はないかと部屋を見回すが、突如ぐらりと目の前が歪んだ。頭がぼーっとして、強烈な眠気が襲ってくる。
なんで…まさか、何か盛られた…?
そう考える間もなく、私の体はまたベットに倒れた。
【同情】
ー自己愛ー(同情)
真っ白い病室に、彼はいる。
窓もない部屋で、一人きり。
私は彼に会う権利をもらっている。
あたしだけの彼。
彼はあたしが病室に入ると、こっちを見てニコっと笑う。
それがたまらなく嬉しいんだ。
彼の特別。
あたしにとっての特別。
好きが止まらない。
「元気?」
あたしは小さく聞いた。
「元気、今日も来てくれるんだね。僕が入院してからずっとじゃない?」
「だって心配だから」
そう言って、本を取り出す。
本が好きな彼のために買ってきたのだ。
「これ、読みたがってたやつ。暇でしょ?」
「ありがとう、嬉しいなぁ」
彼は、本を受け取り、静かに開いた。
ペラッ
ページをめくる音が響く。
あたしは彼を、じっと見つめた。
白い肌に、しなやかな手。
病服の隙間から見える皮膚に、骨が浮いていた。
「ちょっと痩せた?」
「え?」
彼があたしを見る。
長いまつげが、蝶のように上下した。
「痩せたように見えたの。きっと気のせい。毎日見てるのに、変な事言った。ごめんね」
「ううん、全然!そっか、昨日より痩せてるように見えるか…。……実はさ」
彼は栞を出して、本に挟んだ。
あたしのあげたものだ。
「病気の特効薬が見つかったんだって」
「え!?……そうなの?」
思わず荒げてしまった声を隠すように静かに聞いた。
少し恥ずかしい。
「ふふ。うん。当分先にはなるだろうけど、絶対治るからって」
「な、なんで言ってくれなかったの?」
「え、だって、治るとしてもまだ、半年はかかるって言われたから…。それと、サプライズしたくて…」
「なんだぁ。言いたくなかったのかと思った。そうなんだ。良かった、嬉しいね。ほんとに…」
あたしは少し、言葉に詰まった。
胸に何かが広がる。
嬉しいけど、なんかなぁ。
目の前にいる彼が急に、くすんで見えた。
さっきまであんなに、輝いてたのに。
誰とでも会えるようになったら、私は特別じゃなくなるんじゃない?
……というか、治っちゃうのか。
病気。
あたしは彼を見た。
そこにはちゃんと彼がいた。
でも、
輪郭が違う気がする。
そう感じた時、あたしの中で何かが消えた。
あたしは立ち上がる。
「なんか、冷めちゃった。ごめん」
「え?」
「ごめん。分かんないけど、なんかちょっと…」
彼は不安そうな顔をしている。
あたしは言った。
「あたしたち、もう終わりね。本はあげる。ごめんなさい。気が向いたらまた顔を出すわ」
彼は、何も言わなかった。
彼にとっての特別は、あたしではなかったのかもしれない。
呼び止めてこなかった彼のもとに、あたしが再び足を運ぶことはなかった。
―――――
俺は一昨年から、原因の分からない病気に苦しめられてきた。
そんな俺に同情してくれたのが彼女だった。
去年から病室にいる俺。
一人なら面会してもいいと言われた時、俺は彼女を選んだ。
彼女は毎日様子を見に来た。
彼女は俺の事を気にしてくれる。
でも、彼女の心が俺にないことは気づいていた。
「ちょっと痩せた?」
「え?」
「あ、ええと、痩せたように見えたの。きっと気のせい」
薬のせいか。
俺は、ここで、彼女に言うか言わないか、少し迷った。
病気が治ることが分かれば、彼女はきっと離れていく。
俺も優しくされることが嫌だったわけではない。
でも、そろそろはっきりさせるべきだと思った。
そもそも俺たちにの間に恋愛感情はない。
「……実はさ、病気の特効薬が見つかったんだって」
「え!?」
彼女は大袈裟に驚く。
そして、「良かった、嬉しいね」と言った。
彼女は少し、眉を下げた。
そして、立ち上がる。
「あたし、病弱なあなたが好きだったの。そして、あたしはそんな自分が…」
彼女は言い切らなかった。
悲しそうに目を伏せる。
「あたしたち、もう終わりね」
彼女はそう言って病室を後にした。
俺は、大して好きでもない本を持ったまま、暫く扉を見つめていた。
――――――――――――――――――
えー、日付が変わりました。
……二人の視点で見えていることが別々なのを意識して書きました。
流石に、「彼」の一人称を変えるかは迷いましたが…。
おやすみなさい。0:30
同情
普通だと思っていた
私の普通
皆の普通
違う事に気付かず
知らぬ間に同情されていた
これはきっと
同情なんて
生半可なものではない。
哀れみなんて
見下すようなものでもない。
深夜というのは
夜というのは、
私を最大限まで見つめ直せる。
私は今何を思っているのか。
ノートに書くだけで
自己管理が出来てしまう。
そこから新たに紡ぐものも
また美しき。
日頃の疲れが私に嘘をつかせる。
まだ大丈夫。
お陰で私には
随分と寂しい思いをさせてしまった。
幼い頃の私は
現実をよく見ていた。
現実だけしか知らず
私は私なんだと芯を持っていた。
しかし同調圧力に潰されそうになった。
私は変わる必要があった。
あの子のように、この子のように。
他人の態度をよく見て
私はどうすべきかを考えるようになった。
結果的には同調圧力に押し負けた。
どこにでもいる、
へのへのもへじみたいな
通行人Aになった。
それからは
今自分が何を考えているのか分からなくて
怖かった。
ずっと私は私と一緒に
人生を歩んできたのに
思考が追いつかなかった。
"Good Midnight!"
深夜はそんな私も
通行人Aの私も救って
気持ちを見れるようにしてくれる。
北斗七星がどこかで輝くように。
今日、
地元の県民公園を歩いた。
園内に大きなレクリエーションプールがあるのだが、私にとっては思い出深い場所である。
小学生の頃、
毎年夏休みに通っていたプールだ。
歳の近い親戚の子や、仲の良い友達と遊んでいた。
人生で一番楽しかった瞬間である。
考えてみれば、
たかだか6年間くらいの出来事だったのに、
すごく濃く脳裏に焼きついているものだなと思う。
今現在からの6年の時の流れなんて、たいして覚えていない。
あの頃の親戚の子とは、祖母の葬式以来会っていない。もう15年くらい経つ。
あの頃の友達とは、疎遠になって会っていない。もう25年くらい経つ。
と、2月なので、当然閉場中のプールを柵越しに眺めながら想いを馳せた。
まさか、あの頃の自分が、木々の枯れた季節に、落ち葉広がる水のないプールを眺めてしみじみしてるなんて思わないだろう。
あの頃の自分にとって、
今の自分は、かなりの未来人である。
なんでも知ってる存在なのに、
なにも知らなかった存在である。
今ここは未来でもあり、過去でもある。
どんな自分が、どこで何を思って、
今の自分を見つめているのか。
寒風に揺らされた、大樹の枝から。
ぷつり、と命の音を立てることもなく、彼は──『枯葉』は、ただ一枚きりで故郷を離れた。
思えばそれが、最初にして最期の旅路、地に落ちて粉々になって姿がそれとわからなくなってなってしまうまでの間に彼は……枯葉は。
いったいどんなものを目にして、なにを思うのだろう──。
……と、散歩中の公園でふと思いついて立ち止まり、そんな文章をポチポチと打ち込んでたら。
ボクの肩に引っかかってからずっとスマホを覗き込んでいた彼、枯葉が、呆れたように言った。
「そんなふうに『同情』などを寄越している余裕などが、果たして、お前たちにはあるのか?」
……同情?
ボクそこで少し考え、浮かんだことを、ゆっくりと口にしてみることにした。
「ええっと、うーん……余裕があるかないかってことより、ボクたちは、同情せずにはいられない生き物で、だから……万物すべてのそれぞれになったつもりで、物事を考えがちなんだ。ああそう、いろんなものをついつい擬人化してしまうのもきっと、そのせいで……って、あれ?」
いつの間にか、枯葉はいなくなっていた。
地面に落ちたのか、と探してもどこにもいなくて、それに時間を取られたお陰でボクは、アプリのお題更新の締め切りに間に合わなかったりして、まぁそれはどうでもよくて……でも。
「……そうだね。そんな余裕かましてる場合じゃないんだろうね」
(枝から切り離されて最期の旅路を往く、その道程にいるのは、お前たちのほうだろう?)
──枯葉が言外に言ったのはたぶん、そういうことなのだ。
……なんて、ね。
それこそ「自分ではない者の身になったつもりで、勝手なことをでっちあげてくれるな」、って。
そんなふうにまた、呆れられてしまうだろうか?
・・·・・· 同情 ・・·・・·・・・·・ ·・・· ·・・ ·・・·・・·・・·・・·・・·・・·・・
·・・·・・·・・·・・·・・· ・ Je suis en train d'écrire. ・·・・· ·・・·・・·・・・・·
相手に寄り添っての同情なら
必要とされるかもしれない
その場しのぎの同情ならいらないだろう
自分の意見や正論を並べるのも
相手にとっては不快なだけだろう
だが、それを見極めるのが難しい
「……不幸だと思った事?」
僕の問いかけが意外だったのか、目の前の彼女──リリアーナ・アドルナートは二、三度の瞬きと共にそう繰り返した。
「ほら、君は……市井に生きていたのに、僕達の争いに巻き込まれたから」
何も知らない間にファルツオーネファミリーの屋敷へと連れて来られて、訳も分からないまま自分が特別な人間だと教えられて、挙句の果てには敵組織の元へと連れて来られた。
「……そう言われてみれば、わたしって凄い経験をしているのね」
自分のこれまでを振り返って、そんな呑気な纏め方をするのもどうなのだろうと思いながら、僕は言葉を続ける。
「つまり、そんな非日常的な経験をしている自分を、不幸だと思ったりしないのかな、って」
マフィアが治める街で暮らしている、と言っても、彼女は所詮はただの女の子だった筈。少し硬いベッドで朝を迎えて、昼間は商店街の人々と言葉を交わして、夕方になれば神の元に集った家族と食事を囲む。それが当たり前だった身に突然ここまでの出来事が重なれば、不満や不安を抱いてもおかしくは無いだろう、と。そう言外に含みながらそっと顔色を伺えば、リリアーナは再び瞬きを繰り返して、やがて──困ったように笑いを浮かべた。
「確かに、幸運だとは言えないけれど、でも」
自分の中で考えを模索していたのだろうか、数度視線を巡らせた彼女が、そっと瞼を下ろした。
「でも……わたしが選んだ事だもの」
囁くように呟かれたその言葉は、風の音一つで消えてしまいそうな程に小さな声だったのに。
「限られた道だったのかもしれないけれど、ファルツオーネファミリーのお屋敷へ行く事も、こうしてヴィスコンティの屋敷へ来た事も──ニコラの側にいたいと思った事も、全部……」
これまでの軌跡を確かめるように紡がれていくその言葉は、僕が先程反芻したものと変わらない筈なのに、不思議な程に眩い光を帯びていて。
「全部、わたしが選んだ事だもの」
そこには哀れみや同情の一切を必要としない、確かな強さが秘められているという事実に、漸く気が付いた僕は。
「──」
自分よりも若く、可憐で、慈しむべき存在の、しかしずっと強かな意思を前にして。ただ独り、息を呑む事しか出来なかった。
「だから、不幸だとは思っていないわ」
微笑のままにそう話を締め括った彼女が、小さく首を傾ける。答えになっているか、と聞きたそうなその仕草に、僕は小さく頷いた。
「……グラッツェ」
唇から零れた台詞がリリアーナの頭に疑問符を浮かべる事は、十分に分かっていた。それでも、僕は零さずにはいられなかった。
(……その理由は、君自身も気付いていないのだろうけれど)
だけど、リリアーナ、君は──君の持つ生来の強さは、確かに助けたんだよ。抱いてはならない罪悪感に苛まれかけた一人の男を、ね。
(ピオフィ ニコリリ)
団塊もベビーブームも過ぎたこと
青春はもう戻ってこない
#同情