『何気ないふり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「えっ、彼女いるんですか?
あー。地元の人と。へぇー。知らなかったですよ。」
お酒の、お酒のせいにしてしまおう。
「出身結構遠かったですよね?
遠距離って、あんまり会えないし、何か不安だし?なんかやっぱり」
「あっ来月から同棲?
うちの大学に入学…?あっ年下なんですね。」
帰ってこい酔い。
「えっ、もちろんですよ!先輩が選んだ子とか絶対良い子だし。むしろ可愛がりすぎてわたしに取られないように頑張ってくださいよ!」
彼からしたら何気ない会話、
わたしにとっては忘れたい会話。
花を一輪、買った。
バラの花。贈り物用のラッピングも、してもらって。
ただ、渡すだけだ。別に想いを伝えるわけじゃあない。
渡すべきその人とよく会う場所で、……ああ、会えた。
その人に声を掛ける。さも偶然会ったように、そして……
「余りなんだ、一つあげる」
花を差し出す。
その人は特に表情を変えることなく、無機質な感謝の言葉を述べて、花を受け取った。
受け取ってもらえたので、自分は別れの挨拶をして、その場を去った。
目的は達成した。
あとはただ、帰るだけだ。
…………
「……バカな人。
耳真っ赤にして、"偶然"だなんて嘘ついて。
……本当、バカで……可愛い」
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何気ないふり
へぇ〜良かったじゃん。
ww良いね。リア充。
はぁ。こっちの気も知らないでさ。
知らない人の話なんかしないで。
何気ない振りも苦しいんだよ。
私は何ヶ月かに一度、中身がぐちゃぐちゃになる。
泣き叫びたいのに黙っていたくて、ほっといてほしいのにかまってほしくて、眠りたくないのに寝たい。そういう風に、相反する感情ばかりで心の中が嵐のように荒れる時がある。
でも見た目は変わらないから、誰にも気付かれることはない。気付かれたくなくて何気ないふりをしているせいもあると思う。本当は誰かに気付いてほしいって厄介な気持ちも持ち合わせているけれど。
私は別に誰からも愛されたいわけじゃない。でも蔑ろにされるのは悲しいし、大切にはされたい。でも私のせいで誰かが負担を感じるのは嫌なの。
今日はそういう日。自分のぐちゃぐちゃになった中身を黙って見つめる日。だって何気ないふりして笑う自分に気付いているのは自分だけだから。
あなたに恋した私は、何気ないふりしてあなたに近づいたの。
そしたら、何気ないふりしてるあなたが近寄ってきたの。
■ 何気ないふり
乾いた空気が流れる事務所
私は画面上の数字を見ながら
さらなる数字を打ち込む
入口近くに置かれたホワイトボードには
営業部の直行直帰や戻り時間などが
乱雑に書き残されている
タイピングの合間にホワイトボードをみると
勤めて3年目 気の優しい営業くんが
少し息を切らしながら入ってきた
自分の名前の横にある戻り時間を消す
今日はエレベーターが午後から点検だったので
階段で上がってきたのだろう
頬を赤らめながら 額には汗がにじんでいた
彼が席に着いたのを見るやいなや
私はすかさず領収書の確認に向かった
息が切れていたのに私が話しかけると
必死で鼻呼吸に変え キリッとした顔つきをする
そんな彼の仕草を可愛らしく感じながら
私は息を整える暇を与えないように
息が切れている事に気づいてないふりをして
至って平然という風に話し続ける
相手を立てながら からかうのも意外と技術がいるのだ
私の密かな 褒められない楽しみである
何気ないふりしてるけど
ほんとは淋しいんだけど
でも涙は出ないんだけど
そんな自分が切ないんだ
#何気ないふり
「何気ないふり」
偶然を装って予定を聞いてお誘いしたり
うざ絡みにならないように距離を測ったり
もっと近くに、もっと長く、一緒にいたいけど
ぐっとこらえて心地よい距離感を探る
きっと、全部バレている
何気ないふり
一番傷つくのが
僕、私、きみ、あなた
ふりが
ふりでもない
傷になる
何気ないふりで話をしている。
内カメラを起動したアンドロイドをちらちらと見ながら。
口角は上がっていないか 目が笑っていないか
服は汚れていないか アイツ好みのメイクか とかとか。
今日はなぜだか気が散っていて、何もかもが気になる。
思考を巡らせていると、アイツは視界からいなくなっていた
アンドロイドの画面を見ると私のキョトンとした顔と、
それを横から珍しそうに、画面を見つめるアイツ。
驚いてカメラを閉じようとすると、
アイツは撮影ボタンを押した。
努力虚しく破顔した私と、いつも通り輝く笑顔のアイツ。
こんな写真持ってたら、もう何気ないふりできないな。
お題:何気ないふり
(何気ないふり)
目覚めると朝日がある事知っていた
駆けたら息が浅くなる事気づいてた
今宵も昨日と変わらない
この息の根が止まるまで同じことを
気づいてる 気づかない方が良いからふりをして
何気なく誘いたい
そうやって誘いたい
カッコ良く誘いたい
偶然を装おうのでなく
ほんとの偶然で
それは必然になるから
君は必然だから
ふたりは必然だからです
この時間は必然だから
これからも必然だから
いつまでも必然だから
【何気ないふり】
「おっと、ごめんね」
そう言って彼女は小さな男の子の進路を塞いだ。男の子はぽかんとして彼女を見上げるが、彼女の方は急ぎ足にその場を去る。すると、「まーくん、そっちダメよ!」と母親らしき声に、まーくんと呼ばれた子供は振り向いた。
(あーあー、ダメよじゃダメなんだよな、ポジティブワードで呼びかけたほうがいい、こっちにおいでとか、ママのところに来てとか)
彼女はそんなことを考えながら早足に歩いている。次の交差点で、すみません、と言いながら一番信号機に近い場所に立つ。信号待ちの人は横一列に並んでいるが、彼女の隣の一人、高校生らしい制服の少女だけはスマートフォンをいじっていた。信号が青に変わる。彼女は爪先で一回だけトン、とリズムを取ってから歩き出した。すると、スマートフォンをいじっていた少女はハッとしたように顔を上げて、慌てて横断歩道を渡る。
(左右見なよって)
もしも彼女を見ている人がいるならば、彼女がいつも誰かの進行を阻害したり、変更させたりしていることに気付くだろう。
高校三年生の春に車に撥ねられてからこちら、彼女には、事故の導線が見えていた。それが死に直結するかどうかは別として、その導線は誰かの足元から伸びており、そのまま導線の上を歩いていくと、大なり小なり事故に遭う。そんなことを誰かに相談してみようものなら、それこそ精神科か心療内科を勧められてしまうだろう。大学受験のストレスが、入学後に爆発したとか、そんなことを言われて。
なので、彼女は誰にも言わず、ただ何気ないふりをして導線を消すことにしている。正義感なんてものではなく、目の前で事故られて、その目撃者になるのが面倒なだけだ。とはいえ、シンプルな導線のときに限られる。ぐちゃぐちゃに絡まっている場合は、何をどうしたって事故は起こる。
だから、今日も可能な限りで、さり気なく事故を防止する。少なくとも大学に着くまでは、平穏無事な時間を過ごすために。
飲み会の帰り道、皆んなと歩いている中こっそり手を繋ぐあの緊張感と多幸感が好き。
さり気なく車道側を歩いてくれるところが好き。
単純なカードゲームで延々と遊んで笑っていられる、お泊まりが好き。
美味しいものを一緒に食べる時間が好き。
しあわせだね、と笑うあなたのくしゃっとした笑顔が大好き。
本当に言いたいことに蓋をして、強がるふりをして。
私の目の前からいなくなる、今のあなたは大嫌い。
『何気ないふり』
『何気ないふり』
何気ないふり、
それは、強がること。
何気ないふり、
それは、逃げること。
テーマ“何気ないふり”
学校の廊下。
何気ないふりをして
偶然を装って君の事を待ってみた。
君が教室から出てくるのを見つけて
何気ないふりをして
近付こうとした。
けれど、無理だった。
君の横には、私が知らない子が
ピッタリと寄り添っていたから。
それを見た瞬間、慌てて
君に背を向けた。
何気ないふり失敗。
そんな事するくらいなら
君を呼び出して一緒に帰ろうって
誘えば良かったな。
断られるとしても。
…何気ないふりをして
気付かないふりをして
その関係ブッ壊しても良いかな?
駄目かな?
天然だよね。
そう言う君は鈍感だよね。私が転ぶ度に支えてくれて、心配してくる。普段からあんなに転ぶ訳ないのに。私が言うのもなんだが、週3くらいで転んでるんだから、少しは怪しんだほうが良い。
忘れっぽいのも、靴下を間違えちゃうのも、空気を読むのがヘタクソなのも。全部全部、君のせいなんだよ。
「ちょっとドジで天然な子が好きだなぁ。守ってあげたくなるような子」
だってドジで天然なくせに。先週も思い切り机に頭をぶつけたのを見てた。心配したのと同じくらい、むしろ私が守った方がいいんじゃないの?って思った。ドジなフリしてるけど、君より断然守れるよ。
でも、そんな事を行ったら離れてしまいそうで。いつまでも君の好きなタイプを演じてしまう。何気なく君の好きな香りを纏って、何気なく君と好きな食べ物が同じフリをする。全部君の為の、何気ないフリ。
本当の私はこんなのじゃないけど。君に見つめられるのなら、何にだってなってやる。
見て 聞いて
何もない 変わりない様に
絶対に気づかせない
これが案外 容易ではない
*何気ないふり
ほんとのことってなんだっけ。
いつも、何者かのフリしてる。
昨日、貴方のスマホを覗いてしまった
「おはよう」
貴方より少し早く起きたので、朝ごはんなんか作ってみる
「今日何時に帰る?」
ちょっとだけテンション高く聞いてみる
「久しぶりにグラタンでも作ろうかと思って‥」
好きだったよね?変わってないよね?
「‥そっか、じゃあ先に食べちゃうね」
なんで?仕事だものね、仕方ない
どうして?仕事だものね、頑張って
仕事?仕事だものね??
「‥いってらっしゃい。気をつけてね」
貴方が背を向けた途端、軽く振ってた手と笑顔が動きを止めた
ゆっくりと閉まるドア
ゆっくりと閉じる瞳
早まる呼吸
噛み締めた唇
貴方のスマホを覗いてない自分には戻れない