『些細なことでも』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
繊細なことで喧嘩する。
繊細なことで仲良くなる。
繊細なことで考えがかわる。
仲間がいるから1歩進める。
お題/些細なことでも
目の前にいる男の指が、液晶画面をなぞる。白い手だ、と思った。白くて、細くて、触れたら折れてしまいそうなくらいだ、と。
ふと、視線がかち合った。男はふっと笑って、口の動きだけでこちらに告げた。
"随分と、熱視線だな"
その瞳から、薄い唇から、目が離せない。
「……おまえ、は、」
何かを問おうと開いた口に、男の指が押し当てられた。
「何も聞くなよ」
いつになく、低い声で告げられたそれ。触れた指先は、冷たい。ああこいつの指はいつも冷たいのか、なんて。いつもは触れてくることなどないくせに。
どうして、こんなに些細な変化だけで、どうにも言葉がうまく紡げなくなるものか。
【些細なことでも】
些細なことで喧嘩して。
些細なことでも感謝して。
そうやって長く一緒にいた。
これからもよろしくおねがいします。
そんな気持ち。
2016.9.3→2023.9.3
「あ、洗濯物取り込んでくれたの?ありがとう」
「わぁ、その髪飾り可愛い!どこの?」
「話聞いてくれてありがとう」
「だいすき」
わたしはどんなに些細なことでも、
好意的なことは思った時に伝えるようにしている
いつ伝えられなくなるかわからないしね
今度でいいやと思ったら、
そのまま気持ちがすれちがってしまうことが
ままあるこのせかいでは。
/『些細なことでも』9/3
でもタイミングって実際難しい。
自分はどんなに些細なことでもネガティブに考えてしまう
私の考える先は全部ネガティブ
悪い方に悪い方に考えてしまう
大丈夫やって!
みんなそう言ってくれるけど
その一言も
ネガティブに考えてしまうんだよ
〈些細なことでも〉
「些細なことでも」
「バース、岡田、掛布じゃなくてバース、掛布、岡田バックスクリーン三連発」
………沈黙が流れる
彼は些細なことでも見逃してはくれない
「はははっ…そうだ、甲子園と言えばやっぱり松井秀喜の4打席れんぞ…」
「4打席連続じゃなくて5打席連続敬遠」
「…どうして些細なミスでも指摘するの?そのくせ私がポニーテールからベリーショートにした事には全然気付いてくれないじゃない!」
「ベリーショートじゃなくて丸坊主…とても似合ってる、好きだよ」
「ば…ばかぁ!」
彼の胸で泣いた、高校球児みたいに
些細なことだと思うだろう
その小さな綻びをどうするかで人間関係は変わってくる
ほんの少しの歪みが
人と人との距離を広げ繋がりを壊す
なんて事ない一言や
少し引っかかる態度
違和感を感じる行動
その一つ一つにどう向き合っていくか
どうでも良い相手なら
放っておけば良い話
でもどうせ出会った相手なら
話して見つめて向き合いたい
そう思う事は悪い事ではないだろう
時には目を瞑り
飲み込み
忘れる事も必要かもしれない
しかし大半がそうでないのなら
小さな綻びが大きな穴となる前に
修繕し繕っていきたいと思うのだ
そうして繋いできた人間関係が
今では大切な宝物として
私の誇りとなっている。
#繕 【些細なことでも】
些細なことって、主観だから
一人で完結することならいいけど
他者と共有する時は注意した方がいいよね。
またそんな些細なこといちいちって
言われそうだけどね。
これは、些細なことのように思える、一つの幸せの話
些細なこと
私がそう思っても
あなたにとっては
大きなこと
些細なこと
あなたがそう思っても
私にとっては
大きなこと
些細なことでも
相手がどう思うのか
ちゃんと考えなければ
すれ違いになっちゃうよ
私は迫り来る試験に向けて必死に勉強していた。
お母さんの期待に応えられるように、いつもより頑張った。
これならきっと、お母さんも褒めてくれるはず…
試験当日。
勉強したところが出てしっかり解けた。
あとは結果次第だ。
テスト返却日。
先生は、学年で私が最高得点だと言った。
国語満点、理科満点、英語満点、保健満点、家庭科満点。
しかし、数学は、授業でもワークでも習っていない応用問題で1問落とし、98点だった。
自分では、なかなかよくできているんじゃないかと思う。
これでお母さんも…認めてくれるかな…
自宅にて。
お母さんにまた叱られてしまった。
理由は、数学の試験で1問落としてしまったから。
「あなたの頑張りが足りないんじゃないか」
「こんなのを間違えてどうするんだ」
「私の娘じゃない」
そして最後の一言。
「きっとお姉ちゃんだったら、全て完璧だった。」
お母さんは、私を産む前、1人子供を死産していた。
生きていたら、私のお姉ちゃんになるはずだった。
それ以来、私と、居もしないお姉ちゃんとを比べては、「お姉ちゃんだったらこうしていた」「お姉ちゃんだったら完璧だった。」
『ああ。あの子が生きていたら。』
あんたなんて産まなかったのに。
ああ、、、、、
私は…わたしは…なんのために…
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうして私は……ちゃんとできないの…?
それ以来、私は部屋を出られなくなった。
出たくなかった。
お母さんに合わせる顔がなかった。
ーーーあんたなんて産まなかったのに。
その些細な一言で私は壊れてしまった。
お父さんは私が生まれてからいなくなってしまった。
私のせいだ、とお母さんに言われた。
おばあちゃんもおじいちゃんも死んだ。
これも私のせいだ、と言われた。
私はお母さんに迷惑しかかけていない。
物心ついた頃からずっと。
ごめんね、お母さん。
迷惑ばっかりかけて。
お姉ちゃんじゃなくて、こんな出来損ないが生き延びてしまって。
これ以上迷惑をかけないために、私は消えます。
今まで本当にありがとう。
そしてごめんね。
世界で1番、大好きだよ。
そうして私は、机の上のロープを震える手で握った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
娘が死んだ。
自殺だった。
謝罪と感謝、自分の気持ちを綴った手紙を遺して。
たった一人の娘だった。
一生大切にすると、死産したあの子にも約束した。
私なりに…私に酷いことをした自身の母親のようにならないよう、一生懸命育ててきた。
なんの気配もなくなった娘の部屋。
何かがおかしいと思ってドアを開けようとしたら、異様に重かった。
全てを悟った私は泣き崩れた。
ごめんね。ごめんね。
ーー私は…どうすれば良かったんだろう。
産まなきゃ良かったなんて思ってない。
世界一可愛くて、素直で、優しくて、一生懸命な娘だった。
大好きだった……
そして私は、あの子の隣であの子と同じロープを握った。
強く、しっかりと。
そして、薄れゆく意識の中で呟いた。
(世界で1番…愛してる…)
2023/9.4 些細なことでも
些細なことでも
(ワールドトリガー夢創作)
「最近どうなんだお前」
「最近?」
ふらりと立ち寄ったカフェで休憩中。お前はいつも通り、でかいサイズのアイスティーを飲む。ガムシロップはひとつだけいれる。ストローはほんの少し噛む。
「いつも通りだよ」
何気ない調子で答える。いつもの通りの、詳細がこっちは知りてぇんだが。
「配信は」
「あー配信は最近ちょっと人増えた」
訊けば答えるが、訊くまでこいつはなにも語らない。自分から話す時は、よっぽど機嫌がいい時だけ。……些細なことでも、把握しておきたいと思うようになったのはいつからだったか。
「人増えるの嬉しいけど、コメント捌くのが大変なんだよな」
「あんま無理すんなよ」
「しないよ」
お前はふんわりと笑う。楽しい時でも辛い時でも、同じように笑うから、俺は安心することが出来ない。ちゃんと見極めてやらなきゃと思う。
「拓磨は最近どうなの?」
「俺は、」
お前のこと考える時間が増えているのを、見ないフリをしてる。言えるわけがねぇけど。呑気にアイスティーを飲んでる姿を見ると、なんでこうなっちまったかなと、自分を後ろめたくもなる。確実に渇いていく心に、いつまで耐えられるのか、自分に自信がなかった。
些細なことでも
私が疲れていることに気付き
洗いものをしてくれたあなたを
私は好きになりました
あなたは
私のこと好きですか
声に出せたなら
こんなことすらも言えない
些細なことでも
居合わせた数人で囲むテーブル
普段なら断る集まり
参加したのはきみがいたから
大勢が苦手なきみ
友だちに押しきられて
ここにいるんだろう
あちらこちらに動くきみの目線
近くにあった紙ナプキンを
そっと差し出す
なんでわかったの?
目を丸くしてきみが言う
以前にも同じことがあったんだよ
そのときは友だちがきみに手渡した
でもこれはきみが知らなくてもいい
些細なこと
ありがとう
あのとき友だちに向けていたものと
同じ笑顔できみが言う
きみのそばにいると
優しい気持ちになるのは
なぜなんだろう
これから、ちょっと長い旅に出るんだ。
楽しみだけど、不安も大きい。
だから、出来るだけ身軽に行きたいと思ってる。
虹に驚いたり。
雪に凍えたり。
海に漂ったり。
月に佇んだり。
すべて、この全神経で受け止めたい。
さあ、夏の出口が見えてきた。
【些細なことでも】
日々のLINEとか、会話とか。
問題から目を逸らすところとか、取り合わないだとか。
些細なことで関係が崩れてしまう。
せっかくキミと付き合ったのに、まだ試練は残っていたんだ。
些細なことでも
ちょっとお腹が痛いだけでも、なんとなく気分が乗らないだけでも、少し眠いなっていうだけでも。
「大丈夫?」「どうしたの?」「つらくなったら言ってね」って言ってくれる君。
こんな些細な私の変化に、どうして気付いてくれるんだろう?
本当に些細なことなんだ
少しの意見が違ったり
ちょっとした気遣いのつもりが
大きなトラブルになるの
人って本当に支え合っているのかな
インスタのストーリーもしっかり見てしまうし、
授業中寝ちゃってるところとか、どんなシャーペン使ってるとか
誰と会話してるとか色んな面が目につく。
ねぇ、君は今なにをしているの?
僕は君をもっと知りたい
「8月4日あたりのお題が少し似てた。『つまらないことでも』だったかな」
それこそ、区切り線『――――――』の上の300字程度で、せめて些細なことでも誰かに執筆の種を提供できたらとは思ってるわな。
某所在住物書きは過去作を辿り、呟いた。
「あのときは、『「つまらないこと」でも、その人にとっては大事なんです』みたいなのを書いたわ」
今回も、「些細なこと」「でも」だから、何かひっくり返す必要があるんだろうな。
物書きは首を傾け、悩む。
「些細な言葉に、些細な気遣い、些細なすれ違いに些細な味のバラつき、他には……?」
――――――
9月の第2週、最初の月曜日が始まった。
私の職場の先輩が、当分、約2週間程度、リモートワークで職場から離れることになった。
理由は、私と、先輩の親友である宇曽野主任以外、誰も知らない。というか誰も気にしてない。
残暑残る東京で、なおかつ、コロナの静かに忍び寄る東京だ。理由なんて、勝手に予想しようと思えばゴロゴロ出てくる。
些細な理由、大きな理由、何か壮大な裏が潜む理由。ありとあらゆる想像を、しようと思えば、できる。
でもきっと、全部不正解だ。
種明かしをすると、先輩は今、親友の宇曽野主任の一軒家に絶賛避難中。
先輩の前に、8年前の恋人さんが今更現れて、その恋人さんがなんと、ほぼストーカー数歩手前。
加元っていう人で、先週この職場に突然来た。
「この人に取り次いでください」って。
この加元さんから8年間、名字と職場と居住区を変えてまで、逃げ続けてきた先輩。
そんな先輩の、今の住所までバレないようにって、3人暮らしの宇曽野一家が避難場所を提供した。
それが先週。そして今週。
「嫁と娘には大好評だ。何せ、あいつの得意料理は低糖質低塩分の、ほぼダイエットメニューだからな」
先輩今頃どうしてますか。
隣部署勤務の宇曽野主任に近況聞いてみたら、なんか避難生活満喫してそうな回答が返ってきた。
「レトルト使った雑炊だの、サバ缶でトマトリゾットだの、あいつの故郷の冷やし麺だの。
加元からは『低糖質メシ作るとか解釈違い』と不評だったのが、今は『美味しい』、『面白い』だ」
遠くでは、それこそ今話題に出してる元恋人さん、加元さんが、先週に引き続き今日もご来店。
「この名前の人物がここに居るのは調べが付いてるんです」からの「お調べしましたけど居ません」で、受け付け担当さんの営業スマイルが引きつってる。
だって先輩改姓したから、加元さんの知ってる名字じゃないもん。残念でした。
「解釈違いなんなら、早く次の恋に行けば良いのに」
「どうせ次を食って、食って、何度か繰り返して、一番まともだったのが……、だったんだろう?」
「なら些細なことでいちいち『地雷』とか『解釈違い』とか言わなきゃ良かったのに」
「加元にそれができれば、あいつは今頃8年も逃げたりしちゃいないし、ここにも居ない」
「それ困る」
「ん?」
「ダイエットメニュー、私もお世話になってる。バチクソこまる」
結局、今日も収穫ナシでご退店の加元さん。スマホ取り出して、何かいじって、帰ってった。
「また来るかな」
「知らん。加元に聞け」
加元さんに対応してた受け付けさんは、相当疲れたらしくって、加元さんが見えなくなった途端大きなため息吐いて背伸びして。
丁度パッタリ、「さっきの人見てた?」ってカンジで私と目が合ったから、
私も、ねぎらいの心をこめて、「見てた。お疲れ様」ってカンジで、小さく頷いてみせた。
「そうそう。お前も用心しておけ」
「なんで私?」
「加元にお前の存在がバレてる。おととい『あの人誰』と、わざわざダイレクトメールを寄越してきた」
「まじ……?」