お題/些細なことでも
目の前にいる男の指が、液晶画面をなぞる。白い手だ、と思った。白くて、細くて、触れたら折れてしまいそうなくらいだ、と。
ふと、視線がかち合った。男はふっと笑って、口の動きだけでこちらに告げた。
"随分と、熱視線だな"
その瞳から、薄い唇から、目が離せない。
「……おまえ、は、」
何かを問おうと開いた口に、男の指が押し当てられた。
「何も聞くなよ」
いつになく、低い声で告げられたそれ。触れた指先は、冷たい。ああこいつの指はいつも冷たいのか、なんて。いつもは触れてくることなどないくせに。
どうして、こんなに些細な変化だけで、どうにも言葉がうまく紡げなくなるものか。
9/4/2023, 7:03:31 AM