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私は迫り来る試験に向けて必死に勉強していた。
お母さんの期待に応えられるように、いつもより頑張った。
これならきっと、お母さんも褒めてくれるはず…


試験当日。
勉強したところが出てしっかり解けた。
あとは結果次第だ。


テスト返却日。
先生は、学年で私が最高得点だと言った。
国語満点、理科満点、英語満点、保健満点、家庭科満点。
しかし、数学は、授業でもワークでも習っていない応用問題で1問落とし、98点だった。

自分では、なかなかよくできているんじゃないかと思う。
これでお母さんも…認めてくれるかな…


自宅にて。
お母さんにまた叱られてしまった。
理由は、数学の試験で1問落としてしまったから。
「あなたの頑張りが足りないんじゃないか」
「こんなのを間違えてどうするんだ」
「私の娘じゃない」


そして最後の一言。
「きっとお姉ちゃんだったら、全て完璧だった。」


お母さんは、私を産む前、1人子供を死産していた。
生きていたら、私のお姉ちゃんになるはずだった。
それ以来、私と、居もしないお姉ちゃんとを比べては、「お姉ちゃんだったらこうしていた」「お姉ちゃんだったら完璧だった。」
『ああ。あの子が生きていたら。』






あんたなんて産まなかったのに。









ああ、、、、、
私は…わたしは…なんのために…
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうして私は……ちゃんとできないの…?



それ以来、私は部屋を出られなくなった。
出たくなかった。
お母さんに合わせる顔がなかった。




ーーーあんたなんて産まなかったのに。





その些細な一言で私は壊れてしまった。





お父さんは私が生まれてからいなくなってしまった。
私のせいだ、とお母さんに言われた。

おばあちゃんもおじいちゃんも死んだ。
これも私のせいだ、と言われた。


私はお母さんに迷惑しかかけていない。


物心ついた頃からずっと。


ごめんね、お母さん。
迷惑ばっかりかけて。
お姉ちゃんじゃなくて、こんな出来損ないが生き延びてしまって。


これ以上迷惑をかけないために、私は消えます。


今まで本当にありがとう。
そしてごめんね。
世界で1番、大好きだよ。





そうして私は、机の上のロープを震える手で握った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
娘が死んだ。
自殺だった。
謝罪と感謝、自分の気持ちを綴った手紙を遺して。


たった一人の娘だった。
一生大切にすると、死産したあの子にも約束した。
私なりに…私に酷いことをした自身の母親のようにならないよう、一生懸命育ててきた。


なんの気配もなくなった娘の部屋。
何かがおかしいと思ってドアを開けようとしたら、異様に重かった。
全てを悟った私は泣き崩れた。
ごめんね。ごめんね。


ーー私は…どうすれば良かったんだろう。


産まなきゃ良かったなんて思ってない。
世界一可愛くて、素直で、優しくて、一生懸命な娘だった。
大好きだった……







そして私は、あの子の隣であの子と同じロープを握った。
強く、しっかりと。


そして、薄れゆく意識の中で呟いた。

(世界で1番…愛してる…)



           2023/9.4 些細なことでも



9/4/2023, 4:40:08 AM